マンション価格の底値はどこ?――不動産鑑定のプロに聞いてみた:大出裕之の「まちと住まいにまつわるコラム」(2/2 ページ)
急激に冷え込んでいる不動産市況。こうした状況下でマンションなどを買う場合、どういった点に気をつければいいのか。不動産鑑定のプロ、東京カンテイ市場調査部の中山登志朗上席主任研究員に話を聞いた。
マンションにも“PER””PBR”がある
「マンションを探すなら、その後どうするのかという出口戦略を考慮に入れるべきだ」という話にはうなずけるものがある。とはいえ住宅を買うのに、売りやすいか、貸しやすいかだけを基準にして探す人は少ないだろう。資産価値だけではない各種の側面を、優先順位を自分で考えつつ検討していきたいものだ。
「何といっても住まいは“立地”という条件に依存します。立地9割だと思ってください。交通利便性、生活利便性、地域の安全性、資産性、収益性、これらはすべて立地に影響を受けます。住まいのハードスペック(居住快適性、安全性)も大切ですが、立地についての各種の側面を考慮してください」
そして、中山氏は「マンションPER(Price Earnings Ratio)」と「中古マンションPBR(Price Book Value Ratio、資産倍率)」というマンションの価値をチェックする方法を教えてくれた。
「マンションPERは、マンション1戸当たりの収益力を示す指標で、賃料が変わらないという前提で専有面積70平方メートル換算の新築マンション価格が、同面積の物件の月額相場賃料の何年分に相当するかを示すものです。つまり、PERが低い数字になるほど、収益性が高いと言えます」
マンションPER=マンション価格÷(月額賃料×12)
「マンションPBRは、一定期間内に分譲されたマンションの中古平均価格が新築平均価格の何倍になっているかを示すものです。公表データでは10年間に分譲された新築マンションの平均価格を駅別に算出し、同じマンション群から発生した同期間の中古流通価格の平均値と比べています」
マンションPBR=10年平均中古マンション価格÷10年平均新築マンション価格
詳しくは東京カンテイの調査結果を見ていただきたいが、2008年7月のデータによると、都心部の駅近くで新築マンションを10年間所有・運用したとすれば、4500万円以上の利益が発生する計算になる。価格が高止まりしていた2007年までの流通価格を含んでいるので割り引いて考える必要はあるが、それでも驚きの数字だ。
読者のみなさんも、自分で調べてみたり不動産会社にこういった視点で質問したりすると、「住まい」としてのマンションのさまざまな側面が見えてくるのではないだろうか。
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