センターの前田敦子がいなくなって、何が生まれるのか:AKB48の戦略!(2/2 ページ)
AKB48劇場には、さまざまな職業の人たちが訪れる。彼らはメンバーを見て「この子はどうやったらおもしろいだろうか」とワクワクして、さらに「前田敦子がいいね」と言っていたようだ。
前田敦子がいないシチュエーションが次に何を生み出すか、それが楽しみ
田原:秋元さんは前田敦子さんを見ていて、「そろそろAKB卒業の頃合いだ。卒業させよう」と思ったんですか?
秋元:いや、違います。本人です。本人の希望ですよ。映画やドラマの主演とかCDを出すとか、1人の仕事がだんだん増えてきてグループから離れて活動することが多くなり、それにつれてもっと集中したいと本人が思うようになったんです。前田は不器用なので、AKB48とソロの活動の両方はできないということだったんでしょう。AKBはもともと学校みたいなものですから、やがて卒業し独り立ちしていくのは自然でしょう。
田原:そんな前田がいなくなって、AKBのエースがやめちゃって大丈夫なの?
秋元:そう聞かれれば、逆に「前田の位置に誰が来るのか。おもしろいじゃないか」と。昆虫学や動物行動学的には、どうも本当ではないらしいですけど、僕がすごく好きなアリの話があるんです。100匹のアリがいると、20匹が怠け者で80匹が働き者。そこで怠け者の20匹をはずして80匹にすると、また20%の16匹が働かなくなって80%の64匹が働く。逆に、全員怠け者だった20匹のアリのほうは、80%が働き始める。
つまり集団のメンバーは、みんな集団のなかで役割を見いだし、なかには怠ける者もいる。でも、誰かが抜けると、その穴を埋めるかのように誰かが働き出す。
田原:おもしろいね。
秋元:集団の復元力といいますかね。僕がわくわくするのは、中心にいたエースの前田敦子がやめて、そんな復元力がAKB48でも成立するかということです。「もう前田はいないんだよ」というシチュエーションが、次に何を生み出すか。それが楽しみなんです。
何か分からないですけど、「えっ、こんな子が輝くのか」とか「もうセンターシステムじゃないんだ」とか、いままでと違うAKB48に変わっていく。変わっていくのがAKBです。AKBが怖いのは、前田がずっと同じポジションに居続けて、そのまま飽きられていくこと。それは、もっともAKBらしくないことじゃないですか。
田原:大島優子がセンター、高橋みなみがキャプテンを務める。秋元さんは、次はこの子かあの子だなという見当がつくんですか?
秋元:いや、つかないです。そういう子を育てようとしていますけど。
田原:前田敦子が抜けて、みんな「自分が頑張らなきゃいけない」と思っている。そんな危機感がある?
秋元:いや、危機感というよりも、予定調和と正反対の状況にある。積み木の1ピースを抜いてしまったら、ガラガラッと崩れて形が変わるかもしれないけど、そこに積み木が存在し続けることは間違いないでしょう。
(つづく)
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