ドコモ、一連の災害対策を完了――大ゾーン基地局を全国に104基設置:さらなる対策をスタート(2/2 ページ)
ドコモは、東日本大震災後に策定した災害対策の完了を発表した。大ゾーン基地局の設置や既存基地局の無停電化、「災害用音声お届けサービス」の開始、エリアメールの活用などが含まれている。
災害用音声お届けサービスは緊急時に利用されるため、通常の音声発信を試みて電話がつながらない場合に、シームレスで(アプリを)起動させることも検討されたという。しかし、ユーザーがSMSやメールに連絡手段を切り替えることもあり、「あえて、災害用音声お届けサービスを選択して使ってもらえるようにした」(尾上氏)という。非常時だけに普段と違う挙動をさせない、という狙いもあるようだ。
なお、メッセージの送受信はドコモ回線にしか対応しておらず、無線LAN環境では利用できない。また、現時点では他キャリアとの相互接続も不可能だ。しかし、災害時にパケット通信を利用して音声メッセージを届けるサービスについては、総務省が各事業者で速やかに取り組むよう提言しており、業界団体の電気通信事業者協会(TCA)は2011年11月に相互接続のガイドラインを策定している。
尾上氏は、「技術的にはガイドラインが定められており、各キャリアがどのようなUIで実装するか――という段階。今後、各キャリアからも同様のサービスが出てくると思う。ただ、各社間の接続をどうするかはこれから。相互接続が実現するのは、早くても2012年度内だろう」と予測する。
この災害用音声お届けサービスで気になるのが、パケット通信に利用が集中して、音声通話と同様につながりにくくなるのでは――という点。これについて岩崎氏は、「『絶対』とは言えないが、東日本大震災の実績などから音声通話のような規制はかかりにくいと思う。リアルタイムの音声通話と異なり、音声を1度預かる形式のため、利用が集中してもサービスの中断にはつながりにくい」と解説した。
このほか、復旧エリアマップの機能拡充、災害用伝言サービスの音声ガイダンス対応、エリアメールの活用促進、GoogleやTwitterなど外部ICTサービスとの連携も、災害対応の一環として発表された。
復旧エリアマップの更新はこれまで10時間程度かかっていたが、現在は最短で3時間半までスピードアップ。エリアメールは気象庁のほかに、地方自治体から避難情報などを配信できるようになり、2月末での導入実績は878の自治体に広がっている。
震災時にはパケット通信が比較的利用できたこともあり、ポータルサイトやSNSを活用した情報共有が進んだ。ドコモはGoogleと提携し、災害伝言板とGoogle Person Finderの相互検索が可能になった。災害伝言板はドコモが、またGoogle Person FinderはGoogleが開始するため、両方がスタートしていないと相互検索はできないが、他キャリアの伝言板にプラスして、広く安否情報を得られるようになる。また、dメニューやiメニューのトップページに、公共機関や報道機関のTwitterアカウントを一覧表示させ、情報収集の簡易化を図る。
“つながりやすさ”への対策はエンドレス
一連の災害対策は復旧が一段落した2011年4月から進められ、完了までにかかったコストは約200億円。特に基地局の大ゾーン化や無停電化に180億円がかかっており、一番規模が大きい。しかし、「これで終わりではない」(岩崎氏)という。また、2011年夏から続いた一連の通信障害への対策も重ねて進められている。
「大ゾーン基地局は非常時用という目的のため、今回設置した104局でおおむね間に合うと思う。今後は、通常基地局の無停電化を進める必要がある。また、陸上にある伝送路の地下化も進めたいが、明日すぐできることではない。設備の分散配置や(再生可能エネルギーを使う)グリーン基地局の普及など、中長期で取り組む必要がある。通信障害が続いたこともあり、ネットワークの組み方など、平常時でも役立つものは進めたいと思う」(岩崎氏)
ドコモではこのほかに、東北復興のための支援室を社内に設置。またBCPを含めた災害対策マニュアルを見直し、公共機関など外部との連携強化も進める。もちろん、NTT東西などグループ各社との相互連携も重要だという。東日本大震災から多くの教訓を得たというドコモだが、それ以前、阪神淡路大震災の経験を生かせた場面もあったと振り返る。
「阪神淡路大震災では、通行止めによって神戸にドコモの車両を進められなかった。その教訓から、移動基地局などは緊急車両の指定を受けており、東日本大震災での被災地入りは比較的スムーズだった。災害対策だけではないが、つながりやすさのための取り組みに終わりはないと考えている」(岩崎氏)
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