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インタビュー

「安かろう悪かろう」ではダメ――“日本品質”に徹底してこだわった「freetel」の秘密SIMロックフリースマホメーカーに聞く(2/2 ページ)

ここ最近、日本でも数多くのSIMロックフリースマートフォンが発売されている。中でも新興メーカーとして注目したいのが、「freetel」ブランドで端末事業を展開しているプラスワン・マーケティングだ。同社が端末事業に参入した狙いと勝算を聞いた。

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ハイスペック端末の800MHz帯対応はマスト

―― 先日発表された新ラインアップは、LTE対応モデルまで一気に幅を広げました。この理由を教えてください。

大仲氏 これを決定したのは、お客さんの声です。もう少し安いもの、もっとハイスペックなもの、画面が大きなものなど、いろいろなご要望をいただきました。当初から、3ラインアップぐらいで、ハイエンド、ミッドレンジ、エントリーモデルを提供したいという思いがあり、そうした声の後押しもあって出すことにしました。

 スペックとしては、freetel LTE XMが一番高くなります。LTEに対応していて、画面はHDの5型、Android 4.4でバッテリーも2300mAhあり、CPUはクアッドコアです。また、LTEの800MHz帯や、FOMAプラスエリア(3Gの800MHz帯)に対応しているのもポイントです。

photophoto 5型のHDディスプレイやクアッドコアCPUを搭載するLTEスマートフォン「freetel LTE XM」。カーボン調のデザインが特徴だ

―― 途中でスペックを変更しましたよね。

大仲氏 5月中旬に、今後はフルラインアップでやりますとご案内したあと、6月にやっぱり(スペックを)変更しますというリリースを出しています。ですが、お客さんからしたら、デメリットはない変更です。スペックは前より上げ、価格は据え置いているわけです。

―― その下に、freetel nicoがあるわけですね。

大仲氏 こちらは、1万7800円で出そうとしているモデルで、freetel LTE XMと何が違うかといえば、LTEに対応していないことです。ただし、FOMAプラスエリアは使えるため、エリアも広くなります。

photophoto 5型のHDディスプレイ搭載でラウンドフォルムが特徴の3Gスマートフォン「freetel nico」(※発売される製品とは外観の一部が異なります)

―― ちなみに、freetel LTE XLには、ベースモデルがあるのでしょうか。ZTE製という声もありますが。

大仲氏 はい、そうです。ただ、いかに日本仕様にするかにはこだわっています。日本仕様にするとコストがかかり、グローバルメーカーはそれを嫌がります。ちょっとしか台数の出せない端末に、なぜそこまでコストをかけるのかという考えになるからです。前職でもそうでしたが、数万台規模だと全然動きません。うちは日本企業ですし、日本のためにスマートフォンを作っているので、その点にはこだわります。

―― 先ほどの800MHz帯対応も、その1つでしょうか。

大仲氏 それも品質の1つだと考えています。妥協していいところと、いけないところは絶対にありますからね。ハイスペック端末については、800MHz帯の対応はマストだと考えています。

―― ZTEの端末をベースにしていても、やはり先ほどのお話にあったような品質管理は必要だったのでしょうか。

大仲氏 絶対に必要です。グローバルメーカーは、国際基準があり、みんなそこに合わせています。単純なところだと、落下試験が1メートルでクリアできるところを、日本のメーカーは1.5メートルや2メートルでやっています。この0.5メートル、1メートルの違いで、日本のモノが壊れにくくなっています。ハンダのつけ方1つでも、製品の持ち方がまったく違う。そういうノウハウを積み重ねてきたのが、日本のモノ作りなのだと思います。

フィーチャーフォンは5000円くらいで発売する

―― スマートフォン一辺倒かと思いきや、フィーチャーフォン「freetel Simple」やWi-Fiルーター「freetel LTE Wi-Fi」がラインアップにあったのにも驚きました。

大仲氏 「スマートフォンはいいから、もっとシンプルなモデルを出してほしい」という声も多くいただきました。こういう携帯電話でも、キャリアさんのモデルは高いですからね。カメラが1300万画素あったり、FeliCaがついていたりで、あと1、2万円出せばスマートフォンが買えてしまう価格になっています。

 ただ、フィーチャーフォンを使いたい人たちは、カメラはスマートフォンで撮ります。昔はこれ(フィーチャーフォン)しかなかったのでハイスペックになるのは分かりますが、スマートフォンのスペックがどんどん上がるなかで、フィーチャーフォンにそこまでのスペックは求められません。この端末も、5000円ぐらいで出そうと計画しています。

 機能より、むしろ電話がしやすかったり、バッテリーの持ちがよかったりといった方が重要です。スマートフォンはフルで使うと1日持ちませんが、これなら2、3日充電しなくても電話できますからね。しかも価格が安ければ、ニーズはあると思います。このモデルにはカメラも付いていません。ここにもメリットが多く、法人さんの中にはセキュリティ的にダメだからということで、わざわざカメラを使えなくしているところもあります。だったら、最初から付いていない方がいいですからね。

―― メールはどうなるのでしょうか。iモードメールのような機能は、もちろん使えませんよね。

大仲氏 基本は電話とSMSだけです。あと予定しているのは、Bluetoothをどうするかです。Bluetoothを入れておけば、スマートフォンの着信をフィーチャーフォンで受けることもできます。フィーチャーフォンの強みは“腐らない”ことです。ほぼ電話だけしか機能がなく、付け加えることもないので、長く売れます。

―― ただ、音声のみが使えるSIMカードはあまり多くありません。

大仲氏 日本通信さんが音声だけのSIMを出していますが、これから(ほかも)出てくると思いますよ。なぜ出せていないかというと、(音声専用の)端末がないから。うちがこれ(フィーチャーフォン)を出すので。極端なことを言えば、ほかがやらないならうちがMVNOをやろうと。というかやります。やる予定があります。

―― Wi-Fiルーターも、同じようにお客さんの声を受けてということでしょうか。

大仲氏 これもニーズがあるからです。今のLTE対応ルーターは、高いか、SIMカードとセットになっているかで選択肢がありません。一番売れているイー・アクセスさんでも、2年縛りで通信と端末が込みで3600円ぐらいかかります。そうすると、端末代は3〜4万円ぐらいでしょうか。うちのWi-Fiルーターは、店頭でも1万5000を切る価格になります。

 また、最近はWi-Fiルーターにもタッチパネルがついていますが、それで高くなるならいらない機能だと思います。考え方はフィーチャーフォンと一緒で、本当に必要な機能を見極めてきちんとした価格で出さなければなりません。

MVNOとして端末から回線までを提供する

―― 大手メーカーも続々とSIMフリー端末市場に参入しています。率直な印象と勝算をお聞かせください。

大仲氏 市場が盛り上がっていいと思っています。ただ、今回端末を出したHuaweiのモデル(Ascend G6)を見てもそうですが、まだコスト面しか見ていない印象があります。品質もそうですし、800MHz対応の件もそうです(Ascend G6は800MHzには対応しない)。あのモデルを、Android 4.4がある中で、Android 4.3で出たことにも疑問を感じました。

 また、外資メーカーにできないのが保守で、そこは手厚くしています。初号機が売れ出したので、サービスレベルが低くならないよう、電話の回線も増設しました。メールサポートも24時間以内に返答するようにしていて、ほかに比べればかなり手厚くなっていると思います。

 サポートでは、例えばOCNさんのAPNの設定方法といったようなことまで教えています。たまに、LINEの使い方まで聞かれることもありますね(笑)。今まで、ドコモさんの端末はすべてドコモさんに聞けば解決していたので、そういった考えになっているのではないでしょうか。そういう質問に対しても、分かる範囲ですが回答しています。

―― そうなると、MVNOとしてワンパッケージで端末から回線までを提供した方がいいですね。

大仲氏 はい。一気通貫でやると分かりやすいですからね。freetelにまとめて問い合わせできるのが、お客さんにとっては一番うれしいのだと思います。ですので、freetelもMVNOとして、通信事業に参入しようと考えています。ハードウェアメーカーでありながらMVNOとしてキャリアまでやる会社は、ほかになかなかないのではないでしょうか。

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