個人+法人で200万回線突破も、IIJmioは伸び悩み 「競争が厳しくなっている」
IIJの総回線数が200万を突破。法人はMVNEも含めて伸びているが、個人向け「IIJmio」の純増は鈍化している。それでも勝社長は「厳しい競争の中でIIJは生き残るつもり」と語る。
インターネットイニシアティブ(IIJ)がMVNOとして展開しているモバイル通信サービスが、2017年9月末時点で200万回線を超え、203.9万回線に達した。
このうち、個人向け「IIJmio」は97.2万回線、法人向け「IIJモバイル」は102.1万回線。法人回線のうち、68.3万回線はMVNE向けのもの。MVNEのパートナー企業は2017年9月末で128社に上る。11月7日の決算会見で勝栄二郎社長は、個人向けと法人向けを合わせて「22%のマーケットシェアを獲得できた」と話す。渡井昭久CFOも「トップクラスのシェアは堅調だ」と手応えを話す。
一方、2017年度第1四半期と比べると、法人向けサービスは9万増と堅調に伸びているが、IIJmioは6000しか伸びていない。IIJmioは2016年度第4四半期から2017年度第1四半期での純増も1.5万にとどまっていたが、さらに伸びが鈍化した。
【訂正:11月9日 13時55分 初出時に法人向け「IIJmioモバイル」としていましたが、正しくは「IIJモバイル」です。おわびして訂正いたします】
勝氏は「MVNOが数百社まで増えており、まさにISPを始めたときと同じ現象で、競争が厳しくなっている」と振り返る。それでも「まだ高いシェアを維持しており、安定した高品質のサービスを提供している。価格もあまり変えておらず、販路も多様化している」と自社の強みを強調し、「厳しい競争の中でIIJは生き残るつもり」と自信を見せた。
Y!mobileやUQ mobileなどキャリアのサブブランドが勢力を伸ばしている影響もあるだろうが、サブブランドについては「総務省の市場動向検討会で検討を進めると聞いているので、その動向を見守りたいと思っている」と述べるにとどめた。
7月に始まったauの新料金プランは、KDDIからの流出減に効果を発揮しているが、勝氏は「キャリアのプランは狙いが違うと思うし、IIJとしては影響を受けていないとは思っている」とコメントした。ただ、決算会見後に開催したMVNO事業説明会で、MVNO事業部長の矢吹重雄氏は「6月以降、少しキャリアが元気になってきて純増率が落ちてきている」と話しており、NTTドコモの「docomo with」やauの「ピタットプラン」「フラットプラン」などの施策も少なからず影響していると思われる。
楽天のFREETEL(MVNO事業)買収について勝氏は「直接の影響はない。いろいろな買収統合があるかもしれないが、自然の流れだと思う」とコメントした。
勝氏によると、IIJmio単体でも黒字ではあり、矢吹氏は「設備効率、コスト効率を上げることで収益性を上げている」という。
足元の競争が激しくなっている中で、IIJの強みは「高い設備稼働率」「安定した通信品質」「リアルタイム・データ分析の実施」だと矢吹氏は説明する。
設備稼働率については、トラフィックのピークが異なる個人、法人(人)、法人(モノ)向けの通信サービスを提供することで、24時間のどの時間帯でも通信が発生し、特定の時間帯で通信が多い、少ない状況にならないよう工夫している。
通信品質については、ドコモ回線では東日本と西日本にキャリアと接続する各種サーバや運用オペレーターを配置することで、障害が発生したときにスピーディーに復旧できるよう配慮した。au回線についても、2箇所目の設備配置を準備中とのこと。
データ分析については、社内でビッグデータを解析するプロジェクトを進めている。ユーザーや販売代理店からの声、アンケート、SNSでの意見などを収集、分析することで、サービス品質の向上に努めている。
IIJは200万回線突破を記念したプレゼントキャンペーンを11月から12月にかけて実施するほか、3年以上IIJmioを利用している長期ユーザー向けの「長得 IIJmioプレミアム特典」を12月に開始する。後者の特典は2つあり、対象モバイルオプション永年無料になるほか、1GB分の高速データ通信量(クーポン)を1年に3枚配布する。
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