「マルチキャリア」で攻勢をかけるも、VoLTE対応SIMでは不可解なルールも――mineo
MVNOサービス「mineo」で“マルチキャリア対応”を強化するケイ・オプティコム。9月からはドコモの通信サービスを開始し、11月にはドコモとau回線に対応する「arrows M02」も投入する。一方でau VoLTE対応SIMでは不可解なルールも見られる。
ケイ・オプティコムが展開している「mineo」で、ここ最近大きく打ち出しているキーワードは「マルチキャリア」だ。
9月1日からドコモ回線を利用できるプランの提供を開始し、ユーザーはauとドコモの回線を選べるようになった。月額基本料金が最大2年間無料になるという大盤振る舞いのキャンペーンも功を奏し、ドコモプランの契約数は10月4日時点で約2万件に達し、サービス開始初日には約5000件の申し込みがあったという。
ケイ・オプティコム モバイル事業戦略グループ グループマネージャーの津田和佳氏は6日の発表会で、「競合他社の多いドコモのMVNO市場では、新規参入となったが、まずまずのスタートが切れた」と手応えを話す。ドコモとauプランを合わせた総契約数は、10月4日時点で12万に達した。
また、9月1日から導入している「複数回線割」(数回線の契約で、各回線の月額基本料金から50円を割り引く)により、複数回線を契約するユーザーの割合が、約1カ月で13%から29%に増加したという。うち12%は既存ユーザーの追加購入であり、「サービスや通信品質について、一定の評価を得られた」と津田氏は胸を張る。
同じく9月1日から導入した、余ったデータ量を贈れる「パケットギフト」では、約1カ月間で1.4Tバイトのデータが流通したという。「今後ますますギフトが活性化する仕組みも検討している」(津田氏)とのことだ。
arrows M02は主力製品として展開する
そしてケイ・オプティコムが「新たな一手」として投入するのが、auとドコモ回線のマルチキャリアに対応したSIMロックフリースマートフォン「arrows M02」だ。au VoLTEにも対応し、「mineoにぴったりの端末。主力商品として販売していきたい」と津田氏は力を込める。
富士通 公共営業本部 エネルギー統括営業部 統括部長の甫立(ほたて)和也氏は「従来の一般的なMVNO端末の、安いけど問題があるんじゃなかろうかというイメージを払しょくしたい。これまで培った、富士通のARROWSブランドの名にふさわしい端末を、お求めやすい価格でご提供する。ご期待に十分お応えできると確信している」と自信を見せる。
arrows M02はmineo専用端末ではないが(NifMoも取り扱うことを発表している)、mineo限定カラーとしてピンクを提供する。これはケイ・オプティコムが、「流行に敏感な女性の方、お得なサービスに感度の高い主婦の方、女性のお子様への提供も見据えている」(甫立氏)ことから決まった。
au VoLTE対応SIMの利用にはSIMロック解除が必要
arrows M02の発売に合わせて、mineoで利用できる「au VoLTE対応SIM」も11月19日から提供する。これまで、au VoLTEに対応したスマートフォンでは、SIMの仕様が異なるため、mineoを利用できなかったが、au VoLTE対応SIMであれば、mineoを利用可能になる。
ただしmineoのau VoLTE対応SIMを利用するには、SIMロックの解除が必要になる。対応機種は(SIMロック解除が可能な)2015年夏モデル以降で、利用できるのは、最短でも4月に発売された「Galaxy S6 edge SCV31」の購入から180日後(10月下旬~)となる。au VoLTEに対応していてSIMロックの解除ができない「URBANO V01」「isai VL LGV31」「BASIO」「AQUOS SERIE mini SHV31」「INFOBAR A03」では、mineoは依然として利用できない。
mineoのau VoLTE対応SIMを利用するのにSIMロック解除が必要な理由について津田氏は「au VoLTEのSIMでは、『auのSIM』と『MVNOのSIM』に分かれるため」と回答。SIMの種類が異なるため、SIMロックを解除しないと通信できないという。これはKDDIのポリシーに基づくため、ケイ・オプティコムが解決できる問題ではないが、ユーザーにとっては不便極まりない仕様だ。「SIMロック解除できない(au VoLTEの)端末では、我々のVoLTE SIMは使えないので、混乱がないようしっかりとアナウンスをしたい」(津田氏)
SIMロック解除は購入から180日経過後という期間の制約に加え、店頭だと解除料に3000円(税別)の負担が強いられる(ネットでの解除は無料だが)。ドコモSIMやau VoLTE対応SIMの提供で、mineoの対応機種は格段に増えたが、「au VoLTEの利用にSIMロック解除が必要」というルールは、大きな足かせになりそうだ。
iOS端末の対応状況も改善
iPhone/iPadの対応状況も改善されつつある。iPhone 6/6 PlusとiPhone 6s/6s Plusは、mineoのau SIMでも音声通話とデータ通信は利用でき、iPad Air/iPad mini 2、iPad Air 2/iPad mini 3では、mineoのau SIMでもデータ通信が利用できる。ただしiPhoneとiPadいずれも、テザリングは利用できない。またiPad mini 4は、au VoLTE対応SIMで動作する見込みだ。
一方、iPhone 5s/5cについては、iOS 8以降ではいまだにデータ通信が利用できず、ケイ・オプティコム側でも原因を解明できない状況が続いている。
関連記事
au/ドコモ回線に対応したmineoスマホ「arrows M02」発表――au VoLTE対応SIMも提供【更新】
ケイ・オプティコムが、auとドコモネットワークを利用できるマルチキャリア対応のスマートフォン「arrows M02」を発表。モバイルWi-Fiルーター2機種も投入する。ドコモ+auで相乗効果を狙う「mineo」、2社とのL2接続で広がりあるサービス展開を
auのLTE網を使った最初のMVNO「mineo」。9月からは新たにドコモ回線を使った格安SIMも提供を開始し、値下げも行った。ライバルが多いドコモ系MVNOのサービスを展開する狙いを聞いた。mineoのドコモプラン、事前予約は2.3万件 サービス初日に5000件の申し込み
2014年のサービス開始時を上回る勢いとのこと。夕方だけが苦手?――「格安SIM」2サービスの実効速度を比較(au回線8月編)
格安SIMを選ぶうえで料金と並んで重要な「通信速度」。本企画では主要な格安SIMサービスの通信速度を月に1回、横並びで比較する。今回はKDDI回線を使ったサービスで測定した8月の結果を紹介しよう。「ドコモプラン」を提供するmineoの勝算/UQとKVEが合併する理由――KDDI系MVNOの最新動向
mineoの「ドコモプラン」が9月1日にスタートし、大盤振る舞いのキャンペーンも実施する。またKVEとUQが合併し、UQ mobileもUQコミュニケーションズが扱うことになった。今回はこれらKDDI系MVNOの動きを追った。マルチキャリア化で競争力アップのmineo “iPhone問題”の現状は?
9月からau網に加えてドコモ網でのMVNOを開始するmineo。マルチキャリア化のメリットとはなにか? また依然としてKDDI系MVNOで続いているiPhone問題の現状について説明した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.