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プログラミング
 [第22回]

iアプリプログラマのためのezplus入門

 この連載はiアプリを主題にしているが,ほかの携帯でもJavaサービスがスタートしていることをご存じだろう。隣の芝生は青く見える……のたとえではないが,不自由なiアプリに比べて,ほかのJava環境は良さそうに見えるかもしれない。そこで今回は番外編として,新しく始まったJavaサービスのひとつであるezplusをiアプリプログラマの視点で紹介しよう。

標準に準拠しているAPIセット

 ezplusはKDDIが始めたJavaアプリケーションサービスだ(5月17日の記事参照)。基本的にはiアプリ同様,インターネットを通じてJavaで作成されたアプリケーションをダウンロード,携帯端末上で実行できる。

 ezplusも,iアプリと同じように,KVM(K Virtual Machine)の上にCLDCが実装されている。iアプリとの違いは,GUIなどのライブラリとしてMIDP(Mobile Information Device Profile)を全面的に採用している点だ。

 ご存じのようにiアプリでは,GUIなどの実装に関して独自のプロファイルを採用している。一方,MIDPはJava標準として策定されたプロファイルの1つで,携帯電話やPDAなどで汎用的に設計できるようになっているのが特徴だ。

 MIDPを採用しているため,ユーザーインタフェースの設計はiアプリとは,やや異なるものになる(といってもよく似ている部分もあるが)。筆者の手元に実機がないため試せないものの,MIDPのドキュメントを参考にしながら,ユーザーインタフェースの例を少し挙げてみよう。

public class MyApp extends MIDlet
{
  public MyApp() {
   
  }
  public void startApp() {
    TextBox text;
    
    Display dsp=Display.getDisplay(this);
    TextBox txt = new TextBox(
       "My First App",
       "Hello", 256,0 );
    dsp.setCurrent(txt);
  }
}

 メインクラスのstartApp()が,iアプリのstart()メソッドに相当する最初に実行されるメソッドだ。Displayクラスは,MIDPのクラスライブラリに含まれる表示デバイスを管理するライブラリで,getDisplay()メソッドを使って表示デバイスを取得し,setCurrent()メソッドを使い表示するコンポーネント(上記ではTextBox)を表示させるという手順になる。

 出現するメソッドの名前などに一部,iアプリと共通性があるのが面白い。NTTドコモの独自プロファイルも,おそらくMIDPを部分的に参考にして設計されているのだろう。

 ユーザーインタフェースコンポーネントの扱いはJavaで一般的なBeans方式(コマンドメッセージを交換する方式)を使う。Javaでプログラムを作り慣れている人には違和感のない方式だ。

 GUIに関しては以上のとおりだが,そのほかにezplusではKDDI独自のプロファイルも実装されている。大きく分けると次の3点をサポートするのだ。

通信機能
メディアプレーヤー
携帯固有の機能のサポート

 通信機能に関してはメールの送受信をサポートするなどiアプリに比べると自由度が非常に高い。また,携帯内部のアドレス帳にも制限つき(電話番号にしかアクセスできない)ながらアクセスできるなど,iアプリにはない多くの特徴を持っている。

 仕様書(後述)を読む限り,先発のiアプリをよく研究しつつ,その欠点を補完する努力が随所に見られる仕様といっていい。iアプリに不満をもつ人は,ezplusアプリケーション作りにトライしてみると面白そうだ。

ドキュメントとツールの入手

 最後に,ezplus関連の開発ツールとドキュメントの入手法を紹介しておこう。ezplusのアプリケーションを作るには,まずJava2の開発環境が必要になる。Java2ならば何でも良く,通常は標準のJDK(http://wwww.javasoft.comからダウンロード可能)を使うのがいいだろう。

 その上で,「Java2 Platform Micro Edition」「Wireless Toolkit」が必要だ。ツールキットには,Windows上で動作するKVM,iアプリでもおなじみの簡易開発環境KToolbar,CLDCやMDIPのライブラリセットが含まれている。ツールキットは
http://developer.java.sun.com
/developer/earlyAccess/j2mewtoolkit/

からダウンロードできるが,事前にユーザー登録が必要なので注意してほしい。

 これらをWindowsにインストールした上で,さらにKDDI独自のプロファイルに実装されているライブラリなどが収録された作成ツールも必要になる。KDDIが配布しており,
http://info.ezweb.ne.jp/
factory/tec/spec/ezplus3.html

からダウンロードできるので取得しよう。

 関連ドキュメントとしては,まずKDDI自身が配布している「プログラミングガイド」「特殊文字コードセット一覧」「APIマニュアル」(KDDI独自のプロファイル分のみ収録)の3点が
http://info.ezweb.ne.jp/factory/
tec/spec/ezplus.html

から入手できる。ただ,これらだけではプログラムを作るのは無理で,MIDPのドキュメントが必須になるので注意しよう。
http://java.sun.com/products/midp/
にある最終仕様書(Final Specification)を手に入れて欲しい。残念ながら英語だが,とくに難しいことは書かれていないので問題ないだろう。

 仕様書を見る限り,ezplusも魅力的な環境といえそうだ。現状では実際に動くプログラムを紹介することはできないが,今後も機会を見てezplusの特徴や動向,また実際のプログラムなどを紹介してみたいと考えている。

[米田聡,ITmedia]

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連載バックナンバー

▼ 付録 iモードJava開発関連リンク集

▼ 第1回 プログラム作成への準備

▼ 第2回 iアプリ製作の流れ

▼ 第3回 ファーストiアプリケーション

▼ 第4回 i-JADEを使おう

▼ 第5回 preverifyの環境作り

▼ 第6回 iアプリでミニゲーム〜グラフィックの取り扱い

▼ 第7回 読者からの質問コーナー

▼ 第8回 キーボードに合わせてグラフィックを動かす

▼ 第9回 クラスって何だろう?

▼ 番外編 ドコモ,公式iアプリ作成ツールを公開

▼ 第10回 NTTドコモの開発ツールを使ってみよう

▼ 第11回 サウンドを使ってみる

▼ 第12回 読者からの質問コーナー〜2

▼ 第13回 スクラッチパッドへの書き込み

▼ 第14回 ネットからデータをダウンロードする

▼ 第15回 アニメーションGIFを使ってみる

▼ 番外編2 iアプリのセキュリティは破られていない

▼ 第16回 もぐら叩きを作る〜1

▼ 第17回 モグラクラスの動作検証

▼ 第18回 読者からの質問コーナー〜3

▼ 第19回 サウンドを鳴らす

▼ 第20回 iアプリの割り込み〜再開処理を実装する

▼ 第21回 サーバと通信を行ってみる

▼ 第22回 iアプリプログラマのためのezplus入門

▼ 第23回 J-フォンのJava仕様

▼ 第24回 iアプリの達人になるには?

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