3000系「銀河鉄道999」は惜しまれつつも“予定通り”引退した。ところが「良い思い出ができて良かったね」では終わらなかった。3000系「銀河鉄道999」が走ってくれたおかげで、全国から鉄道ファンや原作ファンが訪れた。特にアニメ制作会社の東映アニメーションがある大泉学園駅は松本零士氏の自宅最寄り駅という縁で、ラッピング電車に先駆けて銀河鉄道999の車掌像が立った。
さらに、ラッピング電車の運行に合わせて駅北口に大壁画を出現させ、発車メロディもタケカワユキヒデ氏作曲の銀河鉄道999テーマ曲になった。また、駅周辺の6つの商店街は、銀河鉄道999の登場人物であるメーテルをモチーフとしたキャラクター「ゆめーてる」をいただき、「ゆめーてる商店街」として賑わいをみせている。これが海外のアニメファンにも浸透したようで、大泉学園駅周辺がアニメのテーマパークだろうと勘違いし、松本零士先生宅まで押しかける外国人観光客もいたという。
西武鉄道が漫画やアニメを使って安全キャンペーンなどを展開した理由は、沿線にトキワ荘をはじめ、アニメや漫画にゆかりのある人物、企業が多かったからだ。3000系「銀河鉄道999」もその流れの1つである。松本零士氏は銀河鉄道999の縁で、各地の鉄道会社に快く協力している。ぜひ地元の西武鉄道でも、というわけだ。ところが、走り始めてみたら、経済的にも沿線の人々の喜びも盛り上がり、思いも寄らぬ効果があった。
こうなると、3000系「銀河鉄道999」がなくなって寂しいでは終われない。もう一度走らせたい、という気持ちも強くなる。沿線の人々は「銀河鉄道999」を復活させたい。しかし西武鉄道の事情としては、ラッピングして最後の花道とする電車がない。
そうした中、新たなプレイヤーが現れる。秋葉原UDXビルを本拠地とする新産業文化創出研究所だ。この会社は2005年の秋葉原クロスフィールドのオープンと同時に発足した。秋葉原クロスフィールドは東京都による神田市場跡地の再開発計画で、当時の石原慎太郎都知事が「秋葉原を世界のIT産業の中心にする」という構想が基になっている。
新産業文化創出研究所は、この思想の下、官民学を連携した新しい分野、ビジネスを仕掛けていく存在だ。この会社の発足当時、私の大学時代の恩師が感性工学という新しい学問の1つとして「調理場をデジタル化し、料理のレシピ、調理手順を著作物として共有するなどの実証実験」を実施した。それが「東京フードシアター5+1」というオープンキッチン施設だった。これはなかなかおもしろい切り口で、秋葉原に詳しい人なら覚えているかもしれない。
新産業文化創出研究所は、UDXビルにある東京アニメセンターの設立にもかかわっている。アニメの展示とグッズの販売が主で、外国人観光客も訪れる。秋葉原に集まる人々が好むアニメやゲームなどのコンテンツに注目し、これまでにも秋葉原を海外からの観光の拠点とするための「クールジャパンフロント研究会」「秋葉原cafe」など、いくつかプロジェクトを立ち上げた実績がある。
その新産業文化創出研究所が、3000系「銀河鉄道999」が引退して2カ月後の2015年2月27日に「空想商品開発研究会(空想世界実現化プロジェクト)」の第1回を開催した。そのテーマが「『銀河鉄道999』空想科学技術から空想商品(もの・サービス・まち)の研究開発プロジェクトへ」だった。このときのパネリストとして、西武鉄道 鉄道本部運輸部、サイバーエージェント・クラウドファンディングが参加している。ここで4カ月にわたって煮詰められた内容が、今回の「銀河鉄道999 現実化プロジェクト」というわけだ。
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