え? 「過半数が50歳以上」に──2023年のニッポン、一体どうなる?:博報堂生活総研・吉川昌孝の「常識の変わり目」(2/2 ページ)
「昔はこうだったのに」──。これまでの常識とは違うことが常識になりつつあると感じる事象はありませんか。データで読み解くと、常識の変わり目が見えてきます。今回は、「過半数が50歳以上」になると予測される日本の人口分布についての変わり目を探ります。
30代1人に対し、50代以上の6人が取り囲む……社会に?
そこで、社会人の中でも働き盛り、伸び盛りと言われる30代に対して、その先輩や上司にあたる50歳以上の人がどれぐらいの比率になるのかを計算してみました。
バブル経済絶頂期である1992年は、30〜39歳の人口1700万人弱に対して50歳以上は約3700万人でした。30代1人に対する50歳以上の割合は約2.23人となります。
それが2000年には同2.8人に、2014年現在はなんと同3.55人に増えました。当時の30代は上の人数が少なく、今より自由に振る舞っていたのではないでしょうか。
確かに、経済状況がよかったこともあり、(私が社会人になったばかりの)1990年ごろの30代の先輩方は、どなたも本当に元気でした。遊びも仕事も、上の人たちにどんどんかけあって、自分たちの世代のペースでガンガン進めていたと記憶しています。「自分も30代になったら、こんなふうになるんだろうなあ」と私も淡い夢を持っていました。
ところが、そうではありませんでした。その後訪れたバブル経済の崩壊、そして就職氷河期を経て、私が30代になった90年代後半には、下の世代の若年社員が少なくなり、上は団塊世代までとてもたくさんいらっしゃるという状況に。上と下に挟まれた厳しい30代を過ごした記憶が鮮明に焼き付いています。
それでも今の30代と比べれば、私の世代はまだましだったのかもしれません。2014年現在は、これまで以上に50代以上が会社に、社会に、家庭にと、至るところに多く存在する高齢化社会になっています。その数は、今後ますます増えていくのです。参考までに、2030年の30代1人に対する50歳以上の割合は5.09人、2040年は同5.35人、2060年には、なんと同6.44人まで増えます。
ともあれ9年後の2023年、周りの2人のうち1人が50歳以上という日本社会は、一体どんな社会になっているのでしょう。
私の世代はそろそろ50歳になります。同じく今の30代も、やがては50歳以上になります。「50歳以上の人口が多い」ことの大変さを知った世代が、上の世代になると……「理解あるオジサマ(オバサマ)」が今まで以上に増えていくと考えられます。
自分らが若い時に苦労したので「上の人が、若い人に甘くなる社会」に? それとも多数派となった50歳以上が「若い人を圧倒する社会」に?
育ってきた時代環境が大きく違うことや、ネットサービス、ソーシャルサービスなどのおかげで、性別や年代を超えてつながることに抵抗が薄い人がどの世代にもある程度いることを考えると、世代間の軋轢(あつれき)が思いのほか少なく、それぞれの世代が独立独歩という社会へ向かっていくのかもしれません。
著者プロフィール:吉川昌孝
博報堂生活総合研究所主席研究員。1965年愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒。著書に『亞州未来図2010−4つのシナリオ−』(阪急コミュニケーションズ・共著)、『〜あふれる情報からアイデアを生み出す〜「ものさし」のつくり方』(日本実業出版社)などがある
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