プロ野球のオールスター戦が、つまらなくなった理由臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(3/4 ページ)

» 2014年07月24日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

新鮮味が欠けてしまった

 日本のオールスター戦が「夢の球宴」と、なかなか呼ばれにくくなってしまったのは他の理由も考えられる。球界内からは「セ・パ交流戦が2005年から毎年行われるようになり、異なるリーグ球団の対戦が当たり前になったことで球宴で行われるセ対パの戦いから新鮮味が欠けてしまった」という指摘も聞こえてくる。

 だが、NPBが取り仕切るスケジュールやシステムなどの「ハード」だけではなく「ソフト」の面にも問題がありそうだ。それが証拠に「球宴がつまらなくなっているのは、試合そのものの質が低下してしまったこと」と声を荒げる球界関係者が数多くいるということも忘れてはいけない。つまり、プレーする側の選手の面にも問題があるということだ。

 最たる例が2013年7月20日に神宮球場で行われた球宴第2戦である。6回二死に阪神・藤浪晋太郎投手が、日本ハム・中田翔内野手に超スローボールを2球続けて投げ、大きく体をのけぞらせて“挑発”。これに対し、中田はバットを叩き付けてからマウンドへ詰め寄ろうとするパフォーマンスを見せた。スタンドは大爆笑で、藤浪も中田も笑っていた。そう、これは真剣勝負ではなく単なるジョーク。すべては藤浪、中田と同じく大阪桐蔭高校卒業で2人の先輩・西岡剛内野手(阪神)が事前に企画したアイデアだった。

 この珍場面は各メディアの間で大きく取り上げられ、大半が「意外性があって面白かった」「吉本新喜劇のようだった」などと好意的にとらえていた。しかし、本当にそうだったのか。本来ならば熱いプレーを見せなければならない立場の選手が三流ギャグを披露した明らかな茶番劇であったのだ。メディアでは報じられなかったが、この当日は実際に高いお金を払って見に来たファンから「ふざけるな! 金返せ!」という怒声もかなり多く飛んでいた。当たり前である。

 似たような茶番劇は、その前年にもあった。2012年7月20日に京セラドームで行われた球宴第1戦。巨人の阿部慎之助捕手が当時巨人の育成コーチだった大道典嘉氏(現在はソフトバンク二軍打撃コーチ)の打法をマネて打席に立った。“ウケ狙い”だったのは明白で、これはお客さんやファンだけでなく一歩間違えば、対戦相手のパ・リーグメンバーに対しても非礼行為につながる。

 阿部は間違いなく日本球界を代表するスーパースターとはいえ、何をやっても許される立場ではないことを肝に銘じてもらいたい。余談ではあるが、阿部自身もこの行為については猛省し「あれはやってはいけないことだった。もう二度とやらない」と周囲に語っていたそうだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.