石破大臣も興奮! ウワサの583系「鉄コン列車」に潜入してきた杉山淳一の時事日想(3/6 ページ)

» 2015年01月09日 08時00分 公開
[杉山淳一Business Media 誠]

583系電車が最適な理由

 鉄道ファンにとって興味深いルート、鉄道コンの趣旨に沿った運行時間の設定。「さすが日本旅行ですね」と広報担当の矢嶋敏朗氏にお話を伺ったところ、具体的なルートを指定したわけではないそうだ。また、583系という車両も指定したわけではないという。ツアーの趣旨と要望を伝えたところ、JR東日本がルートを設定し、583系電車を選んでくれたという。その情報を元に、あとから参加者募集のプレスリリースやパンフレットを制作したとのこと。もしかしたら、鉄道コンの趣旨をもっとも理解していたのはJR東日本かもしれない。なぜかというと、583系の座席配置が参加者の盛り上がりに貢献していたからだ。

 “石破車掌”が語ったように、583系は「夜は寝台列車」「昼は座席列車」として運行するために作られた。昼間の特急では向かい合わせの座席、それが夜になるとベッドに早変わり。さらに天井から2段分のベッドが降りてくる。電車3段式寝台車である。西日本では新大阪駅や京都駅と九州を結ぶ列車に導入され、東海道新幹線と接続していた。夜行列車として九州に行き、到着後は昼間の特急として戻ってくる。東日本では東京と青森を結ぶ列車に起用された。上野駅から寝台特急として出発し、青森からは昼間の特急として戻ってくる。もちろんそれぞれ逆方向のパターンもあった。

 この「夜はベッドに変身する向かい合わせの座席」が重要だった。ベッドに必要なスペースを確保するため、座席にした場合は他の座席特急よりもゆったりしている。4人向かい合わせのボックス席だから、男女2人ずつで座ると適度な距離感が作られる。初対面で密着すれば気まずい。だけど声が届かない距離でも困る。ちょうど良い距離感で、他のボックスと仕切られた感もある。参加者は4人の対話に集中できるというわけだ。

583系の座席は合コンにほどよい広さ。両側の座面を中央に寄せると、背もたれが降りてベッドになる 583系の座席は合コンにほどよい広さ。両側の座面を中央に寄せると、背もたれが降りてベッドになる
座席の天井部分にベッドが格納されている 座席の天井部分にベッドが格納されている

 寝台特急が次々に廃止されると、583系は居場所がなくなった。昼間の座席特急として使えるとはいえ、座席の半分は後ろ向き。見知らぬ人と対面したままの長時間移動は気まずいからだ。しかし鉄道コンにとっては、この座席はちょうど良い。しかも、もともと寝台車だから乗り心地も良く、走行音も静かである。語らいにはピッタリだ。583系は今後、鉄道コン列車としてやっていけそうな気がする。

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