あるベテラン税理士は、顧問先から契約書に貼る印紙税の相談を受けたときは、その契約書のコピーをもって税務署に行くと言います。というのも、「その契約書に印紙は必要か」「いくらの印紙を貼ればいいのか」については、契約書に書かれている内容や金額の記載方法などによって違ってくるからです。
本屋で見かける印紙税の解説本の中には、「文書名の索引付き」というのをうたい文句にしているものがよくあります。しかし、正しくは文書名から印紙税がかかるかどうかを判断することはできません。「○○契約書」であろうと「○○覚書」であろうと、印紙税がかかるかどうかは、あくまでもその文書に書かれている内容で判断されるからです。
逆に考えれば、同じ「○○契約書」という文書名で同じような契約内容であっても、記載の仕方によって印紙が必要なこともあれば、ちょっとした工夫で印紙を貼る必要がなくなる、ということもあるわけです。
そもそも、日本で最初に印紙が貼られたのは「生糸」だそうです。明治のはじめ、粗悪な生糸の輸出を取り締まるため、政府が生糸の品質を保証する証しとして生糸印紙を導入しました。印紙は、政府の“お墨付き”だったわけです。
しかし現代では、印紙が貼ってあろうとなかろうと、契約書の効力には何の影響もありません。
印紙税は甘く見ると怖い税金ですが、仕組みさえちゃんと理解すればアイデア次第でいくらでも節税できる、ユニークな税金でもあるのです。
さまざまな契約書や受取書に貼る「印紙」。身近な税金ながらその仕組みはとても複雑で、契約書を前にして「印紙が必要なのかよく分からない」と悩んだ経験のある人もいるのでは?
本書は、印紙の貼り漏れや貼り過ぎを避けたいという人のために、ビジネスでよく交わされる契約書等を例にとり、課否判断のポイント、税額計算の仕方を解説しています。
「そもそも印紙税って何?」という人はステップ1[印紙税の基礎知識]へ。
どんな契約書に印紙がいるのか、いくら貼ればいいのかを知りたいときはステップ4[契約書例で見る印紙税の判断ポイント]へ。
誰が、どこから読んでも役に立つ、印紙税実務の入門書です。
田辺直樹(たなべ・なおき)
昭和38年生まれ。昭和63年12月、税理士試験合格。大原学園で簿記・税理士受験の専任講師として約25年間、教鞭をとる。平成22年1月に独立し、株式会社ナオ企画を設立。大原学園で培った講師のキャリアを生かし、“分かりやすくて、すぐ役に立つ”税務セミナー講師として活躍している。
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