「面倒くさい」と思っていませんか? 日本の「強み」と「弱み」を知るはあ〜、面倒

» 2015年06月26日 18時19分 公開
[土肥義則ITmedia]

 先週、最も読まれた記事は『北陸新幹線・大阪延伸ルート、「滋賀県外し」に知事がマジギレ』、次いで『えっ、予定通りに飛んでいない? 機内で何をしているのか、パイロットに聞いてきた』『“ハンカチ王子”斎藤佑樹の人気はなぜ凋落したのか』でした。2位にランクインしたパイロットの話については、今週の水曜日(24日)に後編をアップしていますので、そちらもご覧ください。

面倒!

 会社で仕事をしていて「面倒だなあ」、家で家事をしていて「面倒だなあ」と言っていませんか? いきなりなんだよと思われたかもしれませんが、この「面倒」という言葉……これまでは「強み」だったのに、いまは「弱み」になっているのでは? そう感じさせられた本をご紹介します。タイトルは『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』(講談社+α新書)。著者は、デービッド・アトキンソンさん。ゴールドマン・サックス証券で活躍し、現在は日本の重要文化財などを補修している小西美術工藝社で社長を務めている方です。

 よく「日本人はリスクを冒さない」といった言葉を聞きますが、本当にそうなのでしょうか。リスクを冒さない理由として「欧米人は狩猟民族で、日本人は農耕民族だから……」といったこともよく聞きますが、よくよく考えると理屈に無理があるような。リスクテイクしない背景として、アトキンソンさんは「不要の衝突を避けようということで生まれたのが、『面倒くさい』という便利な言葉だったのでは」と指摘。

 このほかにも「面倒くさい」を理由に、日本人はさまざまな「面倒」を避けているような。例えば「終身雇用」。日本人は勤勉だから「終身雇用」というシステムが向いているといった声もありますが、本当にそうなのでしょうか。会社側は、新しい人材を探したり引っ張ってくるのは「面倒」。現場側も、新しい人材が入ってくれば、いろいろと教育しなければいけないので「面倒」。「終身雇用制度というのは、経営者側と労働者側の『面倒くさい』がうまく合致したことによって生まれたシステムといってもいいかもしれません」(105ページ)

 まだまだあります。数年前からダイバーシティ(多様性)は大切だ、といった声がありますが、日本にたくさんの外国人がやって来たら「面倒」だなあ、と思っていませんか。ウーマノミクスで女性の社会進出を促進しようという動きがありますが、会社の中にたくさんの女性がやって来たら「面倒」だなあ、と思っていませんか。こうした事象に対して、彼はこのように綴っています。「少子高齢化で『人口』という強みが揺らいでいる今、『面倒くさい』という日本社会の文化も転換を求められているのではないでしょうか」(115ページ)と。

 アトキンソンさんの指摘に反発される方もいらしゃるかもしれませんが、この本の良いところは「日本がダメだ」という結論にもっていこうという意図がないこと。かつての「強み」は、いま「弱み」になっているけれど、再び「強み」にもっていく必要性を強調。具体的な方法も提示されていますので、興味がる方はぜひ一読を。

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