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マンデラ追悼式で浮き彫りになる現代の人種差別伊吹太歩の時事日想(3/3 ページ)

アパルトヘイトと戦ったネルソン・マンデラ元大統領の追悼式典では、さまざまな話題が提供された。いくつかの報道では、いまなお残る人種差別の現実が見え隠れする。

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なぜイスラエルの首脳陣は追悼式に参列しなかったのか?

 今回の追悼式をめぐって、人種問題に絡んで恐らく最も物議をかもした国がある。イスラエルだ。

 イスラエルの首脳は、追悼式に参列しなかった。しかもその理由は、「南アフリカまで行くのに費用がかかりすぎる」というものだった。確かに200万ドル(約2億円)近くかかるようだが、それでもベンヤミン・ネタニヤフ首相は過去に経費としてアイスクリーム購入代に2700ドル(約27万円)を使ったり、服やメイクに1万8000ドル(約180万円)をかけて批判されてきた「浪費家」として知られる。

 世界中の首脳が集まる追悼式だ。シモン・ペレス大統領が風邪で参列できなかったことは仕方がないにしても、人権と自由のために戦った歴史的人物の追悼式に行かないのはいかがなものかと国内でずいぶん批判された。

 だが現実には、そんなバカにしたような言い訳をするほど、マンデラの追悼式には行きたくもないし、行く気もなかったのである。その背景には、長く続く中東和平問題がある。

イスラエルは事実上のアパルトヘイト国家だという批判

 イスラエルは、パレスチナ人に対して事実上のアパルトヘイト(人種隔離政策)を行っていると批判されている。アパルトヘイトの撤廃のために人生を懸けて戦ったマンデラ氏の追悼式には出す顔がなかったのではないか、との指摘もあるのだ。

 しかもマンデラ氏は、イスラエルに対してパレスチナ人の人権を訴えたパレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長とも親しかった。2人ともノーベル平和賞受賞者だ。ただその流れから、イスラエルの保守勢力にとってマンデラ氏は「テロリスト」だとの認識が残っている。

 イスラエルはアパルトヘイトを強いた政権と密な関係を築いていた歴史がある。そして最近でも、パレスチナ側に同情的な南アフリカがイスラエルと距離を置いていることも背景にはある。

 追悼式から10日後の12月15日には、故郷である南東部の東ケープ州クヌで、マンデラ氏の埋葬式が行われた。でたらめ手話通訳や自分撮りはご愛嬌(あいきょう)だとしても、人種差別と戦って偉業を成し遂げた偉大な人物の追悼式をめぐって、ミシェルやイスラエルにからむ「人種差別」の話があらためて出てくることは残念でならない。

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