業績好調の3キャリア――MVNOやY!mobileの台頭、公取委の指導で市場変化の可能性も:石野純也のMobile Eye(7月25日〜8月5日)(3/3 ページ)
ドコモ、KDDI、ソフトバンクグループ3社とも第1四半期の業績は好調だった。一方で、MVNOやY!mobileの台頭が少なからず影響を与えている。端末販売に関する公正取引委員会の指導もあり、市場環境が変化する恐れもある。
公取委の指導で市場がさらに変化する可能性も
3キャリアの決算発表と前後して、8月2日には、公正取引委員会が「携帯電話市場における競争政策上の課題」と題した報告書を発表した。報告書は総務省の示したガイドラインを下敷きにしているが、内容を見る限り、一歩踏み込んだものにもなっている。
中でも大きな影響が出そうなのが、端末の割引に関する要請だ。報告書には、月々サポート、毎月割、月月割を「価格競争の表れであり、それ自体は望ましい」とする一方で、「競争政策の観点からは前記販売方法は見直されることが望ましい」とも記載されている。割引そのものを止める必要はないが、金額は減らすべきというわけだ。キャリアの割引により、もともと高額だったハイエンド端末が「実質価格」で販売されると、本体価格だけで勝負しているSIMフリースマートフォンが不利になる。その競争環境が公平ではないというわけだ。
また、割賦によって支払い総額の決定権が事実上、キャリアにあることも問題視している。排除措置命令などの行政処分がくだったわけではないが、報告書には「独占禁止法に違反する疑いのある具体的な事実に接した場合には調査を行うとともに、違反する事実が認められたときには厳正に対処する」ともあり、厳しい姿勢で臨んでいく公取委の意思も見え隠れする。
報告書が発表されたのが8月3日だったため、キャリア3社はまだ具体的な対応を取れていない。同日説明会を開催したKDDIの田中氏も、「先ほどサイトに載ったばかりで、詳細を見ていないので何とも言えない」とコメントを控えた。ドコモの吉澤氏も、7月29日の段階で、「完全にダメということではなく、それをやることで本当に競争が阻害されるのか。(端末と通信料を)分離していないことが、競争阻害の要因になっているかどうかを明確にしていく必要がある」と述べるにとどまっている。
具体的な数値や、実際のケースが挙げられているわけではないため、影響の範囲がどこまで広がるのかは未知数だが、報告書の内容を文字通り受け止めると、今後は割引を減らしていかざるをえなくなるかもしれない。これは、ガイドラインの「実質0円禁止」以上に、キャリアの端末販売を冷え込ませる要因になりそうだ。結果として大手キャリア3社の流動性はさらに低くなり、より安価な端末がそろっているMVNOへのシフトが一段と進む可能性もある。第1四半期の決算が順調だったキャリア3社だが、市場環境が劇的に変わる可能性もあり、予断を許さない状況だ。
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