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プログラミング
 [第23回]

J-フォンのJava仕様

 最初に述べておくが,J-フォンのアプリケーションサービスは,まだアマチュアには開放されていない(6月21日の記事参照)。J-フォンと契約した者だけが作成キットなどを入手でき,できたアプリを配布できる仕組みになっている。仕様も本来は公開されていないのだが,一部の仕様はインターネットで見ることができる(こちらを参照)。興味のある人は,ぜひ見てみてほしい。

 といっても見たところで作れないのだから,さほど意味はないが,面白い仕様であることは先のページからも分かる。J-フォンの仕様の特徴はゲーム製作を強く意識している点だろうと思う。

ゲームに寄った独特の仕様

 まず,MIDP標準(用語)のCanvasクラス(グラフィックを描画するためのクラス:javax.microedithion.lcdui.Canvas)を継承して拡張した,ACanvasクラスが用意されている。ACanvasクラスは,ゲームでよく使われるダブルフレームバッファを提供している。

 仮想画面からフレームバッファへの転送,フレームバッファから実画面への転送といったメソッドをサポートするほか,setPattern()メソッドを利用して2Dスプライトを使ったゲームキャラクターの描画ができる。ゲームプログラマなら定番といえそうなテクニックが利用できるだろう。

 そしてニュースでも話題になった3D機能を備えるのも大きな特徴だ(3月15日の記事参照)。

 まず描画面として,Canvas3Dというクラスが用意されている。Canvasクラスはポリゴンデータの描画を行うことができ,ACanvasクラスと同じくjavax.microedithion.lcdui.Canvasをスーパークラスにしている。

 先に挙げたライブラリリファレンスでは実動作が読めない部分があるが,Figureクラス(モデルデータや動きのデータを格納するクラス)で設定した3DオブジェクトをdrawFigure()メソッドで描画できるらしい。また,3次元アフィン変換(座標変換)を行うユーティリティメソッドなどを備える。そのほか,ベクトル演算用のユーティリティクラス(Vector2D,Vector3D)を備えるなど,面白く興味深い仕様になっている。

 もちろん,グラフィック機能だけでなく,ezplusにも見られたメディアプレーヤーやフレーズシーケンサー(複数のシーケンスデータをもとに音楽を奏でる機能,複数トラックの音楽データを容易に鳴らすことができそうだ)など,サウンド系もほかの仕様に比べ充実した印象だ(3月22日の記事参照)。

 一方,電話システムへのアクセスは公開されている資料だけでは不明点が多い。Javaからメールが出せるのか,ネットワーク通信はどうサポートされているのかなど詳しいことは公開されていないようである(ただ,ネットワーク通信はCLDC標準(用語)をサポートしている可能性はある)。

ぜひとも一般公開を

 先に述べたように,今のところJ-フォンはJava仕様を一般に公開していない。一部の仕様は,ここまで述べてきたように公開されているものの,この情報がすべての機能をカバーしているかどうかも不明だ。

 仕様の一部が公開されているので,J-フォンで動くと思われるソフトウェアを作るのは可能だろう。また,MIDPに準拠しているのでJ-フォン独自の仕様を利用しなければ,ezplusと同じソフトウェアが作動するものと思われる。とはいえ,作ったところでJ-フォンの携帯電話は今のところ,任意のWebサーバー(など)から勝手にアプリケーションをダウンロードさせない仕様になっているため公開は不可能だ。

 ただ,前節で述べたように面白い部分が多いだけに,ぜひともアマチュアに公開してほしいと思う。というより,公開しなければJ-フォンのJavaアプリケーションは一過性のお遊びで終わってしまうのではないか,という印象さえ持っている。

 ご存知のように,iモードはHTMLに近い仕様でアマチュアでも作成できる。そのため多くの人が思い思いにiモードコンテンツを作成,公開し,一気にiモードの用途が拡大した。iモードの仕様が一般に公開されることがなければ,ここまで広まることはなかったろう。

 iアプリは,まだ発展途上だが,制限付きでアマチュアに公開され,すでにフリーのiアプリが大量に出回りはじめている。iアプリは現段階でも“成功した”と言って過言ではないだろう。それも(やはり)アマチュアが作れるように公開したためだ。

 アプリケーションサービスが一過性の遊びに終わないためにも,アマチュアがプログラムを作り,ダウンロードできるようにするべきだ。Javaプログラマーとしても,遊べるプラットフォームが増えるのは大歓迎。J-フォンが一般公開してくれる日が来ることを大いに期待している。

[米田聡,ITmedia]

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連載バックナンバー

▼ 付録 iモードJava開発関連リンク集

▼ 第1回 プログラム作成への準備

▼ 第2回 iアプリ製作の流れ

▼ 第3回 ファーストiアプリケーション

▼ 第4回 i-JADEを使おう

▼ 第5回 preverifyの環境作り

▼ 第6回 iアプリでミニゲーム〜グラフィックの取り扱い

▼ 第7回 読者からの質問コーナー

▼ 第8回 キーボードに合わせてグラフィックを動かす

▼ 第9回 クラスって何だろう?

▼ 番外編 ドコモ,公式iアプリ作成ツールを公開

▼ 第10回 NTTドコモの開発ツールを使ってみよう

▼ 第11回 サウンドを使ってみる

▼ 第12回 読者からの質問コーナー〜2

▼ 第13回 スクラッチパッドへの書き込み

▼ 第14回 ネットからデータをダウンロードする

▼ 第15回 アニメーションGIFを使ってみる

▼ 番外編2 iアプリのセキュリティは破られていない

▼ 第16回 もぐら叩きを作る〜1

▼ 第17回 モグラクラスの動作検証

▼ 第18回 読者からの質問コーナー〜3

▼ 第19回 サウンドを鳴らす

▼ 第20回 iアプリの割り込み〜再開処理を実装する

▼ 第21回 サーバと通信を行ってみる

▼ 第22回 iアプリプログラマのためのezplus入門

▼ 第23回 J-フォンのJava仕様

▼ 第24回 iアプリの達人になるには?

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