学校ビオトープと学校の庭……この違い分かりますか?:松田雅央の時事日想(3/3 ページ)
「学校ビオトープの環境教育」と「学校の庭の環境教育」の違いをご存じだろうか? 環境教育に関心がある人あればイメージできるだろうが、「よく分からない」「初めて聞いた」という人も多いのでは。今回の時事日想は、本家本元ドイツの環境教育を紹介する。
多様な体験学習
(一般的な)学校の庭の目的を簡潔に記せば、それは五感で自然に接すること。見るだけでなく、植物に触り、ハーブの香りをかぎ、果実や野菜を食し、鳥の声を聞く。
日本だと敬遠されがちな野生のハチも学校の庭では大切にされている。野生のハチは自然環境の豊かさを測るバロメーターとなり、地バチなど大人しい種類のハチは観察に適している。人間を恐れず、卵→幼虫→蛹→成虫のすべての段階を観察でき、しかも見栄えのする昆虫・小動物はそう多くない。この点、ハチは最適であり、ハチを過度に恐れる必要は全くない。
学校の庭では学校ビオトープと違い、子どもたちが農作業を体験できる。単に植物の成長を観察するだけでなく、花や野菜の育て方を勉強し(理科)、農業について学び(社会科)、収穫した野菜で調理する(家庭科)ことが可能だ。小学校高学年になれば野菜や果物の流通を勉強したり、植物ゴミを堆肥化するコンポストの仕組みを研究する発展的な学習も考えられよう。これらは一例だが、学校の庭は学校ビオトープよりも幅広い環境学習(総合学習、体験学習)のテーマを提供してくれる。
恵まれている日本の学校
日本とドイツの学校を比較すると、何より異なるのはその敷地面積だ。ドイツの学校は必ずしも校庭や体育館を備える必要がなく、市街地には「校舎に使われる建物」+「小さな遊び場」だけの学校も珍しくない。郊外の新設校には運動施設も併設されるが、運動施設を持たない市街地の学校の児童生徒はわざわざ公共のスポーツ施設へ出かけて体育の授業を受けることになる。休み時間に校庭で思いっきり遊べる日本の子どもたちはたいへん恵まれている。
ドイツに比べて日本の学校は敷地に余裕があり、元々何かしらの庭を持つところが多い。そこでもう一歩、単なる庭からステップアップした学校の庭を整備してはどうだろう。「学校ビオトープ」を脱皮して「学校の庭」を整備することにより、環境教育の新たな可能性が広がるに違いない。
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