イオン経済圏でもっとユーザーと密接に――イオンが自らMVNOになった理由:MVNOに聞く(2/2 ページ)
これまで他社の格安SIMサービスを販売していたイオンが、自らMVNOになり、新たなサービスを提供している。500MBから50GBまで、きめ細やかな容量を設定し、サポートも拡充。イオンリテールの橋本昌一氏に、新サービスの狙いを聞いた。
SIMカードを買うために初めてイオンを訪れる人も
―― イオンといえば、大手キャリアもショップを出していると思います。また、これまではMVNOの販売にも力を入れていました。こうしたところとのすみ分けは、どうされていくのでしょうか。
橋本氏 イオンという名前まで冠しているので、こちらに力を入れていくのは当然ですが、結果として選択するのはお客さまです。選択肢としてメガキャリアが4つあり、その中からお客さまが自分に選択される。店頭で比べて、選んでいただけばいいと思います。
以前からあったMVNOも、全部撤廃したわけではありません。私どもの価格帯とは違ったプランもありますからね。売り場面積は縮小しましたが、まだ展開していて、BIGLOBEさんやIIJさんは、申し込みもできます。こちらについても、選ばれるのはあくまでお客さまで、私どものものだけに限定するということはしていません。
―― そこは、他のMVNOにもプランの差で競争してほしいということですね。イオンモバイルを開始するにあたって、サポート面も強化はしたのでしょうか。
橋本氏 1つは、お客さまの声を受けるコールセンターを立ち上げました。ここでは、購入前のご相談ができます。従来はトラブルシューティングのみで有償でしたが、そもそもMVNOとは何かというお客さまもいます。そういった初歩的なところから、お答えするようにしています。
最初のうちはかなり応答率が悪かったのですが、今は増強、増強で増やしているところです。その効果かどうかはまだ分かりませんが、売り場に来られたら、あまり接客を受けずに、すぐに契約に入る方が思っていたより多い。既に何かしらで、イオンモバイルをご存じの方が非常にたくさんいる印象があります。
売り場に行くと、逆に、このショッピングセンターに初めて来たという方もいるほどです。SIMカードを買うことが、来店動機になっているということですね。その意味では、イオンの商圏を広げることにも貢献できているのではないでしょうか。
音声通話の定額については、これから検討
―― 次に、ちょっと細かいところをうかがっていきます。まず、プランは途中で変更可能なのでしょうか。
橋本氏 月単位で変更は可能です。ご連絡いただければ、翌月から適用になります。電話でも結構ですし、売り場に来ていただいてもいい。データプランから音声プランに変えるような場合は手数料がかかりますが、それぞれのコース内で変更する場合は手数料もかかりません。
―― シェアプランの調子はいかがでしょうか。
橋本氏 想定より多かったですね。ご家族で契約されていく方がいます。1人で2枚持ち、3枚持ちもいるのかと思いましたが、契約の名義が違うので、それぞれの方が使っているのだと思います。
―― 容量を見ていくと、細かくは区切れていますが、例えば3GBプランがありません。
橋本氏 容量をどのように区切るのかは、内部でも散々議論してきました。もちろん、もっと小まめにやることも可能でしたが、間の料金を作っても100円刻みになって、お客さまも迷われてしまう。結果として接客時間も長くなってしまうので、練りに練ってこのプライスラインにしようと決めました。
―― 初心者層が多いとなると、音声通話が30秒20円なのは割高に見えないでしょうか。他社のように、定額プランを用意するようなことはお考えですか。
橋本氏 まだ始めてから、ちょうど1カ月です(3月25日のインタビュー時点で)。お客さまの声もかなり分析が進んできていますが、そういう声が多いようなら、検討していきたいと思います。
取材を終えて:他のMVNOには脅威になる
格安スマホの火付け役となったイオンが、自社でMVNOを始めたことのインパクトは大きい。戦略はいわば王道。既にある販路を生かし、きめ細やかで安価な料金プランを打ち出している。結果として、想定以上にユーザーが集まり、オペレーションがパンクしてしまったのは残念だったが、裏を返せば、それだけ期待を集めていたということだ。
全国くまなく張り巡らされた販売網を持っているだけに、顧客との接点も強い。強い販路が築けていない他のMVNOにとっては、大きな脅威となりそうだ。
これは、端末のセット販売にもプラスに働く。インタビューでは詳細な数字までは明かされなかったが、大半のユーザーが端末とSIMカードをセットで購入していると考えてよさそうだ。ただ、イオンモバイルのラインアップを見ると、少々品ぞろえが古くなってきている印象も受けた。今後は、タイムリーにSIMフリー端末を拡充していくことも、必要になるだろう。
ネットワークは品質を重視しているというが、ユーザーが殺到すれば、当然それだけ帯域が使われ、ピーク時の通信速度や応答性は悪化してくる。それを踏まえた上で、どこまで快適さを維持できるのかは、MVNOの腕の見せどころだ。特にイオンモバイルは、規模が大きなMVNOになりそうなだけに、今後もきちんと品質を保てるのかは、注目しておきたいポイントだ。
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