「年相応」という言葉が、日本の企業を硬直化させているのかもしれない:サカタカツミ「新しい会社のオキテ」(2/2 ページ)
野村証券が来年度から新設する、新たな個人向け営業専門職が話題です。「最長70歳まで雇用、年を取らないとできない仕事の評価を加味する」というこの制度のように、企業は新しい「年相応」の仕組みを考えなくてはならないところに来ているのではないでしょうか。
「年相応」という言葉が足かせになって、混乱が起きる?
かつて、多くの日本企業は三角形のピラミッド型の年齢構造になっていました。若年層が多く、経験を積みながらできることを増やし、仕事の難易度を上げて、一定の年齢に到達したら管理職のポストを得ていくというキャリアパスが常識だ、といわれていました。まあ、先ほどの人口ピラミッドを見れば、それが嘘とまでは言わないまでも、もう何年も前から“当たり前”ではなかったのかもしれないと(このあたりの話は議論の余地がたくさんあるのですがここでは触れません)気付かされるはずです。
しかし、もはや待ったなしです。かつての「年相応」という考えで仕事を振り分けていては、これからは当然働き手が足りなくなってしまいます。けれども、一定の年齢も経験もある人たちに、かつて若手の仕事だといわれていた領域のことを任せるには、少し抵抗がある。
何より、企業は長らく「年齢」をベースにして評価の仕組みを作ってきました。ここでも「年相応」という言葉に待遇がひも付き、硬直化させてしまう可能性がゼロではありません。この人は年齢が高いから、待遇も年相応にしなければならない、けれども、仕事は待遇ほどのものは用意できない、だから雇わない――こういう事態は、もうすでに「よくある話」になっています。
年相応という足かせを外すのか、新しい年相応という価値を作るのか
先日、あるニュースが報じられました。野村ホールディングス傘下の野村証券が、新たな個人向け営業専門職を、来年度から設けるというものです(参照リンク)。人事評価の仕組みも従来のものとは違うものを導入し、しかも、その仕事は年齢なり経験が重視されるはずなので、現行は60歳の定年も、本人が希望すれば最長70歳まで延長されるという仕組みです。
この仕組みが実施されれば、おそらく賛否両論出るでしょう。しかし、見方によっては「新しい年相応な働き方」を企業が提示しているととらえることもできます。すべての仕事を同じ尺度で評価するのではなく、歳をとらないとできないことを評価軸として加えて、新しい働き方を用意する。
「歳なんて関係ない、仕事ができるかできないかだ」という実力主義を推し進める企業はこれからも増えるでしょう。「適材適所」という言葉をそれこそ言葉通りに組織に適用するところも多くなるはず。しかし、今までの慣性からなかなか抜け出せない企業は、どっちつかずになりかねない。ただ、いずれにせよ、企業は今までとは違った「年相応」を、可及的速やかに考えなければならない時代が来た、ということは間違いないようです。
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