IIJ「mineoにはビックリした」 mineo「iPhone問題で神の手が来た」――トークセッションで語られたこと(2/2 ページ)
7月30日と31日に開催された「mineoファンのイベント」は、ケイ・オプティコム担当者とIIJmio担当者のトークセッションも見どころの1つだった。お互いの印象、一緒にやりたいこと、脅威に思っている会社、ネットワーク検証の手法などが語られた。
IIJmio郵便局での販売は、mineoにとって複雑な思いが?
IIJが開始した郵便局でのSIMの取り扱いについて、mineo側には複雑な思いがあったようだ。
堂前氏 (郵便局は)非常に大きな店舗網なので注目されているが、正直騒ぎすぎかなと思っている。あくまでカタログ販売で、販路が1つ増えたという形で考えている。ビックカメラをはじめ家電量販店は売り慣れているが、郵便局はこれから体制を整えるので、いきなりどかーんと立ち上がることはないと思う。
上田氏 郵便局を口説き落としたのがすごい。われわれも「(mineoを)郵便局に置かせてください」と相談したが、実績を話したところ、「ああそうですか」と終わってしまった。そういう経緯もあって、IIJさんには「やられたー」という感じで見ていた。
佐々木氏 担当によると、かなり胃に穴が空くような話だとは聞いていた(苦笑)。
これだけ多くのMVNOがレッドオーシャンにひしめく中、生き残るために何が必要になってくるのだろうか。
佐々木氏 僕らはお客さんともっと近くにいたい。お客さんに支持していただかないと、ニッチな存在から抜けられないと思っている。大企業になるとお客さんとの距離は空いていくと思うが、それでも歯を食いしばってやっていかないといけない。
(IIJmioの)Twitterで4万人も相手をしているけど、ここを続けられる限りは続けていきたい。IIJmio meetingも続けていきたい。mineoさんにお呼ばれしたら、こういったところでもお話をしていきたい。なるべく皆さんのニーズと僕らの目線を合わせ続けていきたい。
森氏 ユーザーとの距離を近くにするという話は、われわれもその通り。冒頭で「安心感」の説明をしたが、それだけでは不十分。安心はマイナスをゼロに戻すものだが、ゼロからプラスにするのは「信頼」だと思っている。信頼されるMVNOが今後残っていく。お客さんの声を受け止めて、言えることはオープンに言って、その中で一緒にサービスを良くしていければ、信頼につながると思う。
参加者 (格安SIMの)支払いはクレジットカードが多い。口座振替に対応すれば、ユーザーが増えて業界全体が潤うと思うのだが。
森氏 決済手段は軽い方がいいけど、軽くするほど悪いことをする人も増えていく。クレジットカードは最低限(必要)だと思っている
堂前氏 例えばBIGLOBEさんは口座振替ができる。何社かは口座振替に対応していることは、そのMVNOの魅力だと思うので、そういった形で選んでいただくのはありだと思う。
参加者 IIJさんは家電量販店に出張所を出している。mineoさんは直営店を出している。それぞれのスタイル対してコメントをいただきたい。
堂前氏 実は、個人的には直営店を出したいとは思っている。社内で「直営店を出しましょうよ。僕店長をやりますので」と言ったら、「お前いくらかかると思っているんだ!」と却下された(苦笑)。直営店は楽しいというのもあるだろうし、安心感にもつながるので、うらやましいと思っている。
森氏 IIJさんはBIC SIMという形でがっつりやっているので、なかなか入っていく隙がない。量販店さんではなかなか目立つ場所に置けないことがある。やりたい接客ができる場所としてアンテナショップは必要なので、数店舗は出していきたい。
端末・ネットワーク:動作検証はどのように行っている?
自社の通信サービスに、各種スマホが対応しているかを調べることも重要な仕事の1つ。動作検証の裏側も語られた。2社が特に口をそろえたのが「iPhoneの検証は大変」ということ。またスピードテストの手法についても説明された。
杉野氏 iPhoneは端末の調達が難しい。iPhone 6sのときは心斎橋のアップルストアに始発で並んだ。iPhoneの検証はIIJを抜かそうとやっているので頑張っている。
堂前氏 やはりiPhoneは大変。6sのときは並べば買えたけど、SEは店頭販売がなかったので非常に困った。
単純にSIMを挿して動くかどうかだけではなく、より踏み込んだ取り組みの1つとして、携帯電話の基地局の“ふり”をするシミュレーターを購入して動作確認をしている。例えば緊急地震速報。SIMフリースマートフォンでは、緊急地震速報が表示されないものがあるが、地震を待つわけにもいかず、なかなかテストができない。このシミュレーターで緊急地震速報の信号を送れるので、動作を確認している。
上田氏 ネットワークのスピードテストを行っていて、机に並べてひたすら測定している。毎日測ってマイネ王に書かれたり、2chを見て心を折られたりしている(苦笑)。
堂前氏 私たちもスピードテストは気にしていて、IIJでは自動化を頑張っている。社内に測定専用の端末とサーバを置いて、自動でテストをして、どのぐらい網が使われているかを確認している。
皆さんと同じスピードテストアプリを使うこともある。スマートフォンにUSBケーブルを挿してPCからコントロールできるようにしている。皆さんもスピードテストは大好きだと思うけど、それに冷や水をかけるような記事も書いている。
スピードテストできれいに数字は出てくるけど、唯一無二の正解というわけではない。例えばキャリアのネットワークが混雑しているところで測っても意味がない。意識はしているけど、数値を評価するときは前提条件を持って評価したい。そのうえで話ができると冷静な議論ができる
ケイ・オプティコムがmineoのユーザーイベントを開催したのは今回が初めてだが、同社はコミュニティーサイト「マイネ王」で、以前から積極的にユーザーと交流を深めており、ここで挙がった意見がきっかけで生まれたサービスもある。IIJは以前からユーザーイベント「IIJmio meeting」を実施しており、7月のイベントで12回目となる。佐々木氏と堂前氏を筆頭に、サービスへの思いを実直に語る姿勢が支持を集めている。
2社に共通するのが、ユーザーとの距離を縮めようとする姿勢だ。現在はコアなファンや業界関係者がサイト・イベントに多く集まっている印象だが、これらの場を起点に一般ユーザーにも訴求できるようになれば、さらにシェアを増やす起爆剤になりそうだ。
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