米国の予算審議が滞り、世界景気の腰を折る:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
米国の2014年度予算の審議が進まず、17年ぶりに連邦政府の一部機能が閉鎖されるという異常事態に陥っている。もう1つ、債務上限枠の引き上げ問題もあり、世界経済はワシントンの動向を注視している。
問題は、こうした米政府の予算や債務の問題が、回復しつつある景気の腰を折らないかということだ。政府職員の一時解雇が現実のものになれば、その影響は小さくない。来週までに予算が決着しなければ、政府職員210万人強のうち最大80万人が給料無しの「自宅待機」になる可能性があるという。
幸いなことに米FRB(連邦準備理事会)は9月の政策決定会合で現在の超金融緩和を維持することを決めた。この決定は「引き締め」を予想していた市場を驚かせたが、もし9月に縮小を決めていたら、政府のごたごたのショックはもっと大きかったかもしれない。
バーナンキFRB議長がこう発言したことがある。「FRBは、米国の景気を回復させるための努力を続ける。『財政で向かい風が吹く』可能性があるからだ」。この発言は、大統領と連邦議会の双方に財政問題を解決する能力がないことを示唆したものと受け取られている。
米国民はワシントンの機能不全に嫌気がさしている
クリントン大統領のときは4週間にわたって政府機能の一部が閉鎖されたが、今回がどうなるかはまだ分からない。しかしもう1つの債務上限枠の問題はそれこそ政治の機能不全が場合によっては世界経済を再び混乱に陥れるかもしれないという話である。
米政府の累積債務は17兆5000億ドル(およそ1750兆円)に達すると予想され、債務上限額を引き上げないと国債を償還できなくなる懸念がある。もちろん米国債がデフォルトになったことは歴史上一度もないし、世界中で取引され、多くの国で外貨準備にもなっている米国債がもしデフォルトということになれば、それこそ政府の一部閉鎖どころではない騒ぎになる。
共和党がこの債務上限の引き上げをオバマ大統領の政策で譲歩を引き出す道具に使っているため、大きな問題になる。ただ米政府の債務が急増し始めたのはブッシュ政権の8年間だ。その大きな理由は減税とアフガニスタンとイラクの戦費である。さらに、リーマンショックそのものも共和党政権の市場に任せる政策の結果といえる。リーマンショックの後、膨大な財政支出を決定したのはオバマ大統領だが、それは民主党の政策というわけではなく、まさに緊急避難だった。
米国民の多くが、ワシントンにおける政治の機能不全に嫌気がさしているのには、このような事情がある(CNNの世論調査では議会に満足している有権者は1割しかいないという結果が出ている)。これは内政問題ではあるが、世界の投資家が注目する問題でもある。10月は米政府の財政がどうなるか、FRBが超緩和の縮小に踏み切るのかどうか、米国から目を離せないことになりそうだ。
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