「縛らなくても解約率は上がらない」――“業界最安”で攻めるUQの戦略
月額380〜4980円という2段階制の料金プランを発表したUQコミュニケーションズ。同社代表取締役社長の田中孝司氏は、この業界最安の料金プランのほか、「急速に拡大が進んでいる」というエリアも大きな強みになるとアピールした。
「業界最安の料金プランとして自信を持って提供したい」とUQコミュニケーションズ 代表取締役社長の田中孝司氏が話す同社の「UQ Step」は、基本料金380〜4980円でWiMAXを利用できる2段階制の料金プランだ。同社はこれまで日額600円の「UQ 1Dayプラン」と、月額4480円の「UQ Flat」を提供しているが、これに新しいプランが加わることになる。
2段階制の料金プランについては、ワイヤレスジャパン2009でも田中氏から今後提供する旨の発言が出たが、「非常に多くの反響をいただいた」という。そうした背景もあり、データ通信の定額プランとしては最安値を実現した。他社のプランよりも下限額(380円)と上限額(4980円)がいずれも1000円以上安く、期間拘束のある割引サービスを加えた他社のプランと比較しても、最安か同額となっている。イー・モバイルの「スーパーライトデータプラン」+「年とく割2」の基本料金は月額580〜4980円で、上限の4980円はUQ Stepと同額だが、下限の580円はUQ Stepよりも200円高い。
また、田中氏はUQ Stepには利用期間の拘束がないことも魅力的だとアピールする。他社は、解約すると契約解除料が発生する割引サービスを提供しているが、UQ WiMAXに同様のサービスはない。田中氏は「利用期間を拘束するのは解約率を下げるため。料金が安く、エリアが広ければ、利用期間を縛らなくても解約率は上がらない」と自信を見せる。
田中氏は、モバイルインターネットでは「エリア」「速度」「端末」「料金」の4つが重要だと説明。エリアは2009年12月15日時点で45都道府県と330市町村をカバーするほか、基地局は12月15日時点で4160局を開設。「基地局はUQ WiMAXのトライアルを開始した(2009年)2月26日には500余りだった。2009年度末までに6000局を開設する予定だが、7000局以上になるのではないか」と、田中氏は急速にエリア整備が進んでいる状況を説明した。
とはいえ、「サービス開始当初はなかなかスムーズに基地局を開設できなかった」と田中氏は振り返る。基地局の開設には、申請やビルのオーナーの承諾など多くのプロセスが存在する。加えて、2009年7〜9月は基地局の部品に障害が多数発生し、その改善に時間がかかったという。だが障害の解消を含め、基地局開設のプロセスの短期化に尽力したことで、10月以降は建設済みの基地局が増加し、11月にほぼ後れを取り戻すことに成功した。「UQは最初はつながらなかったけど、最近はつながるようになったという話をいただいている」と田中氏は手応えを感じている。「2010年の早い段階で、競合他社の基地局数を超える予定」だという。
エリアの整備は屋外から着手し、つながりにくい不感地で電波の角度を調整、ビル間に小規模の基地局を設置することで穴を埋めていく。駅や高速道路の整備も並行して進める。屋内については現在、レピータ(中継装置)を開発中で、「法人向けか個人向けか、ビジネスモデルを検討している」(田中氏)という。
端末は現在、データ端末とWiMAX内蔵ノートPCを提供している。「内蔵PCのユーザーは加入者の10%ほどだが、今後は内蔵PCの比率が上がる」と田中氏は見ている。同氏は内蔵PCのメリットは「PCに端末を装着する必要がないこと」「アンテナが大きいので電波感度が良好」「起動後すぐに接続できること」だと説明。現在、WiMAX内蔵PCは6メーカーから16機種が発売されており、2010年1月の新機種発売により、計20機種を超える予定だ。「WiMAX内蔵PCの便利さは使ってみないと分からない。今後は“外付け”から“内蔵”にシフトするだろう」(田中氏)
2010年はさらなるエリア拡大に努め、屋外は2010年3月までに政令指定都市と県庁所在地をカバー、2011年3月までにそのほかの都市や周辺をカバーする予定。屋内は超小型基地局やレピータを用いてカバー範囲を広げていく。WiMAX搭載PCの普及にも努める。「今後はWiMAXを搭載したNetbookも発売する予定」(田中氏)
さらに、2010年の春をめどに、海外WiMAX事業者と連携した国際ローミングの開始も予定している。すでに米国のClearwire CommunicationsとロシアのYotaと協議を進めているほか、他国での展開も検討している。さらに、具体的なサービス内容は明かさなかったが、「これがWiMAXらしい、という新しい使い方を2010年に提案したい」と田中氏は説明。続報を待ちたい。
関連記事
- UQ WiMAXに月額380円からの2段階定額プラン「UQ Step」
UQコミュニケーションズが、2段階定額制の新料金プラン「UQ Step」を発表した。月額の最低料金は380円からで、上限額は4980円。月額4480円の「UQ Flat」とは手数料無料で変更できる。 - UQ、WiMAX搭載機器向けに「15日間WiMAXお試し利用」を提供
UQコミュニケーションズが、WiMAX搭載のPCやデータ端末向けのお試しサービス「15日間WiMAXお試し利用」を12月7日から提供する。 - UQ、WiMAXのエリア整備を前倒し――2009年度末までに6000局開設
UQコミュニケーションズは、WiMAXサービスのエリア整備を上方修正し、2009年度末までに6000基地局を開設する。 - NEC、持ち運びにも向く手のひらサイズのWiMAXルータ「AtermWM3300R」
NECおよびNECアクセステクニカは、小型筐体採用のモバイルWiMAXルータ「AtermWM3300R」を発表した。 - 通信で車を“見える化” WiMAXでカーナビはシンクライアントに
「第1回 国際自動車通信技術展」の講演でKDDI執行役員常務兼UQコミュニケーションズ代表取締役社長の田中孝司氏が、KDDIのカーソリューションとWiMAXを活用した車と通信の未来を解説。カーナビがシンクライアント化することで、新たなコンテンツビジネスが生まれる可能性を示した。 - WiMAXは2009年が離陸の年――普及に自信を見せるWiMAX陣営
“WiMAXは転換点を通過した”――。ITU Telecom World 2009で会見を開いたWiMAX Forumは、こう宣言する。ユーザーがWiMAX搭載製品を見つけやすくするための「Retail Readiness Program」を展開することも明らかにした。 - ポケットに入るWiMAXルータ「EGG」、“間もなく”登場
UQブースで電池内蔵小型WiMAXルータの新モデルが公開。WiMAX内蔵PCの国内未発売モデルやインテルの新WiMAXモジュールなども展示する。 - UQ、Wi-Fiサービス開始、WiMAXには1日コース追加
UQコミュニケーションズが公衆無線LANサービスを開始。UQ WiMAXサービスには、1日単位で使える「UQ 1 Day」を追加した。 - “WiMAX×WIN”でストレスのないデータ通信を──KDDI 小林昌宏氏
KDDIは9月30日、UQコミュニケーションズが展開するモバイルWiMAXとKDDIのWINのネットワークを、環境に応じて適宜利用できるデータ通信カードを発表。説明会ではKDDIの小林昌宏氏が「いつでもどこでも、快適な速度で利用できるものを目指している」と話した。 - UQ WiMAX、商用サービス開始──独自料金プランのMVNOも登場
UQコミュニケーションズは7月1日、2.5GHz帯を利用したWiMAXサービス「UQ WiMAX」の商用サービスを開始した。合わせてMVNO各社からも、独自の付加価値や価格を用意したサービスの提供が始まった。 - UQ WiMAX 正式サービスの詳細を発表──1 Dayコース、無料無線LANなども提供
UQコミュニケーションズは6月8日、当初の予定通り7月1日から「UQ WiMAX」の有料サービスを開始すると発表した。月額4480円のUQ Flatのほか、「UQ 1 Day」「WiMAX機器追加」「UQ Wi-Fi」などの新サービスも提供する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.