総務省が新ガイドライン「SIMロック規制期間を大幅短縮」を公開――これで本当に「抜け穴」を埋めることができたのか:石川温のスマホ業界新聞
総務省主催の携帯電話に関する施策に対する「フォローアップ会合」を受けて、同省が「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」案を公表した。案にはSIMロック解除における期間制限の大幅短縮や端末割引規制の強化が盛り込まれたが、これで「抜け穴」は埋められるのだろうか……?
総務省から「モバイルサービスの提供条件・端末に関するガイドライン」についての意見募集が行われている。これまで3回行われたフォローアップ会合の取りまとめを行い、「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針(案)」として発表。これに対する意見を募集しているのだ。この作業を経て、指針が策定されていく。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年11月19日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
中身を見ると、特にSIMロック解除の活性化に重きを置いているようだ。
これまで端末購入から6カ月はSIMロック解除できないというルールがあったが、こちらは短縮化される方向だ。割賦払いの場合は最初に支払いが確認できる100日程度以下、一括払いの場合は当該支払いを確認できるまでの期間としている。現金購入であれば、その場でSIMロック解除が可能だが、クレジットカードでの購入の場合は、クレジットカード会社に請求が回った段階でSIMロックが解除できるようだ。
また、解約時には原則SIMロック解除を行うとし、さらにMVNO向けSIMロックは廃止となる。これにより、KDDIで購入した端末はVoLTE対応であっても、そのままmineoやIIJmioで利用可能になりそうだ。
端末への割引に関しては、購入者に対して、合理的な額の負担を明確化すべきとした。例として2年前の同型機種の下取り価格以上を負担すべきだという。つまり、下取り価格と割引後の販売価格を同等にすることで実質ゼロ円を実現するのはなく、新製品の割引後の値付けが下取り価格以上にすべきとしたのだ。
果たして、これで総務省の狙い通りになるのだろうか。余計な表記が付け加わったことで「抜け穴」がさらに増えたように思う。
今回、SIMロック解除の活性化においては、一括払いすればすぐに解除できるというのは、わかりやすく、一部のユーザーには支持されそうだ。しかし、ここまでSIMロック解除が緩和されると、キャリア側としては、料金プランで、ユーザーを縛ってこないか心配だ。解除料やMNP手数料の値上げといった策で対抗してきてもおかしくない。
また、逆にSIMロックが活性化すると、いままで使っていた端末が使えるわけで、「格安スマホに移行するからSIMフリースマホを買う」という需要が下がったりはしないだろうか。せっかく、盛り上がりを見せているSIMフリースマホ市場で勢いのあるファーウェイ、ASUSあたりに影響が出なければ良いが。
また、端末の割引に関しても、「2年前の同型機種の下取り価格以上」という設定も「抜け穴」になりそうな気がしてならない。「下取り価格」はいくらでもキャリアが自由に設定できるため、ここを細工して、上手いこと端末割引を増額させてきてもおかしくない。例えば、下取り価格が1円であれば、新機種の販売価格は2円でもいいはずだ(実際は「合理的な額の負担」に違反するので、総務省から刺されるだろうが)。このあたり、今後、キャリアがどのように曲げて解釈してくるかが興味深い。
総務省は「端末購入補助の適正化」を掲げているが、そもそもキャリアがこのまま端末を売り続けるかも怪しくなってくる。1994年以前のようなレンタル制度を新たに導入してくれば、総務省のガイドラインを無視することだってできてしまう。
レンタルであれば、「下取り」といった概念はなくなるし、ユーザーが「SIMロックを解除する」という発想もなくなる。「2年間のレンタル契約」という扱いであれば、キャリアは大手を振ってユーザーを囲い込める。ユーザーは毎年のように新機種に乗り換えられるだろう。
端末を壊してしまっても、レンタルであれば問題ない。ユーザーはこれまでと全く変わらずに、見た目だけを「レンタル」としてしまえば、総務省のガイドラインをすり抜けられる。
すでにアップグレードプログラムもあるが、それよりも「レンタル」のほうが、ユーザーにはわかりやすそうだ。
ただ、キャリアとすれば、端末の売り上げが減るため、減収要因になってしまう恐れがあるとか、割賦販売の債権を流動化しているキャリアもあるため、導入は困難だと思われる。
しかし、これほど見た目ガチガチだが、抜け穴もありそうなガイドラインだけに、キャリアとしては、何らかの策で対抗してくるだろう。
果たして、そういった反逆者を出さないことができるのか。総務省ガイドラインのお手並み拝見といったところだ。
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