新iPadのインパクト/auスマパス強化の狙い/iPhone効果が現れたドコモ:石野純也のMobile Eye(10月15日〜10月25日)(3/3 ページ)
各社の冬モデル発売が相次ぐ中、Appleが「iPad Air」と「iPad mini Retinaディスプレイモデル」を発表。これら2機種はどれだけのインパクトがあるのか。このほか、KDDIが発表したauスマートパスの新戦略や、ドコモの決算会見について取り上げる。
iPhone効果が表れたドコモ、Androidの販売力も圧倒的な強みに
ドコモは25日に第2四半期の決算説明会を開催した。決算は、対前年比で減収増益。営業収益が2兆1990億円で0.4%減だったのに対し、営業利益は4732億円と前年同期0.4%増となった。
決算説明会では、9月に導入したiPhoneの効果も明らかになった。代表取締役社長 加藤薫氏によると、iPhone 5s、5c発売以降、MNPのポートアウトが改善した。発売1週目は2012年度比で33%改善したのに対し、spモードメールなど各種サービスを拡充させた3週目は54%の改善が見られたという。「今週も同様の傾向で、改善傾向が続いている」といい、iPhoneを取り扱うドコモショップも週明けにはほぼ全店舗に拡大する。当初はサービスの対応に加え、店頭在庫の不足などがあり「競争への対応が十分でなかった面はあるが、導入効果は確実に出ている」(同)という。
中でも「ドコモへおかえり割」はポートインしたユーザーの認知率が高く、ユーザーがドコモに戻る後押しにもなった。加藤氏は「直近の自社調査だと、iPhoneにポートインした方でご存じだったのが80%ぐらい。ポートインの後押しになった方は、62%もいる」と語る。また、MNPだけでなく、長期利用者を優遇する施策や、ドコモショップの満足度の高さも、競争力の改善につながっているとした。
iPhoneを導入した上で、ドコモは「Androidの販売力については、圧倒的な強みがある」(加藤氏)。家電量販店でのAndroid端末のシェアは67%で、契約者のシェアを上回っている。ただし、ドコモの挙げたデータは4〜8月の累計で、この間同社はiPhoneを取り扱っていない。今後、この数値がどのように推移していくのかは注視しておきたい。「ARROWS NX F-01F」「AQUOS PHONE ZETA SH-01F」「Xperia Z1 f SO-02F」を「おススメ3機種」にすえた冬モデルの結果も、徐々に見え始めている。加藤氏は「(決算会見の)昨日発売された『Xperia Z1』は好調に滑り出している」と話、自信をのぞかせた。「ほかの端末はどうだという話になってしまうので、台数は控えたい」(同)としたが、依然としてAndroid端末での競争力が健在なことはうかがえる。
端末に加え、ネットワークも強化。LTEのエリアではやや他社に後れを取っている印象を受けるが、急ピッチで基地局を増やし、1.7GHz帯を導入して速度の向上にも力を入れている。また、ドコモは「dビデオ」「dアニメストア」「dヒッツ」といったサービス分野にも力を入れている。3つのサービスの合計契約者数は701万。dマーケット全体での取扱高も270億円に成長した。
先に指摘したように、KDDIはコンテンツの獲得に強引な手法が目立つようになったが、ドコモではそうしたケースが少ないようにも見受けられる(ただし、ゼロではなく、実際に何店舗かを訪問したうえでの筆者の感想なので、その点はご留意いただきたい)。また、これらのサービスを店頭で簡単に契約、解約できる点も、ユーザーフレンドリーと言えるだろう。その反動もあってか、dビデオについては合計446万契約と、第1四半期からユーザー数が据え置きなっている。一時は450万契約を突破していたときもあるため、一時的にだがユーザー数は純減している。
KDDIが上位レイヤーのコンテンツを他社との差別化の武器にしていくのに対し、ドコモはキャリアフリーを打ち出し、他社のユーザーにも積極的にこれらを広げていく構えだ。これについて加藤氏は、次のような考えを述べている。
「コンテンツが強みなってくる。ドコモのお客様でない方にも使っていただける。一方でMNPがしやすくなると心配する人もいるが、ネットワークを磨き、サービスを磨き、端末を磨けば、おのずと選んでいただける」
つまり、キャリアとしては端末、サービス、ネットワークを磨いていき、そこを競争領域にする。コンテンツは、それ自体できっちり収益を上げるため、他社に開放していくということだ。dビデオやdアニメストア、dヒッツといった好調なコンテンツも、いつかは契約者数が頭打ちを迎える。そのときに、より契約者数を拡大する手法としては、キャリアフリーにするのは1つの手段だ。ただ、上位レイヤーのコンテンツについては、ライバルも少なくない。ネットサービスを専業で手がけてきた事業者とも競合することになる。このキャリアフリーの試みが成功するには、コンテンツ自体の魅力をさらに高め、プロモーションにも今以上に力を入れる必要がありそうだ。
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