iPhone+格安SIMでスムーズにデータ通信できない原因は?――IIJが検証結果を発表:IIJmio meeting 8(3/3 ページ)
MVNOが提供するSIMカードを挿したiPhoneで、なかなかLTE接続できなかったり、そもそもデータ通信できなかったりする事象が見られる。IIJがその原因を調査し、そこで判明した結果を紹介した。
KDDI系MVNOのSIMでもiPhone/iPadが使用可能になった理由
最後に、4つ目の事例として、「新しいCellular Payload版のAPN構成プロファイルを利用すると、mineoなどKDDIネットワークを利用したサービスのSIMでもiPhoneが利用可能になった現象の検証結果」を紹介した。このことはIIJのエンジニア堂前清隆氏のブログ「てくろぐ」ですでに明らかにされていたが、その詳細な説明だ。
まず、現在提供されている(古い)APN構成プロファイルを利用している場合に、どのような状態になっているかを確認してみよう。LTEネットワークで接続を開始すると(Step0)、LTEネットワークで位置登録をする(Step1)。LTEデータ通信接続の確立を行おうとするが、KDDIの認証サーバにアクセスしようとするため、MVNOの認証サーバには接続できずデータ通信接続の確立に失敗(Step2)。そうすると端末はCDMA2000のネットワークにフォールバックする。
しかし、MVNOはCDMA2000のネットワークを利用できないため、CDMA2000でデータ通信接続の確立ができず、ハンドオーバーなどでLTEネットワークに移行することもできない。ドコモのネットワークを使うMVNO SIMではできた3GからLTEへの遷移が、KDDIのネットワークを使うMVNO SIMの場合はできないので、まったくデータ通信ができない状態になると推測できる。
一方、Cellular Payload版APN構成プロファイルを利用するとどうなるか。この場合、LTEネットワークで位置登録が成功すると(Step0、Step1)、LTEデータ通信接続の要求時にMVNOのAPN情報がちゃんと渡され、LTEデータ通信接続の確立に成功する(Step2)。つまり、KDDI MVNOのSIMでもiPhoneで通信できるということなのだが、「少し問題もある」と大内氏は指摘する。
KDDIのLTEネットワークを使った場合、SMSの通信はVoLTEで使われるような、IPベースのプロトコルを使ったIMSを利用しており、SMSに対するデータ通信接続の確立に失敗することがあるという。この影響で、iPhone 5s/5cなどでは接続が不安定になるのではないかと大内氏は推測している。
以上4つの検証結果から、MVNOのSIMを使ってSIMフリーiPhone/iPadを利用する場合は、必ず音声かSMS対応SIMを利用すること、Cellular Payload版のAPN構成プロファイルを利用することをIIJは推奨している。また、KDDI系MVNOのSIMについては、まださらに調査が必要だという認識も示された。mineoは、ファンサイトの「マイネ王」で、APN構成プロファイルを変更した場合の動作確認テストについての情報を更新しており、こちらも引き続き注目したい。
Cellular Payload版のAPN構成プロファイルについては、IIJでは現在、テスト版としててくろぐに公開しているが、問題がなければ近々正式版になる予定だ。
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