なぜAndroid? 約2万5000円という安さの秘密は? 「VAIO Phone A」インタビュー:SIMロックフリースマホメーカーに聞く(1/3 ページ)
「VAIO Phone A」の発売から約1年がたった後に、Android版の「VAIO Phone A」を発売したVAIO。DSDSやVoLTEに対応しながら、約2万5000円という安さを実現。このタイミングでAndroid版を投入する狙いや、安さの秘密を開発陣に聞いた。
OSにWindows 10 Mobileを採用した「VAIO Phone Biz」の発売から約1年、VAIOが、Androidを搭載した「VAIO Phone A」を4月に発売した。同社のフラグシップモデルであるVAIO Zをモチーフにしたデザインやスペックはそのままに、OSだけをAndroidに切り替えたのがVAIO Phone Aの特徴だ。Androidを採用したことで、もともとハードウェアとして備えていた3GとLTEの「デュアルSIM/デュアルスタンバイ(DSDS)」や、ドコモのVoLTEなどにも対応。コンシューマー向けの端末として、購入のハードルが下がった格好だ。
VAIOがAndroidを採用したというだけでもニュースといえそうだが、この機種は、その価格にもインパクトがあった。プロセッサにSnapdragon 617を採用し、メモリ(RAM)は3GB、5GHz帯のWi-Fiにも対応とミッドレンジ上位並みのスペックを備えながら、実勢価格は2万5000円前後と、抜群のコストパフォーマンスを誇る。中には、SIMカードとセットで2万円を下回る価格をつけているMVNOも存在する。
ただ、VAIOといえば、やはりWindowsを搭載したPCというイメージが強い。実際、VAIO Phone Bizが登場した際には、“これぞVAIO Phone”という意味も込め、日本通信が発売した「VAIO Phone」と比較する形で、“真VAIO Phone”などとも呼ばれていた。そのVAIOの名を冠したスマートフォンのOSに、再びAndroidを採用した狙いはどこにあるのか。また、ここまでの低価格を実現できた背景も、気になるポイントだ。VAIO Phone Aを今、発売する狙いとは。VAIOで同モデルの企画、開発に携わった商品企画部 商品企画担当の岩井剛氏と、ビジネスユニット2 ダイレクターの林文祥氏に聞いた。
このタイミングでAndroid版を販売する理由
―― VAIOといえば、やはりWindowsだと思っていたので、Android版は出ないと思っていました。なぜ、Androidを採用したのでしょうか。
岩井氏 前回のインタビューでもお話しましたが、もともと、企画としてAndroidかWindowsのどちらかで出すということが決まっていました。企画としては、ビジネス向け、法人市場向けのスマホを出すということが決まっていただけで、ハードウェアとしては、どちらにも対応できる形で作っていました。その後、Continuumやセキュリティ、MDMなどを考えると、Windowsの方が当初ターゲットとしている市場には適していると判断しています。
ただ、法人向けスマートフォンのWindowsが、当初の想定より(普及に)時間がかかっています。もう少しスピード感を上げてスマートフォンを広げていきたいという思いもあり、このタイミングでAndroid版を販売することになりました。
―― Androidを採用したことで、ターゲットとなるユーザー層も変わるのでしょうか。
岩井氏 とはいいつつも、一般的な格安スマホに対抗して、大々的に売りたいというよりは、ターゲットをビジネスパーソンに明確化しています。Bizとある程度似ているところはありますが、法人向けの「Biz」に対し、個人で買って仕事で使う「A」という違いがあります。
―― すでに発売されていますが、初速はいかがでしたか。
岩井氏 当初の想定よりは、かなりいいですね。特にいいのがMVNOの販路ですが、自社(VAIOストア)に関しても、想定よりいい感じで立ち上がっています。
―― やはり、価格でしょうか。あの質感、スペックで2万円台半ばは、正直インパクトがあったと思います。
岩井氏 その辺のバランスは、すごくいいと見ていただいていますね。とにかく安い端末がほしいというより、ある程度商品を選べるリテラシーがあり、バランスがいいと思っていただける層に買っていただけているようです。
―― 計画より、販売台数を増やす可能性もありますか。
岩井氏 まだ初速ですからね。この勢いが下がるかもしれませんが、今のまま続いていけば、ありうる話ではあります。
2万5000円前後の価格を実現できた秘密
―― それにしても、あの価格はどうやって実現したのでしょうか。
岩井氏 Bizとハードウェアを共通にしていることで、抑えられるコストがかなりあります。今回は、新規にハードウェアを作ったわけではなく、金型も基板も新規に起こしていません。ドコモさんのIOT(ネットワークの接続試験)も取得していないので、そこに関わる認証、テストのコストも発生していません。また、Bizの方も価格は改定していますが、これも全体としてコストを下げた結果です。
―― ハードウェアの調達も、効率的にできているということですか。
岩井氏 チップセットも当初からAndroidは視野に入れて選んだものです。結果を見れば、Androidも一緒に出すことができ、効率よく運用できました。
―― とはいえ、2万円台後半ぐらいにはなるかなと思っていました。
岩井氏 いくらだったら売れるのかは、慎重に検討してきたつもりです。正直なところ、2万9800円、3万4800円という案もありました。ただ、このタイミングでAndroidのSIMフリースマートフォンを出す際には、何かしらのインパクトがないと注目されませんから。
―― VAIO Phone Biz用に余ったハードウェアを使っているということはありますか。
岩井氏 直球を投げますね(笑)。そこの切り分けはしにくいのですが、ベースのユニットは海外の協力メーカー(ODM)から一括で送ってきたものです。それを安曇野で、これをWindows、それをAndroidにと分けています。考え方次第ですが、市場のニーズに応じて、Aにするのか、Bにするのかの作業をしています。
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