業績好調の3キャリア――MVNOやY!mobileの台頭、公取委の指導で市場変化の可能性も:石野純也のMobile Eye(7月25日~8月5日)(2/3 ページ)
ドコモ、KDDI、ソフトバンクグループ3社とも第1四半期の業績は好調だった。一方で、MVNOやY!mobileの台頭が少なからず影響を与えている。端末販売に関する公正取引委員会の指導もあり、市場環境が変化する恐れもある。
MVNOやY!mobileの台頭で競争環境が徐々に変化
順風満帆に見える3キャリアだが、一方で、MVNOやY!mobileをはじめとするサブブランドへの流出も徐々に大きくなっている。KDDIの田中氏は「MNOとしてID(顧客)の成長は、厳しくなってきている」と率直にその影響を認める。光回線のセット販売やガイドラインの影響で3キャリア間のMNPは沈静化している一方、契約者獲得競争の舞台が、MVNOやサブブランドに移りつつあるということだ。
「数そのものは申し上げられないが、全体的にかなり増えてきている」(吉澤氏)MVNOだが、ドコモやKDDIにとって、脅威になっているのがY!mobileだ。田中氏は「大きな流出先はY!mobile」と語っており、吉澤氏も「動きとして、ドコモから行っているのは確かにある」と認める。MVNOはそのほとんどがドコモのネットワークを借りている。そのため、仮に流出先がMVNOなら、ドコモの契約者数はプラスマイナスゼロで、ネットワーク使用料という形で間接的に収入を得ることもできる。一方で、ソフトバンクのサブブランドであるY!mobileへの流出は打撃になる。
このY!mobileに、ドコモは「パケットについては、シェアパック5などで料金的に対応、対抗できる。dマーケットのサービスをしっかりご利用いただける方を、ドコモのお客さまとして維持したい」(吉澤氏)という見方を示す。よりドコモを積極的に使うユーザーを自社に残しつつ、Y!mobileに対しては、ネットワークを借りるMVNOが戦うという構図に持っていきたいというわけだ。
一方で吉澤氏によると、「フィーチャーフォン(iモードケータイ)からY!mobileに行かれる方もいる」という。ここに対しては、Androidベースのフィーチャーフォンで対抗していく方針だ。同氏は「秋にLTE対応フィーチャーフォンを出すときに、それなりのプランを検討している」と述べており、端末だけでなく、料金での対抗策も準備しているようだ。フィーチャーフォンからスマートフォンに移るユーザーは、ARPUの上昇が見込める。吉澤氏の発言からは、Y!mobileに移るのであれば、多少料金を下げてでも自社にとどめておきたいという思惑も透けて見える。
より深刻なのがKDDIで、「3社間の流動はないが、MVNOやソフトバンクのY!mobileに対しては、流動が見られる」(田中氏)。ドコモ系のMVNOと、ソフトバンクのサブブランドであるY!mobileに、挟み撃ちにあっている格好だ。KDDIは「IDが自分たちから流出しないよう、チャーンレート(解約率)を下げる行動に出なければならない」(同)。傘下のUQ mobileを強化したのはそのためで、「他のキャンプにいるMVNOより、auの回線を使うMVNOがリクープすれば(損失を取り戻せば)、少なくとも回線収入はわれわれのものになる」(同)からだ。
2社にライバル視されているY!mobileは「非常に順調」(孫氏)だが、ソフトバンクと合算した主要回線の純増数は第1四半期で11万2000と微増にとどまっている。PHSや通信モジュールといった非主要回線まで含めると、37万7000の純減だ。ドコモやKDDIが純増を維持していることを考えると、かつての勢いが失われつつあるようにも見える。また、ソフトバンクとY!mobileは、ブランドこそ分かれているものの、あくまで同じ会社だ。見方を変えれば、単にユーザーがより安い料金プランを選択していることにもなる。実際、主要回線のARPUはじわじわと下がっており、第1四半期には4610円(総合ARPU)となった。好調な一方で、素直に喜べないのがソフトバンクの本音かもしれない。
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