使ってみれば、まるで別物――iPhone 6s/6s Plusは“スマートフォンを再発明”した(1/4 ページ)
iPhoneは長足の進歩を遂げたが、根幹となるユーザー体験の部分は「初代iPhone」を改善し洗練させていく道程だったのだ。しかし、iPhone 6s/6s Plusに触れて、その状況が変わるのではないかと感じた。「6s」の真価はどこにあるのだろうか?
振り返れば、この8年は「改善と洗練の歴史」だった。
2007年に故スティーブ・ジョブズ氏が掲げた初代iPhoneは、“誰もが使えるスマートフォン”という新しいカテゴリーを作りだし、世界に広がった。その後、iPhoneと、iPhoneをまねて誕生したAndroidは長足の進歩を遂げたが、根幹となるユーザー体験の部分は「初代iPhone」を改善し洗練させていく道程だったのだ。
しかし、その状況が変わるのではないか。
9月9日、サンフランシスコ市内のビル・グラハム・シビック・オーディトリウムで初めてiPhone 6sとiPhone 6s Plusに触れた時に筆者はそう感じた。そして、その印象は確信になりつつある。
筆者は今回、iPhone 6sとiPhone 6s Plusの日本向け製品版をいち早くテストする機会を得た。単なるマイナーチェンジに留まらない「6s」の真価はどのようなものか。実機の利用体験をもとにレポートしたい。
iPhone 6sとiPhone 6s Plusは、デザインは先代と変わらない。やや重量は増しているもののボディサイズの変更もなく、従来のケースがそのまま利用できる。外装材はより堅牢(けんろう)性の高い金属に変更されているが、質感も大きく変わっていない。先代との違いをアピールしたければ、新色のローズゴールドを選ぶのがよいだろう
ユーザー体験の根幹を変える「3D Touch」
テクノロジーの世界においては、もう後戻りできない進化というものがある。古くはGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)の登場がそうであったし、インターネットや検索サービスの実現もそうだったといえるだろう。そしてスマートフォンの世界では、2007年に初代iPhoneが実装したマルチタッチインタフェースがまさにそれだった。
筆者はiPhone 6s/6s Plusのハンズオンで、3D Touchは「後戻りできない進化」になるのではないかと直感した。そして、iPhone 6sとiPhone 6s Plusを日常的に使うことで、その直感は実感となり、今では確信になっている。iPhone 6/6 PlusとiPhone 6s/6s Plusは、新色のローズゴールドが加わってことを除けば見た目の変化はまったくないが、実際に使ってみればまったくの別物だ。そして1日も使えば、iPhone 6に戻ることすら嫌になってしまう。3D Touchを軸にした新たなUIデザインの訴求力は、それほど強いのだ。
特にその“違い”を強く感じたのが、サイズの小さいiPhone 6sを使っているときだ。その大きさゆえに両手持ちが基本となるiPhone 6s Plusと異なり、iPhone 6sは片手持ちで使うことが多い。この片手持ちの時に親指に込める力加減ひとつでさまざまな操作ができる3D Touchは、指の移動量や操作の手数が減ってとても使いやすいのだ。
今後、LINEや各種Twitterクライアント、ニュースビュワーなど主要なアプリが3D Touchに対応していけば、電車内などで片手持ちでiPhoneを使う場面で操作性が劇的に向上すると感じた。iPhone 5世代のユーザーがためらう「画面サイズが大きくなったiPhone 6は使いにくそう」という問題も、3D Touchの活用で解消していくかもしれない。日本では依然として“スマートフォンの片手持ち”のこだわりが強いが、それに対して3D Touchはとてもよいソリューションになるだろう。
むろん、iPhone 6s Plusでも3D Touchは使いやすい。ただ、画面の大きいiPhone 6s Plusは両手持ちで、親指ではなく人差し指でスクリーンをタッチしている人も多いと思う。筆者が使った印象だと、この人差し指操作の際は、力をしっかり込める感じで押さないと「ピーク」や「ポップ」として反応しないことがあった。この場合は、「設定」→「一般」→「アクセシビリティ」の中にある「3D Touch」の設定項目で、感度設定を「弱い」にした方がいいだろう。
画面を押す力加減を操作に取り入れる――。3D Touchによって実現した新たなUIデザインは話を聞くだけだと難しそうに思えるが、実際に触ってみれば1分もかからずマスターできる。そして1日も使えば、これが初代iPhone登場に匹敵するユーザー体験の大革命であり、もはや3D Touch非搭載のスマートフォンは使いたくないと感じるようになるだろう。
しかもiOSの世界では、新たなUIデザインにサードパーティ製アプリが対応するのが早いのだ。Apple純正以外のアプリでも1カ月もすれば3D Touch対応が進み、ピークやポップを用いたさまざまな操作方法が生みだされるだろう。
翻れば、今では当たり前になった「タップ」「フリック」「スワイプ」「ピンチイン/ピンチアウト」といった操作も、最初に体系立てて定義したのは初代iPhoneだった。そして今回、AppleはiPhone 6s/6s Plusで、「ピーク」と「ポップ」という新たな名称と操作方法を定義。それをOSレベルでサポートするだけでなく、ソフトウェア開発者キット(SDK)でも定義し、この新しいUIデザインを幅広いサードパーティ製アプリでも利用できるようにした。
技術的にできるからと単純に目新しい機能を付けるのではなく、それがきちんと世の中に広がり、世界を変えていく環境まで作る。それこそがAppleの競争優位性であり、サムスン電子などほかのスマートフォンメーカーと大きく異なる部分なのだ。
おそらくAndroidスマートフォン陣営も、3D Touchに似た機能を実装してくることになるだろう。しかし、ハードウェアとソフトウェアで調和の取れた操作感の実現、サードパーティ製アプリでの幅広い対応となると、今後3〜4年はAppleの3D Touchに追いつけない可能性が高い。iPhone 6s/6s Plusが実現した「もう後戻りできない」ものは、ユーザー体験のパラダイムシフトそのものなのだ。
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