さらに格安年俸選手たちの頭を悩ませるのが、野球用具だ。ユニホームは球団から支給されるが、バットやグローブはすべて自前。これらに関しても甲子園のスター選手やドラフトで上位指名される有名選手であれば、いきなり大手のスポーツ用品メーカーが「ぜひウチの商品を使ってください」とスポンサー契約を締結してくれ、野球用具一式を無償提供してくれるが、無名の選手たちはそうもいかない。
プロで使用する木製のバットは、おおよそ1本1万5000〜3万円。二軍にいる選手たちは技術が未熟で簡単にバットを折ってしまうケースが多く「年間でファームの若手は1選手あたり50〜70本ぐらい必要」と言われている。仮に安く見積もって1本1万5000円のバットを50本折ってしまえば、それだけで年間75万円の出費となってしまう。
「外食なんて簡単にできない。少し生き抜きしようと思っても、せいぜいファミレスでご飯を食べるのが精いっぱいです。寮にいれば、好きなだけご飯が食べられるわけだし食費で余計なお金はかからないですからね」(前出の選手)
だから二軍選手たちは苦しいファームの生活から抜け出そうと、皆必死になる。しかし、その一軍でも定着を果たせなければ生活はバラ色に激変するとまではいかない。
一軍に昇格すれば確かに最低年俸1500万円が保障されるが、これは「150日間一軍に出場登録されること」が条件。その条件に達しない場合は、日割り計算方式が用いられる。例えば年俸440万円の選手が一軍に登録されると、最低年俸1500万円から440万円を差し引いた額の1060万円を150日で割った約7万666円が1日分の保障額。二軍から昇格して一軍登録日数が30日だった選手には約212万円が後日支払われることになる。
とはいえ、一軍へ引き上げられたはいいものの期待を裏切るようなプレーで二軍再降格を言い渡された場合は、オフの契約更改での年俸大幅アップまではまず見込めない。さきに得られた一軍保障額は“あぶく銭”みたいなものだ。
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