“スマートフォンの次”が見えた――「モバイルプロジェクト・アワード2016」表彰式
モバイルビジネスの発展に貢献した個人とプロジェクトチームを表彰する「モバイルプロジェクト・アワード2016」の表彰式が行われた。16年は「GearVR」「ロボホン」「SORACOM」「AbemaTV」などが選ばれた。特に変化を感じたのがハードウェア部門だった。
モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)は7月4日、モバイルビジネスの発展に貢献した個人とプロジェクトチームを表彰する「モバイルプロジェクト・アワード2016」の表彰式を開催した。
モバイルプロジェクト・アワードでは、モバイルコンテンツ部門、モバイルプラットフォーム・ソリューション部門、モバイルハードウェア部門、MCF社会貢献賞の4部門で特に優れた製品やサービスを選出している。
モバイルハードウェア部門
- 最優秀賞 GearVR
- 優秀賞 モバイル型ロボット電話「RoBoHoN(ロボホン)」
ハードウェアは例年、スマートフォンやタブレットが受賞したが、2016年はこれまでとは異なる顔ぶれとなった。ここ数年、スマートフォンが成熟してきたことで端末の同質化が進みつつあるが、「GearVR」と「RoBoHoN(以下、ロボホン)」からは、“スマートフォンの次”につながる可能性を感じられた。後述する「SORACOM」もIoTを活用する橋渡しとして注目される。
GearVRはVR酔いを防いで眼鏡を付けたままでも利用できるなど、一般ユーザーが使いやすくなるよう仕上げたこと、Galaxyを装着して使うことからスマートフォンの新たな価値を提供したことが評価された。「VRが世の中で広がることを夢見てGearVRを開発してきた。2016年はVR元年といわれ、日の目を見るステージに立つことができた。これから、B2BとB2Cにかかわらず、盛り上げていきたい」(サムスン電子ジャパン 無線事業本部 Product Group 笠洋志氏)。
ロボホンは、モバイル通信に対応したロボットとして、携帯電話の新しいカタチを提案したことが評価された。壇上ではロボホンも口を開き、「僕が生まれて1カ月がたちました。これからも、どんどん成長していきますので、応援よろしくお願いします」とあいさつした。「スマートフォンのユーザーインタフェースをタッチパネルから音声に変え、形を箱型から人型に変えることで、愛着がわくようにした。いろいろなサービスやコンテンツをロボホン上で楽しめるよう尽力していく」(プロジェクトリーダーのシャープ 景井美帆氏)
モバイルプラットフォーム・ソリューション部門
- 最優秀賞 IoT通信プラットフォーム「SORACOM(ソラコム)」
- 優秀賞 dマガジン
SORACOMは、スマートフォン以外の(IoT)デバイスで通信を可能にする独自性が評価された。「(2015年)9月にSORACOM Airを発売したが、通常のSIMカードと違うのは、モノ向けに特化して1日10円から使えること。クルマや自販機、さまざまなモノに通信を入れることで、IoTが便利に進んでいく。SORACOMは日本発のプラットフォームなので、スピーディーにグローバル展開したい」(ソラコム 玉川憲社長)
dマガジンは325万ダウンロードを突破し、出版不況を打破する起爆剤になっていることが評価された。「読み放題サービスとしては一定の規模まで成長できた。2016年は(週刊文春など)週刊誌が世の中を騒がせる特ダネがたくさんあった。雑誌の記事は素晴らしい編集力をもったコンテンツ。次は400、500万契約まで成長させていきたい」(プロジェクトリーダーのNTTドコモ 伊藤元基氏)
MCF社会貢献賞
- MCF社会貢献賞 小児救急支援アプリ研究開発プロジェクト
「小児救急支援アプリ研究開発プロジェクト」は、子供が病気やけがに見舞われたときに症状を選択することで、救急車を呼ぶべきかどうかを判定してくれるほか、近くの医療機関の情報を提供する(医療機関の情報提供は大阪府のみ対応)。担当者によると、現在、救急車は平均5.6秒に1回ものペースで呼ばれており、なかなか連絡がつかないこともある。このアプリを多くの人が活用することで、本当に必要な人が救急車を呼べるようになることが期待される。
モバイルコンテンツ部門
- 最優秀賞 AbemaTV
- 優秀賞 MERY
- 優秀賞 ドラゴンボールZ ドッカンバトル
- 優秀賞 NHKプロフェッショナル私の流儀
インターネットテレビの「AbemaTV」は、全24チャンネルの番組が24時間無料で視聴できるというインパクトの高さが最優秀賞の決め手となった。「自分たちがいい物を全部やってみようということでスタートさせた。前例がないので不安だったが、すごく評価いただき、想定よりも5倍多くのユーザーが集まっている。しっかりいいコンテンツを作れば、ユーザーがついてきてくれることが分かった」(サイバーエージェント担当者)
「MERY」は、若い女性が使うキュレーションメディアとしてターゲットを絞り、メディア特性に合わせて支持を広げたことが評価された。
「ドラゴンボールZ ドッカンバトル」は、日本発ゲームの課題だった海外でのヒットを果たし、全世界で7770万ダウンロードを突破。特に中国で本格的な成功を収めたことが評価された。
NHK公式アプリとして登場した「NHKプロフェッショナル私の流儀」では、一流プロのようなオリジナル動画を作成できる。あたかも本当に番組に出演したと見まがうほどのクオリティーの高さが評価された。
「NHKでは、(アプリをリリースする際に)さまざまな議論があった。例えば、よからぬことをしているプロフェッショナルもいて、オレオレ詐欺の流儀とか出てきたらどうするのか? という懸念の声もあったが、ネット社会の悪意を恐れるよりも善意を信頼しようと。現在は120万のユニークユーザーがいて、動画は5万件アップされている。89歳の木工細工の職人さんが、自分の仕事を映像で見せた後、流儀は『全ては私の孫の笑顔を見るため』というメッセージを送ってくれたこともあった。就職活動で自分の強みを発表するなど、キャリア教育の一環でも使ってもらっている。
われわれはオワコンの会社なので、何の知恵も技術もない。ここにいる若い方々※にどんどんいろいろな話を持ってきていただいて、発展させていきたいと思っている」(NHK 制作局経済社会情報番組部 部長 井上勝弘氏)
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