カウントフリーからIoTまで――NTTコムに聞く MVNEの取り組み:MVNOに聞く(1/3 ページ)
MVNE事業に軸足を置いている企業の1社が、NTTコミュニケーションズ。最近では「LINEモバイル」のMVNEとしても注目を集めた。MVNEとして、同社にはどのような強みがあるのか。
急増するMVNOを支える“黒子”ともいえる存在が、MVNE(Mobile Virtual Network Enabler)だ。MVNEは大手MVNOが兼ねているケースも多く、NTTコミュニケーションズやIIJ、日本通信、フリービットなどの企業が事業を行っている。ドコモやKDDIといったネットワークを持つキャリアと直接接続しているのも、このMVNEになる。
このMVNE事業に軸足を置いている企業の1社が、NTTコミュニケーションズ。同社はMVNOシェア1位の「OCN モバイル ONE」を擁する企業だが、一方でMVNEとしても業界を支えている。最近では「LINEモバイル」のMVNEとしても注目を集めたほか、PCユーザー向けに開発した年間プランをVAIOに提供するなど、柔軟な料金プランをMVNOに提供している。
では、MVNEとしてのNTTコミュニケーションズには、どのような魅力があるのか。LINEモバイルなどの具体的な事例を下敷きにしながら、同社のMVNEにおける強みを語ってもらった。インタビューに応えたのは、NTTコミュニケーションズ ネットワークサービス部 販売推進部門 担当課長の唐金毅氏、同 山本陽一氏、同 村田一成氏の3人となる。
トータルでのサポートが支持されている
――(聞き手、石野純也) MVNEは法人向けということもあり、あまり情報が表に出てきません。NTTコミュニケーションズの中では、どの程度の割合なのでしょうか。金額や力のかけ具合などを教えてください。
唐金氏 MVNOのOCN モバイル ONEと、大体半々ぐらいで事業を営んでいるというのが実情ですね。MVNOとMVNEは両輪です。MVNEは、B2B2Xを強化するNTTグループとしての方向性に合致します。その意味では注力分野でもあります。手前みそになってしまいますが、社内にB2B2Xプロジェクトチームも立ち上げて取り組んでいます。
―― 主な実績として公表できるMVNOは、LINEモバイルやVAIO以外にありますか。
唐金氏 ネット上にもIPアドレスからMVNEを割り出した情報があるので言わずもがななのかもしれませんが……(笑)。共同リリースという形で公開されているのは、LINEさんやVAIOさん、あとは東芝さんですね。
―― MVNEは、老舗といわれるMVNOの多くが手掛けています。NTTコミュニケーションズならではの強みはどこにあるのでしょうか。
唐金氏 一概に申し上げるのが非常に難しいですね。通信はコモディティ化が進んでいますが、VAIOさんやLINEさんのように、顧客それぞれのニーズがあります。VAIOさんでしたらPCメーカーですし、LINEさんはコミュニティーをお持ちで、強みやチャネルもさまざまです。そこに応じた形での支援ができているというのは、あると思います。
われわれはOCN モバイル ONEを長く取り組んできたことに加え、法人営業に強みを持つ会社です。そういったところで培ったSI(システムインテグレーター)としての支援や、トータルでのサポートを支持していただけているのではないでしょうか。
山本氏 機能面での差別化といわれると難しいのですが、例えばグループ会社のNTTレゾナントは端末を持っているのでそこと連携できますし、請求や顧客管理のプラットフォームを持つ会社もグループ内にあります。ないものに関しても、外部ベンダーと提携してワンストップで進められるようにしています。
―― つまり、トータルでソリューションを提供できるのが強みということですね。機能に関してですが、HSS/HLR(加入者管理機能)を独自に持って差別化するということはお考えでしょうか。
唐金氏 われわれの部隊は営業の支援でサービス開発に直接携わっているわけではありませんが、HSS/HLRについてはビジネス性を検討中です。それなりに大きな投資が必要になる事実もありますので、それに見合うメリットがあるのか、ないのかを含めて検討しているところです。
カウントフリーは運用面のハードルが高い
―― LINEモバイルに提供しているカウントフリーの機能は、差別化要素ではないということですか。
唐金氏 差別化ではありますが、LINEさんのように、ある種のサービスプロバイダーが自社のサービスを伸ばす、自社のサービスに色付けしていく一要素だと考えています。
―― なるほど。それだけが全てではないということですね。
唐金氏 カウントフリーに関しても、弊社だけが提供しているわけではなく、それが全てではありません。トータルでマーケティングから検討して協力しています。
―― ただ、カウントフリーはLINEモバイル側の話を聞くと、実現が大変だったと伺っています。そこは、やはり技術的な優位性になるのではないでしょうか。
唐金氏 確かに難しかったですね。LINEさんの発表でも触れられていましたが、(カウントフリーを行うためには)接続サーバなどを特定しなければなりません。コンテンツによってはそこがすぐに変更になる場合もあり、グローバル展開しているとキャッチアップするのが大変です。ですから、これはどちらかというと、技術面というより運用面のハードルが高いものといえると思います。
―― 万全を期すためには、運用が欠かせないということですね。
山本氏 そこはコンテンツプロバイダー側と密にやっています。網羅性のあるカウントフリーは、やはりそうしないと難しい。今回はLINEさんも含め、コンテンツプロバイダーと連携を取りながら進めていった結果、しっかりとしたカウントフリーになりました。
―― 具体的には、どのような方法で通信先を特定しているのでしょうか。
唐金氏 先ほど山本が申し上げたように、IPアドレスだけだと変わってしまうことがあります。LINEであれば、自社で提供しているため、アドレスの情報は同期を取ることもできますが、IPアドレスもヘッダも、(変更するときは他社に)事前に言うものでもないので、複数の識別情報を持っておかないと、特定が難しくなってしまいます。
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