ドコモ、ソフトバンク、KDDI――三者三様の株主総会を振り返る:石野純也のMobile Eye(6月8日~19日)(3/3 ページ)
3キャリアの株主総会では、各社の業績や、来期以降に向けた取り組みがあらためて発表された。3社の株主総会で各社が示した方向性や、ユーザーにも関心の高そうなトピックをまとめた。
堅実な“ザ・株主総会”といえるKDDI、15年度からはマルチデバイス、マルチユースを深化
過去最高益を更新し、契約者数、ARPUも順調に伸ばしているKDDIは、2015年もその方針を継続していく。代表取締役社長 田中孝司氏によると、「今は2013年度から始めた中期の成長戦略の最終年度になっている」といい、2015年度も営業利益の2桁成長をもくろむ。また、「新たな成長ステージに向けた取り組み」として、マルチデバイス、マルチユースを促進。タブレットの強化や、auショップでイーコマースの利用を促す「au WALLET Market」を紹介した。
株主からの質問に対し、“その先”として田中氏が語ったのが、3M戦略の深化だ。3M戦略とは、田中氏が社長就任のとき以来掲げ続けてきた戦略で、「マルチデバイス」「マルチネットワーク」「マルチユース」の頭文字を取ったもの。具体的には、さまざまなネットワークにつながる端末の複数台の利用を推進しつつ、利用方法も多様化していくような世界観を指す。田中氏によると、LTEにとどまらず、WiMAX 2+やWi-Fiの環境も整備してきたことで、マルチネットワークについてはある程度の普及が実現した。一方で、「マルチデバイスやマルチユースは、まだまだ今後伸びていく」という。
「例えば端末も、過去はスマートフォンのシフトが業績をドライブしていたが、スマートフォンだけかというと、足元ではタブレットが急激に伸びている。ルーターもけっこう伸びてきた。こうしたことで、マルチデバイスはまだまだ伸ばしていける。マルチユースは金融事業、物販事業を基本に、今のauのお客様をベース、新たな事業をご提案すること。これでARPUのアップを図っていきたい。詳細については、来年度(2016年度)の今ごろ発表させていただく」
株主からは出た質問は比較的地に足の着いたものだったが、ほかにも、ネットワークの強化方針やSIMロック解除の影響、au WALLETの収益などが尋ねられた。ネットワークについては、取締役執行役員常務 内田義昭氏が回答。「LTEとWiMAX 2+を十分に活用して、品質を上げていきたい」としながら、具体像も明かした。内田氏によると、「新たな電波として、700MHz帯も今年度(2015年度)から基地局を立ち上げつつある」という。これに加えて、3.5GHz帯も「来年度以降増えていく」とのこと。
SIMロック解除に関しては、田中氏が180日間ロック解除できない期間があることを説明し、「まだまだ影響が出てくるのに時間がかかる」と語った。一方で、SIMロック解除が可能になれば、端末の割賦を支払い終わったあと、auからau以外のネットワークを使うMVNOへ転出しやすくなる。これについて田中氏は「我々としては、ネットワークにおいても差別化ができている。サポートによって、MNOの方がいいというお客様のご理解が得られるよう、がんばっていきたい」と意気込みを語った。
ただ、「MVNOに流れる可能性はなきにしもあらず」(田中氏)だ。ここに対しては、「子会社のKDDIバリューイネイブラーも立ち上げた。影響が出るのには少し時間がかかるが、ご心配のないように準備をしていきたい」(同)とした。MNOとしての魅力を高めつつ、MVNOでもau回線を選んでもらえるように立ち上げたのがKDDIバリューイネイブラーだというわけだ。
au WALLETは「足元は1200万(加入)で、急激に伸びている」(田中氏)としながらも、代表取締役執行役員副社長の両角寛文氏は「1000万枚は達成しているが、まだ赤字というのが実績」だと語る。プラスチックカードの発行コストや、郵送代などの先行投資が173億円あり、これをまだ回収できていないという。ただし、流通総額は着実に伸びており、明るい兆しも見える。両角氏も「決済手数料を伸ばし、黒字化を図りたい」と目標を語った。
3社3様の株主総会だったが、株主の質問にもそれぞれの会社のカラーが色濃く反映されていた。各社が、株主から寄せられた要望や期待の声にどう応えていくのか。今後の動向にも引き続き注目したい。
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