動画や雑誌、アプリも……スマホの“コンテンツ使い放題”が増加したワケ:佐野正弘のスマホビジネス文化論(2/2 ページ)
アプリやコンテンツの課金方法として注目を集めている定額制の“使い放題”サービス。特にスマホの普及とあわせて、キャリア自身が強力にプッシュしている。その背景を探った。
そのauスマートパスで人気のアプリをGoogle Playと比較すると、非常に特徴的な傾向が現れていることが分かる。
Google Playの場合、特に無料アプリではゲームの人気が高く、ランキング上位をにぎわしている。だがauスマートパスのランキングを見ると、実用系のツールや着メロ関連アプリなどが上位に多くランクイン。サービスを積極的に利用する層が違うことに加え、“定額”という安心感のためか人気となるアプリの種類に大きな違いがでてきているようだ。
auスマートパスの好調を受けてか、ドコモも100以上のコンテンツを月額399円で利用可能にする「スゴ得コンテンツ」を5月に開始した。こちらはニュースや占いなどWebコンテンツが中心だが、ゲームなどいくつかのサービスではアプリの利用も可能となっている。
ちなみにスゴ得コンテンツも、ランキングを確認してみると、デコメール素材配信サービスの人気が高いようで、他にも「NAVITIME」などの交通系サービスや、恋愛や旅行などの情報系サービスが人気を獲得しているようだ。スマホにおいてはキャリアメールの人気低下が叫ばれて久しいが、こうした点からはキャリアメールの底堅さを見て取ることもできる。
2つの視点から見る使い放題コンテンツ増加の要因
キャリアはなぜ、スマートフォンとともにコンテンツ使い放題のサービスをプッシュしているのだろうか。その答えは大きく2つの視点から見ることができる。
1つは、ユーザー側の視点だ。スマホはアプリやコンテンツを取り巻く環境がフィーチャーフォンよりもPCに近く、オープンな要素が強い。それゆえリテラシーが高いユーザーであれば自分の好きなサービスを探して自在に活用できる。一方、そうでないユーザーにとってはコンテンツへの道筋が整えられていないため、何をしていいのか分からなくなりがちだ。
それゆえ、キャリアの使い放題サービスは、フィーチャーフォンからスマホに乗り換えて“コンテンツ迷子”になってしまったユーザーの受け皿という性格が強い。“キャリア公式”という安心感に加え、月額で数百円程度という価格の安さ、そして“使い放題”という分かりやすい価値によって、スマホの環境に慣れていないユーザーにも有料のコンテンツを使ってもらおう――という狙いが大きい。
そしてもう1つは、コンテンツを提供する側の視点だ。先に触れた通り、スマホとフィーチャーフォンでは市場環境が劇的に変化している。スマホの場合、アプリの多くが無料、あるいは数百円程度のダウンロード課金で利用できるものがほとんどだ。Webサイトを始め、ネット上のコンテンツもPCと変わらず利用できるため、特にスマートフォンに詳しいユーザーであれば“コンテンツはタダが当たり前”という環境に慣れてしまっている。そのため、ゲームを除けばスマホではコンテンツビジネスがあまり成立していない状況にある。
だがコンテンツを提供する側としては、そうした環境の変化にありながらも、有料で価値のあるコンテンツを提供し、ビジネスを成立させる必要がある。そこで、従来モバイルコンテンツをけん引してきたキャリアが主体となり、多くのコンテンツをひとまとめにして低価格で提供し、会員数の総数を増やすことでコンテンツ利用のハードルを下げ、収益機会を増やす――こうした使い放題のスタイルに力を入れるようになったと考えられる。
月額課金による使い放題のスタイルでビジネスを成立させるには、多数の会員を獲得する必要がある。そのため多くの携帯電話販売店において、端末購入時にこれらのサービスを契約する代わりに、端末価格を値引くインセンティブ施策が実施されているようだ。このことに「不要なサービスを契約させられる」と根強い反発があるのも事実だ。
だが一方で、ネット上でサービスを探すのが苦手なユーザーに対しては、コンテンツとの出会いを与える重要な機会になっているともいえる。コンテンツ使い放題サービスは、単に“量が多くてお得”というだけではなく、スマホ活用のハードルを低くしつつ、コンテンツの収益機会を増やす貴重な存在となっていることは間違いなさそうだ。
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