輸出量7年で42倍! ニッカウヰスキーが海外で売れている&売ることができるワケ仕事をしたら“ウイスキー”が売れた(5/6 ページ)

» 2014年11月26日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

ビールとウイスキーの仕事

余市蒸溜所のポットスチル(蒸溜器)を点検している竹鶴政孝

楫: 今の私たちがこうして仕事ができるのは、先輩たちのおかげでもあるんですよ。もし、10年前、20年前の先輩たちが「ウイスキーが売れているな。どんどん売って、とにかくもうけようぜ」といった考えであれば、私たちは仕事ができません。

土肥: 日本のウイスキー市場をみると、1980年代の前半までは右肩上がりで伸びていた。その当時に、浮かれていた人たちがいたら、今のニッカウヰスキーは存在していないわけですね。

楫: ですね。

土肥: ウイスキー事業に携わっている人たちって、“駅伝の選手”のようですね。自分に与えられた区間はチカラを入れて走らなければいけませんが、そこで倒れてはいけない。できるだけいい成績で次の区間の人に“たすき”を渡さなければいけない。もし、自分が持っているチカラ以上のものを出し切って倒れてしまったら、棄権しなければいけない。それって、市場からの撤退を意味しますよね。

海外で「フロム・ザ・バレル」が売れている

楫: はい。例えば「フロム・ザ・バレル」は海外でヒットしていますが、この商品が発売されたのは1985年。来年30周年を迎えるのですが、30年以上前の先輩たちが開発して、蒸留して、熟成してくれたおかげて、いま販売することができるんです。ご指摘のとおり、“駅伝の選手”のようにたすきをつないでいかなければ、この仕事はできません。

土肥: それにしても長いサイクルで仕事をされていますね。アサヒグループの主力商品といえば、やはりビール。このビール事業に携わる人たちって、陸上に例えると100メートル走のアスリートのようなものですか?

楫: かもしれません。

土肥: ビール事業に携わっている人はこんな感じですかね。「とにかく、じゃんじゃん売っていこう」「えっ、完売した? なにやってるんだ! お客さんが待っているんだから、早くつくって、早くお届けして」と。

 どちらが良い・悪いといった話ではなく、ビールとウイスキーの仕事は、全く違うということですね。

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