Sprintの“次世代ネットワーク”に自信を見せる孫氏――「約2年で完成する」
ソフトバンクグループの2015年度第1四半期の決算会見で、孫社長は米Sprintの次世代ネットワークについて熱弁を振るった。日本で培ったノウハウを注入し、低コストで強力なネットワークを構築できるという。
ソフトバンクグループが8月6日、2015年度第1四半期の決算説明会を開催。第1四半期の売上高は前期比10%増の2兆1391億円、償却前の営業利益(EBITDA)は前期比16%増の6591億円、営業利益は前期比8%増の3436億円、純利益は前期比175%増の2134億円となった。
会見ではパーソナルロボットの「Pepper」も登壇。代表取締役社長の孫正義氏と掛け合いをしつつ、決算の詳細をPepperに語らせ、「世界初(?)のロボットによる決済会見」をアピールしていた。そのPepperは6月と7月に1000台ずつ一般向けに販売したところ、「両方とも1分間で売り切れた」(孫氏)というほど好調で、次回は8月29日に発売する予定。また月給5.5万円で、一般企業への派遣も10月1日から受け付ける。
今回の決算会見では、ソフトバンクグループ(旧ソフトバンク)が買収した米国の通信事業者、Sprintの話に多くの時間が割かれた。
Sprintはソフトバンクグループが買収してからも契約数の純減が続き苦戦を強いられていたが、14年8月にマルセロ・クラウレ(Marcelo Claure)氏がCEOとなったのを契機に純減から純増に転じ、ネットワークの品質も改善されつつある。さらに孫氏はT-MobileとSprintを合併して米国でもナンバー1になることをもくろんでいたが、米国当局の許認可が得られなかったために実現しなかった。
「その状況で意気消沈したというのが正直なところ」だったが、次に照準を定めたのがネットワークだ。日米の経営陣が徹底的に議論した結果、営業費用を大幅に削減し、少ない設備投資で米国のライバル企業を超えるネットワークの“設計図”ができあがったという。そこには日本でソフトバンクモバイルが培ってきたノウハウが注入されている。
Sprintのエンジニアからは当初、「そんな虫のいい話があるのか」「アメリカでは無理だ」と猛反対を受けたそうだが、「1つずつ全部反論して、解決策を準備した」と孫氏。Sprintのエンジニアが提案したものは、ネットワーク設計に5年がかかり、設備投資額も膨大なものだった。それに対して、孫氏の代替案は約2年で次世代ネットワークが完成し、コストも大幅に圧縮できるという。最終的には納得してもらい、ソフトバンクグループとSprintのエンジニアが一緒になって、次世代ネットワークの詳細設計とプランを実行することになった。
「日本で我々が行ったことは、日本の中だけで通じるものではなくて、普遍的なものだと再認識した。いくら言葉巧みなマーケティングを行ったとしても、ネットワークが悪いと、一時的なものに過ぎない。iPhoneやGalaxyなど、販売している端末は各社同じだから、やはり本質的には、ネットワークを最強のものにしないといけない」と孫氏は意気込む。
具体的にはSprintが保有する2.5GHz帯、120MHz幅のネットワークを強化していく。「2.5GHz帯は、ほかの帯域よりも電波が長距離にわたって飛ばないので、(基地局の)数をたくさん作る(必要がある)。Sprintの持っている2.5GHz帯は、幅が120MHz分あるので、数を打てば当たる。クルマの車線で言うと、我々は他社の10倍くらいの車線を持っている」と孫氏は自信を見せる。
「Yahoo!BBを始めてから、毎年1000億の赤字を4年間出してボロボロになった。好きなゴルフもいっさいしない、土日もなし、正月も盆もなしで一生懸命に取り組んで、Yahoo!BBを黒字に持っていく。その少し前に、方法が見えて『霧が晴れた』ということを申し上げた。Sprintに対しても同じような感覚を持っている。買って良かったと正直に思っている」と語る孫氏。Sprintの不安をぬぐい去るには「2年くらいかかる」とのことで、孫氏の計画が実行されれば、2016~2017年にかけて次世代ネットワークの実力が披露されることになる。
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