「ToKoPo」知っていますか? 地下鉄のポイント還元施策から見えてくること:杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)
4月1日より消費税率8%に上がり、鉄道運賃も改定された。首都圏ではICカード乗車券で1円単位の運賃が採用されるなど、話題も多い。その一方で、東京の地下鉄のポイント制度はあまり知られていなかったりする。この機会におトクな制度を知っておこう。
PASMOの可能性と、東京の地下鉄一元化
「ToKoPoカード」と「メトロポイントPlus」、そして(今回は詳しく触れなかったが)バスのポイント還元サービス「バス得」は、IC乗車券をより柔軟に運用した好例である。1日乗車券は鉄道会社の増収施策だけではなく、「公共交通機関利用の推進」という意味を持っている。ポイント還元制度はその範囲を一般の乗車にも拡大し、かつ休日の還元率を増やすことで、従来の1日乗車券よりも柔軟な運用ができている。
JR東日本のSuicaも含めて、いくつかの会社は電子マネーサービスについてポイント付与を実施している。しかし乗車についてのポイント付与の事例は少ない。こうした施策は地下鉄に限らず、関東大手私鉄でもぜひ実施してもらいたい。PASMO共通のポイント還元制度を作れば、マイカーから公共交通機関へのモーダルシフトがいっそう進み、環境保全にも貢献するだろう。
今回紹介したポイント制度について、東京都交通局と東京メトロは独自の施策をとっている。ところが共通1日乗車券のサービス向上には両者で協調する姿勢が伺える。これは石原・猪瀬東京都知事時代からの地下鉄一元化構想の影響だろう。国土交通省はいったんは反対の立場を取った。しかし猪瀬前知事は積極的で、のちに国土交通省も推進する方針に変わった。
地下鉄一元化について、賛成、反対のどちらの立場も「東京の地下鉄を利用しやすく」という意見は一致している。その1つの形が2013年に実施された「九段下駅の壁の撤去」だ。となり合っていた都営新宿線と東京メトロ半蔵門線の間の壁を取り払い、乗り換えを便利にしたというもの。今回の新しい共通1日乗車券「Tokyo Subway Ticket」にもその意思が継承されているとみられる。
さて、現東京都知事の舛添氏からは、地下鉄一元化について今のところ具体的な意見は出されていないようだ。石原・猪瀬時代の施策を継続するか否か、その発言と動向にも注目したい。
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