「NTTはある意味ずるい」けど、ドコモに劣る料金サービスは提供できない――孫社長:営業利益は1兆円を突破
ソフトバンクの孫社長が、決算会見でドコモの「カケホーダイ&パケあえる」について言及。ドコモに劣るサービスは提供できないが、ソフトバンクの角度から再検討している旨を説明した。
ソフトバンクが5月7日、2014年3月期の決算説明会を開催した。売上高は前年同期比倍増の6.7兆円、営業利益は前年同期比36%増の1.09兆円、純利益は前年同期比42%増の5270億円となった。営業利益には、ガンホーとウィルコムの子会社化に伴う一時益の2539億円が含まれる。
ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は「松下電器、ソニー、キヤノンなどの立派な会社は子供のころのイメージでは雲の上の存在だったが、彼らは営業利益で1兆円を突破したことは実は一度もない。今まで1兆円を突破したことがある企業は、トヨタとNTTだけ。我々は日本の経済市場では最短で1兆円を突破した」と胸を張る。
前回の決算会見と同様、Sprint、ウィルコム、イー・モバイルの業績を含めたものではあるが、孫氏は売上高、営業利益、純利益でNTTドコモを抜いたことをあらためてアピールした。「売上も営業利益でも純利益でも(ドコモを)抜いた。ユーザー数でもネットワークのつながり具合でも抜いた。はっきりともう一度、念のため申し上げたい。いずれはトヨタさんを抜いて圧倒的1位になる」と意気込んだ。
携帯電話サービスの契約数は、ソフトバンク、イー・モバイル、ウィルコム、Sprintの累計で1億を超え、モバイル事業の営業利益は18%増益となる6090億円を記録した。
ネットワークについては、スマートフォンのパケット接続率が、2014年5月4日時点もドコモとKDDIを抑えて1位になったことを孫氏はアピールした。900MHz帯のプラチナバンド基地局は3月時点で約3万2000局、2.5GHz/1.7GHz/2.1GHz帯のLTE基地局は3月時点で約9万4000局に達し、順調に増設していることを紹介した。
KDDIとドコモは、複数の周波数帯を同時に利用して通信の高速化を図る「キャリアアグリゲーション」を発表しており、KDDIは2014年夏に下り最大150Mbps、ドコモは2014年度中に下り最大225Mbpsの通信サービスを提供する予定だ。ソフトバンクモバイルは通信の高速化についてどう考えているのか。孫氏は「将来のサービスにはほとんどコメントしない」と話しつつも、「あと数カ月で900MHzで(LTEの)電波を吹けるので、900MHz帯と2.1GHz帯でキャリアアグリゲーションを行える」と説明する。「準備が整い次第、発表と同時にサービスインしたい。電波さえもらえれば負ける理由がない」と強気の姿勢を見せた。
今春の提供を予定していた900MHz帯でのLTEサービスは、今夏にずれ込む見込みだ。900MHz帯の15MHz幅(×2)のうち、10MHz幅(×2)はMCA無線などに使われており、別の周波数帯に移行するのに時間を要しているためだ。「(ソフトバンクに割り当てられた900MHz帯から)立ち退いてもらうのに、代わりの機器やお金を用意して説得している。何1000社という規模で行わないといけないので、ほぼ不可能だろうということで怒り狂っていたが、やっと説得がほぼ終わった。実際にサービスインできるのは今年の夏になるといった方がいい」(孫氏)
ドコモが月額2700円で通話の完全定額を実現した「カケホーダイ&パケあえる」を発表したことで、その以前にソフトバンクモバイルが発表していた条件付きの通話定額サービス「スマ定額」は、サービスの再検討と延期を余儀なくされた(→ソフトバンク、「スマ放題」の提供を延期)。孫氏は「NTTはある意味ちょっとずるい」と話す。固定はNTT、モバイルはドコモのシェアが大きいため、通話し放題にすると、NTTやドコモへの発信(接続料)が増え、必然的にNTTグループ内の収益が増すから――というのが孫氏の考えだ。
「我々の場合は無制限に音声定額を許すと、コストが外に流出するので、(1カ月の通話回数は)1000回や500回までといったちまちました努力をしている。ドコモさんがああいう料金を発表した以上、それに劣るようなサービスにするわけにはいかない。ただ、我々なりの角度でどうするかは、収益と競走のバランスを見ながら決めたい」(孫氏)
Sprint事業については連結営業利益が4.2億ドルの黒字に転じ、「ソフトバンク流のマネジメントで利益を改善させたい」と孫氏は意気込んでいた。
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