そのプロジェクトで最も危ういとされているのが、エクソンモービルとロスネフチが北極圏で進めているプロジェクトだ。両社によるカラ海での試掘はすでに2014年8月から始まっているが、Financial Times紙が報じたところによると、業界のアナリストはこのプロジェクトが生き残れるかどうか疑わしいとしている。
エネルギー産業への依存度が高いロシアに対して、効果的な制裁をしようと思えば、エネルギー関連企業を直接標的にすることだが、それは両刃の剣でもある。欧州へのガス供給もさることながら、こうしたロシア企業への制裁は「結局エネルギー開発を遅らせ、世界のエネルギー不足が露呈するだけだ」というのだ。
例えば、石油大手BPの前CEOであるトニー・ヘイワード氏だ。ロシア企業への制裁は、西側企業による対ロシア投資を鈍らせ、長期的にみればエネルギーの供給に支障をきたす懸念があるという。
ヘイワード氏によれば、今は米国のシェールガスブームで世界的なエネルギー不足への懸念は薄れているが、それがなくなれば、どこから石油が来るのかという問題が出てくる。新しい油田やガス田が期待できるエリアは、基本的には北極圏だ。その開発はロシアの協力が欠かせないが、制裁を強化すればプロジェクトが何年も遅れる可能性があるという。
ロシアのプーチン大統領も、西側の制裁を気にしていないわけではないはずだ。むしろロシア経済が打撃を受ければ、国内の支持が揺らぐ可能性もある。それに本来、プーチン大統領が絶対に譲れなかったのはクリミア半島だけ。それを手中にしている以上、残った問題は、いかに国内やウクライナ東部の支持を失うことなく、有利な条件で停戦させるかという“解”を見出すことだ。
こうしたロシアと欧米諸国の“我慢くらべ”が続くなか、日本も苦しい立場にある。北方領土問題の解決に向け、ロシアと関係を壊したくない一方で、欧米の対ロシア制裁に歩調を合わせるプレッシャーとの板挟みになっているのだ。このまま両者の対立が長引けば、日本もさらなる不利益を被ることになる。今後も、政府の戦略的な外交が求められるのは間違いない。
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