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日本通信がソフトバンクに「接続を拒否された」と総務省に駆け込み――「嘘つき」呼ばわりでソフトバンクをつるし上げた日本通信に勝ち目はあるか石川温のスマホ業界新聞

日本通信が「ソフトバンクに接続を拒否された」として、総務省に命令申請書を提出した。タイミング的に非常に狙ったと思われる動きだが、同社が自ら首を絞めることになる懸念もある。

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「石川温のスマホ業界新聞」

 9月29日、日本通信が「ソフトバンクに接続を拒否された」として、総務省に対して、接続協定に関する命令申請書を提出したという。

 これに対してソフトバンクは「協議中の段階と認識している」として、双方の主張にズレが生じていることが浮き彫りとなった。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年10月1日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


 日本通信は一部メディアに対して、電話会見というかたちで現状説明を行ったようだ。残念ながら筆者には声がけされなかったので、一部報道を引用すると「NTTドコモと同じような接続を求めている」(福田尚久社長)という。

 NTTドコモの回線を利用したMVNOであれば、SIMロック解除をしなくてもNTTドコモの端末を流用できる。それと同じ状況をソフトバンクに求めているようだ。

 しかし、ソフトバンクとしても、虎の子であるiPhoneユーザーをそう簡単に手放すわけにはいかない。iPhone7発売セレモニーで宮内謙社長が「我々はiPhoneを最初に発売していることもあり、たくさん使われるユーザーが多い」と語っていた。iPhoneを積極的に使うユーザーとなれば、ソフトバンクとの契約年数も長く、9月からは「ギガモンスター」も契約してくれる優良顧客といえる。

 ソフトバンクが、そう簡単にiPhoneユーザーが流出するような施策を快諾するとは思えない。

 また、背後にはSIMカードの問題もありそうだ。ソフトバンクの場合、端末によってSIMカードが異なることが多い。iPhoneとAndroidでも違いがあるだけでなく、Android向けのnano USIMカードでも6種類存在している(同社、ウェブサイトを参照)。

 仮にSIMロック解除のガイドラインが有効となった以前の端末でも使えるようにするには、それぞれの端末にあったUSIMカードをソフトバンク側が発行しなくてはならず、オペレーション的にとても現実的とは言えない。

 この「SIMカードの違い」という厄介な問題は、10月1日からau回線を使ったサービスを開始したIIJmioにも降りかかっているようだ。

 auではMVNO向けのVoLTE SIMカードを提供しているため、auの端末であってもSIMロック解除が必要な場合がある。特にIIJmioではVoLTE対応SIMカードのみを提供しているようで、最近の端末しか利用できない。

 しかも、au回線ではテザリングが非対応となっているという(NTTドコモ回線なら可能)。IIJmioでは「SIMロック解除をするのであれば、よほどの理由が無い限り、NTTドコモ回線を使ったサービスを選択した方が良い」とブログでアナウンスしている。

 IIJmioのTwitterを見る限り、au回線のサービスを始めたものの、端末やネットワークの利用に制限が多いところに困惑している様子がうかがえる。

 IIJmioの場合、こうした課題には技術的に解決しようと、検証作業を強化したりして、地道に戦っていく。一方で日本通信は総務省に駆け込み、相手と喧嘩するという荒技を発動する。

 しかも日本通信はこのタイミングを相当、狙ってきたと思われる。

 日本通信が狙いを定めているのが、10月13日から総務省で行われる「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」だ。

 このなかで、「MVNOの競争環境の動向」がテーマとなっている。日本通信とすれば、このタイミングで一騒ぎすれば、総務省としても無視することはできず、議題として取り上げる可能性が高い。もちろん、事業者として日本通信がヒアリングを受ける機会があれば、ソフトバンクへの不満をぶちまけるのだろう。

 日本通信としては、世間の関心を集めることで、ソフトバンクへの突破口を開きたいはずだ。

 ただ、過去を振り返ってみても、日本通信はけんか腰でNTTドコモと交渉してきたこともあり、とにかくNTTドコモ関係者から煙たがられている。日本通信は、HLR/HSS接続をして、モバイル・ソリューション・イネイブラーとして業態転換していきたいようだが、NTTドコモ側が難色を示していてもおかしくない。

 ソフトバンクに対しても、総務省を後ろ盾にしてけんか腰で攻めるとなると、将来的に2社の関係がぎくしゃくしていくこともあるだろう。すでに三田社長はソフトバンクを嘘つき呼ばわりしており、今後、交渉が上手くいくとは思えない。SIMロック解除のガイドラインが出る前の機種の話をしており、そもそも日本通信にとって不利な状況にあることは間違いない。

 仮に日本通信がソフトバンクと接続が実現できたとしても、将来的には自分の首を絞めることになったりしないか心配だ。

© DWANGO Co., Ltd.

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