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» 2014年07月04日 08時00分 UPDATE

杉山淳一の時事日想:大井川鐵道に『きかんしゃトーマス』がやってきた本当の理由 (5/6)

[杉山淳一,Business Media 誠]

完全民営、自社工場だから生まれたトーマス

 大井川鐵道できかんしゃトーマスが実現した理由の二つ目は、大井川鐵道の対応の早さだった。他の鉄道会社ではできないことを、大井川鐵道はできた。その具体的な例は、大井川鐵道を走るトーマスを観察すると分かる。

 大井川鐵道のトーマスは、C11形227号機の塗装を変更している。それだけではない。トーマスの顔付近を見てほしい。ヘッドライトの位置に気付いただろうか。C11のヘッドライトは、本来はトーマスの顔の上にあった。それがトーマスの顔の左下に移動している。

photo トーマスの元になったC11 227の本来の姿
photo ヘッドライトの位置に注目

 本物のトーマスの姿に近付けるため、ヘッドライトをわざわざ移設したのだ。ヘッドライトは安全保安部品であるから、改造にはお役所の認可が必要だ。手間のかかる作業を大井川鐵道はやってのけた。SLについてはボイラーなども含めて、自社と地元の工場で補修できる体制ができている。これも大井川鐵道の強み。

 きかんしゃトーマスのモデルとなった機関車は、動軸3つだけの小型機関車だ。C11形も動軸が3つだ。しかし、動輪の前に1軸、動輪の後ろに2軸あるから、C11形はトーマスよりちょっと大きめ。また、ボイラー上部のドームもトーマスは一つ、C11形は二つ。ほかにも差異はあるだろう。しかし、ヘッドライトを移動させただけで、トーマスの顔は本物っぽくなった。トーマスの版権管理者は、大井川鐵道の心意気を高く評価したはずだ。

 大井川鐵道の心意気と言えば、トーマスが引っ張る客車たちにも言える。映像作品通りのオレンジ色の客車たち。トーマスとオレンジの客車の組み合わせは、たぶん大井川鐵道だけだ。これは旧国鉄の茶色い客車をオレンジ色に塗り替えた。客室内は国鉄時代のままのご愛敬だけど、営業運転時はトーマスと仲間たちを描いたヘッドカバーが装着される予定。これも改造と見なされ、難燃素材を使うなど条件があり、認可が必要だという。

photo 座席に取り付ける予定のヘッドカバー。認可待ちのため、試乗会では紹介のみ

 実は、日本でトーマスが実現できなかった理由がこれだ。旅客営業用の車両を改造すると、監督官庁の審査が必要になる。そして、鉄道会社の運営が第3セクターになると、車両の改造についての決済も時間をがかかる。あるいは反対意見があって進まない。その点で、完全なる民間企業の大井川鐵道は動きが早かった。

photo 千頭駅で方向転換するトーマス。なんと手動で転車台を動かしている。作業終了後に拍手が起きた

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