ドコモが「dポイント」開始――au、ソフトバンクのポイントサービスとの違いは?:石野純也のMobile Eye(11月9日〜20日)(1/2 ページ)
NTTドコモが12月から新たなポイントサービス「dポイント」の提供を開始する。先行して展開している「au WALLET」と、ソフトバンクの「Tポイント」とは何が違うのか? 3社の違いを読み解いていく。
12月から、ドコモのポイントプログラムが大きく変わる。名称を従来の「ドコモポイント」から「dポイント」に改め、提携店舗でのポイント取得や利用を可能にするほか、ドコモユーザー以外にもこの仕組みを開放する。単なる携帯電話の料金に付くポイントから、共通ポイントへの脱皮と考えてもいい、大きな改革といえるだろう。
キャリアのポイントプログラムという点では、auやソフトバンクが先行して、新たな仕組みを取り入れていた。auは、マスターカードのプリペイドカードとひも付けた「au WALLET」を2014年5月に開始。ポイントをプリペイドカードにチャージすることで、リアルな店舗で利用できるようになった。対するソフトバンクは、Tポイントを2014年7月に導入した。
では、ドコモのdポイントは、先行する2社と比較してどのように違うのか。他社との差分を見ていくと、ドコモの思惑がより明確に見えてくる。
共通ポイントとして使えるdポイント、ドコモの狙いは?
「日本一、ワクワクするポイントを皆さまへ」――こう語ったのは、ドコモの加藤薫社長だ。“皆さま”と述べている通り、12月からスタートするdポイントは、共通ポイントへの転換である。つまり、キャリアが独自で実施し、キャリア内で閉じていたポイントプログラムから、共通ポイントへ全面的に移行するということだ。
新たに発行されるdポイントカードは、他社でいうところのTカードやPontaカードと同じような位置付けで、auやソフトバンク、MVNOのユーザーも持つことが可能。誰もが持てる、共通ポイントとして生まれ変わる。ドコモショップ以外では、ドコモと提携しているローソンでも、dポイントカードの配布が予定されている。
ドコモポイントでは、ケータイの利用料が主なポイント付与対象だったが、これも拡大される。いわゆる共通ポイントと同様、ドコモが開拓した加盟店でもdポイントカードを提示することでポイントがたまり、たまったポイントを現金の代わりに利用することもできる。
現状では、ローソンのほか、ドコモとの提携を発表したマクドナルドに加え、BLUE SKY、イオンシネマ、タワーレコード、オリックスレンタカー、ルネサンス、伊達の牛タン本舗で、ポイントの取得および利用が可能になることが明らかになっている。
たまったポイントは、上記のように利用できるほか、毎月のケータイ料金に充当できたり、Pontaに変換できたりと、さまざまな用途に利用できる。もちろん、これまでのドコモポイントで可能だった、同社の商品購入やdマーケットでの利用、商品交換なども、引き続き実施していく。この点では、よりポイントの使い勝手が高まったといえるだろう。ただし、ポイントの換算率が1ポイント=1.08円から1ポイント=1円と、8%下がっている点には注意が必要だ。
また、これまでドコモのクレジットカードとして発行していたDCMXも「dカード」に改定される。単にカードのデザインが変更になるだけでなく、dカードはdポイントカードを統合したものだ。これによって、dカードでの支払いに対してdポイントカードがたまるほか、ローソンではdカードを利用すると、自動的に支払額に対してポイントが付与される。加藤氏が「三位一体のカード」と呼ぶように、dカードにはiDの機能も含まれている。
ドコモの狙いはシンプルで、「3つのビジネスアセットの送客、顧客基盤、決済を生かす」(関係者)ことに主眼が置かれている。ビジネスモデルとしては、ユーザーに還元したポイントを各店舗に請求し、その中の何割かを手数料として受け取るというものになっている。各店舗にdポイントのユーザーを送り、その代わりに手数料を得るというものだ。現状でもドコモポイントは「年間に数百億円レベルで付与している」(同)状況で、これがドコモ以外のリアルな店舗に還流するインパクトは決して小さくない。dポイントとしてサービスを広げることで、規模はもっと大きくなる可能性もある。
ユーザーへの還元を強化することで、ドコモにユーザーを呼び込む狙いもある。加藤氏は「『これからドコモを使ってやろうじゃないか』という機運を高めるもの」と説明しているが、同時に解約を抑止する効果も狙っているようだ。「囲い込み」で解約率を下げることでも、ドコモにとってはプラスの効果がある。
au、ソフトバンクとは立ち位置が異なるポイントプログラム
では、他キャリアのポイントプログラムとdポイントはどのような違いがあるのか。auは、ポイントプログラムをマスターカードのプリペイドカードとひも付け、「au WALLET」としてリアルな店舗で利用できるようにしている。プリペイドカードを1枚挟むことで、ポイントをリアルな店舗で利用可能にしたというのが、au WALLETの売りだ。dポイントもiDでのショッピング代金に充当できたり、Pontaに変換したりでき、リアルな店舗でも使えるが、マスターカード発行プリペイドカードであるau WALLETには数の上で見劣りする。
一方で、au WALLETは、ためるという観点だと、あくまでauユーザーのためのポイントプログラムの延長線上にあるものだ。dポイントのように他社のユーザーでも持てるものではなく、店舗でポイントをためるには、あくまでau WALLETを使っての決済が必要になる。dポイントのようにカードを提示して、現金で支払ってポイントをためるということはできない点が大きな違いだ。位置付けとしては、共通ポイントというより、キャリアのポイントプログラムを拡張したものと捉えることができる。
ソフトバンクの仕組みは、さらにシンプル。ポイントプログラムとしてTポイントを導入しているため、基本的にはこのエコシステムの中で、ポイントをためたり、使ったりできるようになっている。よく言えば既存の大手と柔軟に手を組んだ、悪く言えばポイントプログラムを全て外に委ねてしまったものだ(ただし、グループとしてTポイント・ジャパンの主要株主には名を連ねている)。そのため、Tポイント加盟店でポイントの利用ができるほか、こちらもVISAのプリペイドカードにポイントをチャージできる。事実上、VISA加盟店ならどこでもポイントを利用可能ということだ。
ここには、各社の置かれている立場が色濃く反映されている。ドコモは、言わずと知れた、国内ナンバー1のキャリア。ユーザー数は6000万を超えており、2015年度内には7000万の契約を超える見込みだ。全員がdポイントを利用するようになっただけで、5500万会員を超えたばかりのTポイントの規模を超え、7000万会員のPontaにも匹敵する格好となる。ここに他キャリアのユーザーが加われば、最大手の楽天も視野に入ってくるだろう。自分たちで共通ポイントの仕組みを作るメリットがあるというわけだ。
これに対してソフトバンクは契約者では、ドコモと開きがある。総ユーザー数は4000万弱だが、同社が「主要回線」と定義している高ARPUのユーザーは3100万強。ソフトバンクとY!mobileでブランドが分かれているため、ソフトバンクユーザーはさらに少なくなる。ユーザー数としては決して小さな数字ではないが、自前でポイントプログラムを立ち上げるには、やや心もとない規模といえるだろう。KDDIはその中間で、既存の共通ポイントとは距離を置きつつ、自前のポイントを利用できるようにしたという格好だ。
名称 | 運営主体 | ポイントカード | プリペイドカード | クレジットカード | ポイント取得方法 | ポイント利用先 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ドコモ | dポイント | ドコモ | dポイントカード | なし | dカード | 携帯電話利用、加盟店、クレジットカード利用 | 通信費、端末購入、加盟店での利用、iDバリューへの交換 |
au | au WALLET | KDDI | なし | au WALLET | au WALLETカード | 携帯電話利用、クレジットカード利用 | 通信費、端末購入、au WALLETへのチャージなど |
ソフトバンク | Tポイント | Tポイント・ジャパン | Tポイントカード | ソフトバンクカード | なし | 携帯電話利用、加盟店、クレジットカード利用 | 通信費、端末購入、加盟店での利用、ソフトバンクカードへのチャージ |
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