沖縄で一部キャリアが高額キャッシュバックを復活――総務省が静観する中、ライバルは「やせ我慢」で動向を注視:石川温のスマホ業界新聞
取材で訪れた沖縄で、ソフトバンクのキャッシュバックが「復活」している様を確認した。現在のところ、沖縄県で一番のシェアを持つ沖縄セルラー電話(au)は静観の構えのようだが……。
今週は取材で沖縄に行ってきた。
沖縄と言えばかつてはキャッシュバック王国で「東京から4人の家族旅行で、スマホを契約すれば一人10万円くらいのキャッシュバックがもらえるので、飛行機代、宿泊代が浮く」という話もあったほどだ。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2017年3月11日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
しかし、ここ最近の総務省からのお達しにより、沖縄でもキャッシュバックは絶滅したと思われていたがそうではないらしい。
「ソフトバンクが高額なキャッシュバックによる販売を行っており、他社からかなり顧客を奪っている」(沖縄の業界関係者)。
実際、那覇市内をクルマで走ると、キャッシュバックを謳う看板を掲げたソフトバンクショップを数多く見かける。キャッシュバックとは関係なく「0歳からの学割」といった看板もあり、ユーザーの利用状況にそぐわない売り方もされている感がある。
ただ、沖縄でのキャッシュバックはソフトバンクのみが行い、他社は静観の構えだ。沖縄セルラー電話の湯浅英雄社長は「(対抗したいが)やせ我慢している。総務省もキャッシュバックを規制するならきっちとする、許すなら全面的に許すなど、ルールを明確にして欲しい」とぼやく。
キャッシュバック規制に関しては、本来であれば密告制度などがあり、総務省に見つかればすぐに指導の対象になったりするが、なぜか沖縄では治外法権が働いているらしい。霞ヶ関から遠く離れており、メディアも騒がないためか、野放しの状態が続いているようだ。
一方、沖縄でも格安スマホが普及しつつある。
そんななかでも抜群の存在感といえるのが、ワイモバイルだ。沖縄のワイモバイルは、沖縄の会社であるウィルコム沖縄がサービスを提供している。沖縄は地元の企業が愛される傾向が強く、また地元企業の出資もあるため、ウィルコムがソフトバンクに買収されたからと行って、社名を変えるのが難しい。そのため、いまだにウィルコム沖縄とされている。
かつて、誰とでも定額をいち早く始めたウィルコム沖縄がベースとなっているため、CMも大量に投下されるなど、沖縄における格安スマホ市場でも圧倒的なポジションを獲得している。
KDDI系も、UQモバイル沖縄という会社があり、昨年11月に糸満市にUQスポットを出店している。しかし、ワイモバイルのショップ網も太刀打ちできていない状態だ。
沖縄では、全国と異なり、沖縄セルラー電話がシェアの半分以上を占めている。ソフトバンクがキャッシュバックを横行させ、格安スマホでも勢いを増す中、KDDI陣営がいつ「キャッシュバックが復活するか」が注目といえそうだ。
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