スマートフォン時代を象徴する新たなクラウドサービスが面白かった2010年:ITmediaスタッフが選ぶ、2010年の“注目ケータイ&トピック”(ライター荻窪編)
メイン端末はiPhone 4で、Android端末はまだ常用するには至っていないため、2010年はあまり端末について多くを語ることがない。そのため、2010年本格的に使い始めた、スマートフォン時代を象徴するサービスをピックアップして紹介したい。
わたしのメイン端末は「iPhone 4」で、通話&おサイフケータイ用にauのケータイを持ってるという感じ。Android端末は日々の生活に欠かせないEdyとモバイルSuicaの対応待ちかなあというところ。
かといってiPhone 4の話を今更延々と語ってもしょうがないので、今年本格的に使い始めたスマートフォン時代を象徴するサービスの話で振り返ってみたいと思う。
画素数も撮影機能もたいしたことないiPhoneのカメラの評判が妙にいいのは、“ケータイのカメラにとって何が大事だったのか”をうまくとらえたから。それはいつでもネットにつながるメリットを最大限に生かすことだったのだ。
iPhone向けには、撮った写真をすぐアップロードしてTwitterなりFlickrなりFacebookなりで見てもらうためのアプリが大量に登場し、TwitterのタイムラインにiPhoneで撮った写真が続々と上がり(この点でmixiは出遅れちゃった感がある)、従来のケータイのカメラ以上に(ケータイはメール添付が基本だったから)、iPhoneで撮った写真が広く流通したのだ。そうして共有される写真に1000万画素なんて必要なかったのである。
そんな中、2010年に登場してすぐ大ヒットしたのが「Instagram」。
超シンプルな写真SNSとカメラ機能とフィルタ機能が合体したサービスだ。ウケたのはレトロ系のフィルタがなかなかよくできていて、なんてことない写真もフィルタ一発でそれなりにアートっぽくなることと、Instagram内にTwitterのようなフォロー・フォロワーの機能があり、フォローしてる人の写真を見て「いいね!」する機能があったこと。自分が撮った写真を見てくれているという実感が味わえるのだ。これはかなり大事な感覚。
撮った写真を同時にTwitterやFaceBookやFlickrにも送れるのも広まった理由のひとつ。わたしはTwitter投稿用にも使っている。
Evernote
Evernote自体は以前からあるサービスだけど、2010年に日本語版のサービスがはじまり、NTTドコモとも提携し、本格的に日本で普及がはじまり、わたしもプレミアム会員になった。
Evernoteはクラウドにデータを保管するメモ帳ソフト(テキストも画像もPDFも音声もOK)。iPhoneでもAndroidでもPCでもOK。わたしはiPhoneとiPadとメインマシンであるMacProと原稿書き&モバイルマシンであるMacBook Air(13インチ)の4台で使っている。
ノートを1つ作ると自動的にクラウド上のデータと同期されるので、iPhoneでメモをとって帰宅すれば、家のMacでそのメモをすぐ引っ張り出せる。
いろいろなiPhoneアプリがEvernoteに対応しているので、メモ代わりに写真を撮ってEvernoteに転送するなんてことも簡単にできる。DocScannerというアプリでドキュメントをiPhoneで撮影してEvernoteに放り込んだり、ATOK PadでメモしたらそのままEvernoteに転送したり。
一番便利なのはPCからのメモ整理。発表会なんかがあると地図をさっとEvernoteに貼り付けちゃうし(あとはiPhoneでそれを見ながら現地に向かう)、Web上でメモしておきたいドキュメントがあったらEvernoteにPDFとして貼り付けちゃうし、ノートがたまってきたらタグをつけて整理。地図検索サービスの「マピオン」のようにEvernoteへデータを出力できるサイトも出てきた。
ちょっと気になった情報やメモはどんどん放り込む。細かいことはあとから考えるということで。そのアバウトさがいい。で、スマートフォンがあればそこから見たい情報をいつでも引っ張り出せるのである。
i文庫HDと青空文庫
今年のモバイル系の3大トピックといえば、TwitterやFaceBookといったコミュニケーション系、Evernoteなどのクラウド系、そして3つめは電子書籍だよな、と思う。
iPadが日本で発売されてすぐ登場した京極夏彦氏の「死ねばいいのに」。ダウンロードだけして放置していたのだが7月にちょっと入院した際、急なことだったので手元にある娯楽はiPadだけで、せっかくだからと読み始めたら、快適に読了してしまった。iPadで読書ってけっこういけるじゃんか、と思ったのだった。病院で読むのにふさわしいタイトルではなかったけど、そこは大目に。
その後、味をしめていくつか手を出してみた。面白かったのは文春の「武士道シックスティーン」と話題になった「もしドラ」。どっちも電子書籍でなければたぶん読まなかったタイトルだ。
でもここで取り上げるのは「i文庫HD」。iPhone用に開発されたi文庫のiPad版なんだけど、これがよいのである。
基本的には青空文庫を読むためのリーダーで、PDFにも対応してるので自炊な人でもOK。わたしはPDFで配布されてるコミック(「Jコミ」とか)や本を読むのにも使っている。
青空文庫を今さら説明する必要はないと思うけど(KDDIの「Biblio Leaf」も対応したし)、簡単にいえば、著作権が切れた古い文芸作品をボランティアがテキスト化し、無料で公開しているサービスだ。夏目漱石とか坂口安吾とかアンデルセンとか芥川龍之介とか紫式部とか、名作のたぐいはたいてい入っていると思っていい。
すばらしいのは読書体験。白地に黒はコントラストが高くて目にきついので、背景に少し色がつけてあるしバックライトの強さも選べるしレスポンスもよくてページをめくるときの追従性や紙がめくれるようなアニメーションもよくできてて、気持ちよく本を読めるのだ。
電子書籍リーダーが続々と出てるけど、まずiPad+i文庫HD+青空文庫を試してみるべきだと思うくらいである。
スマートフォンやタブレットが普及すると、それを生かすためのサービスがどんどん出てきて、生活や仕事の仕方がまた変わっていく。モノや機能よりも、そっちが面白かった1年だった気がする。
関連記事
- 海外でもAndroid旋風が巻き起こった2010年
スマートフォンブームは世界的な動きであり、日本でも話題のSamsung電子「GALAXY S」は海外でも高い評価を受けている。ハイエンドモデルだけではなく、超小型サイズで話題になったSony Ericssonの「Xperia X10 mini」は、スマートフォン利用者層を大きく広げた。そして中国でもLenovoが「LePhone」を出すなど、今年はAndroid製品が多数登場した。 - 「iPhoneじゃなくてもいい」と思わせたAndroidの躍進、生活を変えた「b-mobileSIM」
今年は日本での携帯電話市場の風向きが大きく変わった1年だと言えるだろう。最も大きいのは各通信事業者がスマートフォンへの移行をねらって新機種を投入してきたことだ。タブレットやモバイルWi-Fiルーターなどの非音声機種も登場した。そんな1年を振り返り、筆者が気に入った機種を紹介していこう。 - 「撮る」「見る」「共有する」を1本に――Instagramで手軽に始めるスクエアフォーマット
最近TwitterなどでiPhoneアプリ「Instagram」を使って撮影された写真を見かけることが増えた。そのソーシャル性に注目されるところだが、筆者はスクエアフォーマットこそ、このアプリの楽しさではないかと思う。 - Evernote日本版が登場――VAIOやスキャナーとも連携
米Evernoteは3月3日、「Evernote」の日本語版を提供開始したと発表した。メニューバーなどが日本語化され、日本語の画像認識技術も90日以内に実装される。 - Evernote、“ガラケー”にもフル対応へ ドコモが協力
Evernoteのフィル・リービンCEOは、日本のフィーチャーフォンでもEvernoteを利用できるよう準備を進めていることを明らかにした。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.