ヒットの香りがプンプン漂う「ザ・トースター」は、どのようにして完成したのか水曜インタビュー劇場(トースター公演)(1/7 ページ)

» 2015年07月01日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

 6月、東京の某百貨店。とある新商品を使ってできたモノを食べるために、人だかりができていた。しかし、現場にいた担当者は焦りを感じる。「このままでは用意していた材料が不足するのではないか?」。嫌な予想は的中。行列は途切れず、材料のパンが底をついてしまったのだ。

 その新商品とは、バルミューダの「BALMUDA The Toaster」(以下、ザ・トースター)。フランスパンをトースターで焼いてみたけど、表面がカリカリに焦げただけ。クロワッサンを電子レンジで温めてみたけど、フワフワするだけ。そんな経験をしたことがある人も多いと思うが、この商品を使えば違う。食パンやフランスパンなどが“しっとり感”を保ったまま、焦げる手前の焼き加減で仕上がるので、試食会に多くの人が詰めかけているのだ。

 なぜそんな味を出せることができるのか。仕組みを簡単に紹介しよう。付属の小さなコップに水を入れ、それを指定の場所に入れる。次にトースターの電源を入れると、スチームが中で充満し、パンの表面は薄い水分の膜で覆われる。水分は気体よりもはるかに速く加熱されるので、パンの表面だけが軽く焼け、パンの中の水分が閉じ込められる。ここからヒーターの制御がスタートし、焼け上がるのだ。

 詳しいことは他の記事を読んでいただくとして(関連記事)、問題は価格。他のトースターであれば、千円札を数枚出せば購入できるが、ザ・トースターはケタが違う。価格は2万2900円(税抜)。「ちょ、高いでしょ。そんなに高いのは買えないよ」と思われた読者もいると思うが、発売を控えて予約が殺到しているのだ。

バルミューダの「ザ・トースター」

 バルミューダといえば、数年前に発売した高級扇風機「GreenFan(グリーンファン)」を思い出す人も多いのでは。当時、同社は倒産危機に追い込まれていたが、この商品がヒットしたことによって息を吹き返したのだ。市場に旋風を巻き込んだグリーンファンと比較して、ザ・トースターの予約注文は20倍ほどだという。

 “ヒット商品仲間入り”の香りがぷんぷん漂うトースターは、どのようにして開発されたのか。大手家電メーカーがつくれなくて、なぜ小さな会社のバルミューダがつくれたのか。社長の寺尾玄(てらお・げん)さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

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