「SIMロック解除は総務省の方針に従う」「ドコモ光は脱法行為でないか監視すべき」――ソフトバンク孫社長:ソフトバンクは「ガチョウ」
「ソフトバンクはガチョウである」と孫氏は決算説明会で宣言。イソップの「金の卵」を例に挙げ、金の卵を産み出すガチョウでありたい――という意味だ。会見ではSIMロック解除の義務化やドコモ光パックについての見解も示した。
ソフトバンクが11月4日、2015年3月期 第2四半期の決算説明会を開催した。14年度上期の売上高は、前年同期比で58%増の4兆1044億円となり、13年度上期と並び、2期連続で過去最高を更新した。営業利益は5967億円で、13年度上期のガンホーとウィルコムの子会社化に伴う一時益などを除くと、22%増となった(含むと19%減)。純利益は前年同期比37%増の5607億円、償却前の連結営業利益(EBITDA)は1兆1226億円で、前年同期比で34%となった。
国内通信事業の設備投資のピークは過ぎた
国内の通信事業については、14年度上期の営業利益は4016億円となり、2005年のボーダフォンジャパン買収時と比較すると9倍にまで伸びた。ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は、スマートフォンの接続率が音声通話とパケット通信ともにドコモとKDDIを抜いて1位を継続していることや、第三者機関の調査でiPhone 6の通信速度が1位になったこと、8〜9月に発表された顧客満足度調査でソフトバンクが1位になったことをアピールした。
孫氏は、こうした好結果が続いているのは、「この2〜3年、プラチナバンドやLTEの設備投資を集中的に行ってきたからだ」とし、現在は設備投資のピークを超えたと説明する。実際、14年度の設備投資にかかるコストは12〜13年度を下回る予定。「EBITDAから設備投資を差し引いた額が、事業にもたらされる実質的なフリーキャッシュフロー(FCF)。これから年間数千億円のFCFを、コンスタントに稼いでいける。収穫期が来たと認識している」と手応えを話した。
Sprintはマルセロ体制で反転攻勢へ
米国のSprint事業は、8月1日にマルセロ・クラウレ(Marcelo Claure)氏をCEOに迎えて新体制を築いてから、MNPが純増するなど、改善傾向にある。「Sprintを買収してから、顧客の純減が止まらないという問題があったが、マルセロの体制になってから、一気に改善された。ここから業績を反転させていく」と孫氏は意気込む。
Sprint事業では、効率よく利益を上げるために優良顧客(プライムカスタマー)の獲得に務める。「これまでは支払い実績の悪いお客さんを無理して取っていたが、新しい経営陣になって、優良顧客の比率を一気に高めることができた。支払いの悪いお客さんには審査を厳しくしながら、純増に向かって行っている」と孫氏は手応えを話す。
「目先の利益を追い求めるのではなく、中長期で優良顧客を増やす」との考えから、2014年度のソフトバンク全体の営業利益は、当初の1兆円から1000億円ほど少なめに見積もり、9000億円に修正した。
ソフトバンクがインドに進出する狙い
ソフトバンクはさらに企業価値を高めるべく、筆頭株主となったアリババのある中国に加え、インドにも進出する。孫氏がインドに価値を見出した理由には、25歳未満の人口が米国、中国、日本より多いこと、英語話者数が米国に次いで多いこと、ソフトウェア開発者数が世界最多であることを挙げた。
ソフトバンクはインドでEコマースサイトを運営するスナップディール(snapdeal)、トコペディア(tokopedia)、タクシー配車サービスプラットフォームを提供するオラ(OLA)へ出資することを発表している。通信事業が注目されがちなソフトバンクだが、孫氏は「ソフトバンクの本業は、情報革命で人々を幸せにすること」とし、「時代の推移とともに投資を行い、世界最大のインターネットグループを目指したい」と意気込みを語った。
孫氏はイソップ寓話(ぐうわ)の「金の卵を産むガチョウ」を例に出し、「ソフトバンク=ガチョウである」と話す。「金の卵は重要な価値があるけど、ガチョウとどちらが大事か?」と問いかけ、「私は金の卵を産むガチョウに価値があると思う」と孫氏。「ソフトバンクは、金の卵を産むガチョウになりたい。ソフトバンクが持っている資産の1つ1つが金の卵。ソフトバンクはガチョウとして、新たな金の卵をお腹に仕込んでいる最中だ」と、しきりに“ガチョウ”を強調していた。
ソフトバンクは今後も海外展開に注力していく構えで、孫氏は国内事業だけでは明るい未来は難しいとみる。「10〜30年後というスパンで見たときに、国内事業が簡単に2〜3倍伸びていくとは思わない。人口が減っていく中で、GDPが2〜3倍伸びるのは非常に困難だと思っている。国内事業だけに頼っている会社に明るい未来はないが、日本から世界のお客さんに売る、投資を行う会社は、十分に成長余力があると思う。例えばユニクロさんは、海外事業をさらに伸ばそうとしている」
SIMロック解除とドコモ光パックへの見解
2015年5月以降に義務づけられたSIMロック解除については、「ドコモさんやKDDIさんや新規参入(MVNO)も含めて、その議論を総務省と行っているところ。最終的に決まった方針に従う」としたが、SIMロック解除の影響は「少ない」と孫氏はみる。「すでにiPhoneはSIMロックの掛かっていないものが売っているが、大して売れていない。日本でSIMロックフリーのiPhoneをアップルストアに買いに行っている人は少ない」
NTTドコモが2015年2月から、NTT東西の光回線とセット販売する「ドコモ光パック」を発表したが、ソフトバンクもこれに追随し、NTT東西の光回線を使った独自サービスを提供する予定。NTT東西とドコモの動きに対し、孫氏は「光ファイバーの卸売りがなされることについては、前向きに対応したいと考えている」としつつも、これまで通り、警戒する姿勢は変わらない。「NTT東西さんは、光ファイバーで7割以上のシェアを持っていて、もともと国が作った会社で国が筆頭株主。ドコモは日本の携帯事業の中でも圧倒的最大のお客さんを持っている。そういう会社が優位的立場を利用して、アンフェアな形で、過度に活用して競争を妨げるのは良くない。これは日本の法律にも定められている。脱法行為が行われていないかについては、注意深く監視していくべきだと思う」
11月にソフトバンク初のXperiaである「Xperia Z3」を発売することについては、「2年ぐらい前から(ソニーモバイルと)話し合いを続けてきて、1年ぐらい前に合意した。だいたい2年くらい準備がかかりますから」と淡々と述べるにとどまった。
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