マイホーム購入のタイミング 「子供の将来」視点で冷静に判断をマネーの達人

» 2014年09月02日 07時00分 公開
[古賀秀之,マネーの達人]
マネーの達人

 2014年4月の消費税増税にともない、マイホームの駆け込み需要がさかんになったことは記憶に新しいところです。この「特需」も、いったんは落ち着きを見せていますが、その後も私たちファイナンシャル・プランナーには、「我が家の家計で住宅を購入しても大丈夫ですか?」という相談が多く寄せられます。今回は、いつも私が提示する判断材料について紹介します。

住宅購入後、家計が赤字続きになる家庭も

 まず、金銭的な面で住宅購入が可能かどうかは、「キャッシュ・フロー表」を作成するとおおよその判断がつきます。「キャッシュ・フロー表」とは、文字通り「お金の流れ」を表にしたもので、現在の収入と支出が今後も続いた場合に家計がどうなるかを予想します。

 これを作成して、住宅ローンを組んでも将来の家計にとくに問題がなければよいのですが、悩ましいのはボーダーラインにある家計。つまり、住宅ローンを組んでも毎年の預貯金残高はかろうじて黒字をキープできても、予期せぬ出費が起きた場合には、一気に赤字に転落してしまう危険性をはらんだ家計です。例えば子どもの進路の変更(地元の国公立大学希望から首都圏の私立大学に進学)や夫の転職による収入減、急激な物価上昇などがそうです。

 私はこれまで、勢いで住宅を購入し、住宅ローンや居住費などが原因で家計が赤字を続けているケースをたくさん見てきました。その大半が、住宅メーカーの人に購入を勧められ、そこで暮らす幸せな自分たちの姿をイメージし、将来の家計のことはあまり考えずに思い切って購入してしまうパターンです。

 こういう場合は、その家庭の「キャッシュ・フロー」について、業者や金融機関が考慮してくれることはあまりないでしょう。これも商売ですから、仕方のないことではありますが……。 

「子供の将来にとって」という視点で冷静に判断を

(写真と本文は関係ありません)

 現在、住宅を購入するかどうか迷っている人はぜひ、「子どもの将来にとって、本当に、今マイホームを購入する必要があるか?」を冷静に考えてみることをおすすめします。

 庭付き一戸建て、恵まれた教育環境――。親からすれば“子どもの幸せのため”と思うのは当然です。しかし、むりして組んだ住宅ローンのために、子どもの教育費が足りなくなったり、普段の生活費を節約しないといけなかったり、子育てが終わった後は夫婦の老後資金が全く残らない――という人生を送ることにもなりかねません。そういう親の姿を見て、子どもはどう感じるでしょうか?

 マイホーム購入は結構なことだとは思いますが、賃貸物件や実家に住みながら、まずは頭金(※)を貯める。そのうちに、子どもや親の将来像(子どもの進路、親との同居や介護費用の負担の可能性など)が見えてきます。また、親からの住宅資金援助や相続財産の発生があるかもしれません。その時点で、家族にふさわしい物件の購入を検討してみましょう。

(※)住宅購入時の自己資金の目安:購入価格の20%以上の頭金と取得費用を合わせて、購入価格の30%以上準備することが望ましい。

 教育費が不足する事態になったとしても、頭金として貯めてきた貯蓄を充てることもできます。マイホームはなくても、子どもを希望の進路に進ませてあげたり、月1回の外食や家族旅行を楽しむ――このほうが子どもにとっては幸せな思い出になるかもしれません。

 これを機会に、「親が思う子どもにとっての幸せ」と「子どもにとっての本当の幸せ」について、自分たちの幼少期から学生時代を思い出しながら、一度夫婦で話してみるとよいかもしれませんね。(古賀秀之)

著者プロフィール:

古賀秀之

熊本市出身。外資系生命保険会社、生損保代理店勤務後、独立。現在は、お金に関する総合的な相談業務、セミナーおよびFP試験対策講座の講師を努める。

「常にお客様のために……」をモットーに、第三者的立場でのアドバイスを心掛けている。

保有資格:CFP(R)認定者(日本FP協会)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、証券外務員II種(日本証券業協会)


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