時間と体力の許す限り、1軒でも多くの店に行きたい――ラーメン評論家・大崎裕史氏(後編):あなたの隣のプロフェッショナル(3/3 ページ)
広告代理店で営業職にあった大崎氏は、なぜラーメン評論の道へ進んだのか? 多い時には1日10杯以上ラーメンを食べることもあるという氏の健康管理とは? 実食数1万6000杯以上、「日本一ラーメンを食べた男」インタビューの後編をお送りする。
「情報を流す時代」から「情報を整理する時代」へ
独立・起業から、3年半近くが経過した。今、何を思うのだろうか? 「私は、今までのやり方を変えなければいけない時期に来ていると感じています」と大崎氏は静かに語り出す。
「過去13年間は、自分にとって『情報を流す時代』でした。しかしこれからは、『情報を整理する時代』だと思うんですよ」。
インターネットの普及に、ラーメン・ブームが重なり、今や、日本中にラーメン関連情報が氾濫しており、はっきり言って、その質は玉石混交である。一般ユーザーとしては、情報がないのも困るが、多過ぎるのもまた困りものなのだ。
そこでこれからは、情報の交通整理をすることが自らのミッションになると大崎氏は考える。
グルメというくくりで見るならば、フランスに「ミシュラン・ガイド」、アメリカには「ザガット・サーベイ」という世界的なレストラン・ガイドがある。世界のラーメン店に関しても、こうした信頼性の高いガイドを出すということだろうか?
「具体的には、まだ申し上げようがありませんが、いろいろな可能性について検討を始めているところです」
乳酸菌で健康管理 〜体が資本、プロとしての節制も
取材でお会いした日も、大崎氏は我々とともに冷やし担々麺を食べた後、「今日はもう1軒行きます」と話していた。しかも前編でも述べた通り休日ともなれば1日8〜11軒という驚異的なペースでラーメンを食べている(参照記事)。実際、グルメ・リポーターには、痛風で苦しむ人も多いと聞く。体が資本のラーメン評論家として、どのようにコンディショニングしているのだろうか?
「メタボ半歩手前ですよ」と自嘲気味に語る大崎氏であるが、「それだけラーメンを食べているのに、なぜ太らないのだろう」と不思議に思うのは筆者だけではないと思う。
「スポーツはやってないし、サプリメントも服用していません。ただ昔から乳酸飲料は毎日飲んでいますし、ヨーグルトも大好きなので、もしかするとそれが結果的に良かったのかもしれませんね。ただ、コーラとか柑橘系のジュースは一切辞めましたし、お酒を飲むのも、週に1回程度にしています。日常生活で飲むものと言えば、ウーロン茶、煎茶、ミネラルウォーターなどが中心でしょうか。タバコも5年前に辞めました」(大崎氏)
やはり、食のレポートをし続ける職業柄、自己管理は不可欠ということか。
「インターネットの普及とラーメン・ブームが拡大する中で、本当に、美味しいラーメン店が増えましたし、それに加えて限定メニューも増えました。そのために、食べるべき店が山のように出てきたんですよ。時間と体力の許す限り、一軒でも多くの店に行きたいんです」。
日本人の国民食・ラーメン。15年以上営業を続ける老舗がある一方で、毎年数え切れないほどの新店がオープンし、そして閉店しているのが現状だ。人気店でも期間限定の商品を出すなど、“食べるべきラーメン”が尽きることはない(クリックすると全体を表示)
そして、大崎氏は最後に言った。「民放キー局で、深夜の時間帯に自分の番組を持ち、情報発信をしてゆきたいですね」。
近い将来、大崎氏がMCを務める新番組が現れることを楽しみにしたい。大崎氏の東奔西走の日々は続く。
→食べるプロ「ラーメン評論家」に必要な5つの資質――大崎裕史氏(前編)
嶋田淑之(しまだ ひでゆき)
1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」、「43の図表でわかる戦略経営」、「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。
関連記事
- 食べるプロ「ラーメン評論家」に必要な5つの資質――大崎裕史氏(前編)
ラーメンが好き、という人は多い。食べ歩きブログを書いているという読者もいるかもしれない。しかし、ラーメンマニアとプロの“ラーメン評論家”との間には、越えがたい壁がある。これまで食べたラーメンの数1万6000杯以上、「日本一ラーメンを食べた男」に話を聞く。 - 天然氷のかき氷店「埜庵」主人――石附浩太郎氏(前編)
暑い日に食べる、頭がキーンとするおやつ――そんなイメージを根底から覆すかき氷を提供する店がある。冬の日も常連が、時には噂を聞きつけた海外からのお客もやってくるという、天然氷を使った絶品かき氷の店。その店主は、自ら冬になると山にこもり、天然氷を作る“氷のプロ”だった。 - 天然氷のかき氷店「埜庵」主人――石附浩太郎氏(後編)
フルーツのかき氷で人気の「埜庵」店主は、音響機器メーカーに勤める成績優秀な営業マンだった。東京で働くビジネスパーソンがなぜ天然氷に目覚め、かき氷店を出すに至ったのか? 転機となったのは、秩父の天然氷蔵元「阿左美冷蔵」との出会いだった。 - インタビュー記事・バックナンバー
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.