新キャリア「Y!mobile」の狙い/Android Wearの可能性/ドコモのパケット接続料値下げの影響:石野純也のMobile Eye(3月17日〜28日)(2/3 ページ)
この2週間の中では、3月27日にヤフーがイー・アクセスを買収して新キャリア「Y!mobile」を発表したことが大きなトピックだった。Android WearやWearable Tech EXPOなどでウェアラブル端末も脚光を浴びた。ドコモがMVNOに対してパケット接続料値下げしたことにも触れたい。
ウェアラブルに特化した「Android Wear」が登場
Googleは3月18日に、ウェアラブルのプラットフォーム「Android Wear」を発表した。すでに開発者用のプレビューが公開されており、当初のターゲットはスマートウォッチとなる。パートナーの端末メーカーとして、LGエレクトロニクス、Motorola、Samsung電子、ASUS、HTCなどが名を連ねており、Qualcomm、Intel、MediaTek、Broadcom、Imagination Technologiesといったチップベンダーも参画している。ファッションウォッチを展開するFossilの名前が挙がっている。
スマートウォッチはこれまでもSamsung電子やソニーモバイルといった大手メーカーのほか、中国をはじめとする中小企業がさまざまな端末を発売してきた。ここに用いられているOSは、多くがAndroidをカスタマイズしたものだ。では、Android Wearはこれらとはどこが違うのか。1つは、通知(ノーティフィケーション)がスマートフォンと連携する点にある。Androidには通知を連携させる正式な仕様がなく、ソニーの「Smart Watch」シリーズや、Samsungの「GALAXY Gear」では、常駐アプリで拡張してそれを実現していた。これに対し、Android WearではAPIとして通知を連携させる仕組みを用意した。
アプリの開発者もこうした点には魅力を感じているようだ。Android Wearを「おもしろい」と評価するGClueの代表取締役 社長 佐々木陽氏も「スマートフォンでインテントを作成し、時計に送ることができる。(iPhoneに実装されている)ANCS(Apple Notification Center Service)よりも高度で、やれることが多い」と述べ、期待をのぞかせる。
インテントとは、Androidの初期から搭載されていた仕組みで、アプリ同士を連携させる仕組みのこと。ブラウザからTwitterクライアントを呼び出したり、逆にSNS専用アプリからブラウザを呼び出したりするときに、インストールされたアプリを選択する画面を見たことがある人は多いだろう。あれがインテントだ。Android Wearにもこの仕組みが取り入られており、従来のアプリに少し手を加えるだけで、通知をスマートウォッチに送ることができる。
また、佐々木氏は「音声認識コマンドで、スマートウォッチからスマートフォンを操作し、情報をやり取りできる点も面白い」と言う。この音声認識コマンドも、Android Wearの特徴の1つだ。Androidの音声検索やGoogle Glassのように、「OK,Google」と呼びかけると音声認識が始まり、フライトの情報やスケジューラーに入れた予定を確認できる。こうした機能は、そのほかのスマートウォッチにも搭載されていたが、Googleの音声コマンドは精度も高く期待ができる。
Android Wearは、フィットネス系のアプリと連携することも可能だという。端末の仕様は公開されていないが、スマートウォッチ側にセンサーを搭載して、そのデータをやり取りできるのだろう。ただし、これに関してはほかのウェアラブル端末もほぼ同じで、Android Wearならではの特徴は見えてこない。
ウェアラブルの統一プラットフォームという点で注目しておきたいAndroid Wearだが、一方で、「ハードウェアの仕様が公開されていない」(佐々木氏)そうで、Androidのようにサードパーティが自由に端末を開発できる状況にはなっていない。まずはパートナー企業のハードウェアが優先されることになるだろう。この点では、できることは限られているが、ANCSというAPIを整え、サードパーティの商品も登場しているAppleが一歩リードしているようにも感じる。
筆者としては、パートナー企業に時計メーカーのFossilが加わっている点も、興味深いと感じた。ウェアラブル端末は、まだ黎明期ともいえる段階で、デザインがどうしても従来の時計とかけ離れたものが多い。近未来的な一方で、自然に体に身に着けるにはやや抵抗があるのだ。服装の一部であるはずのウェアラブルが、服装と調和していない状態ともいえるだろう。
こうした点は、25日〜26日に開催されたWearable Tech EXPO in TOKYO 2014でも指摘されていた。同イベントでウェアラブル用も想定した超大容量バッテリー「WEA」を発表したリアルフリートの熊本浩志氏は、「ウェアラブルはダサいと持ち歩かない。ファッションに寄らないといけない」と現状を端的に表現していた。
同じく同イベントに登壇したガートナー ジャパンの蒔田佳苗氏は、日本におけるイノベーター層、アーリーアダプターの層の少なさを指摘しつつ、ウェアラブルが今とは違うメッセージを発信しないと主流にはならないとの見方を示している。Android WearのパートナーにFossilが含まれていたように、すでに多くの人が体に見つけている時計ブランドとの協業は、製品面、マーケティング面でこうした状況を変えていく可能性がある。
今後、GoogleがAndroid Wearをスマートウォッチ以外にどこまで広げていくのかも、注目しておきたい。現在、開発者用に米国で販売されているGoogle Glassは、Android Wearとは別のプラットフォームで開発されているが、後継機がAndroid Wearの1つになる可能性も低くないだろう。とはいえ、現時点ではまだ具体的なハードウェアが1つも登場しておらず、スマートウォッチそのものも規格が乱立している。スマートフォン用OSとしてのAndroidのように、今後、Android Wearが幅広いメーカーが参画する共通プラットフォームになれるかは、現時点では未知数だ。それを判断するうえでも、このプラットフォームを採用した製品が登場するのが、今から楽しみだ。
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