分離プランやユーザー還元策の影響は? 3キャリアの決算を振り返る:石野純也のMobile Eye(2/2 ページ)
新料金プランが好調のドコモとau。一方、Y!mobileブランドが好調なソフトバンクは、分離プランに対しては静観の構えを見せる。ドコモは減益、国内通信事業に限るとソフトバンクも減益となるなど、ユーザー還元策の影響が出ている。
2社に対して静観の構えを見せるソフトバンクも「先行投資」は増加
2社それぞれにY!mobileへの対抗策を打ち出される形になったソフトバンクだが、サブブランドのY!mobileを含めると、収益面だけでなく、純増数も好調だ。docomo withやauの新料金プランに追随するような料金プランは、「まったく考えていない」(ソフトバンク宮内謙社長)という。ソフトバンクグループの孫正義社長も「(docomo withやauの新料金プランは)分離プランということで、特段大きな値下げには実態としてなっていない。ユーザーが流れ込んでいるも認識していないので、必要ないのではないかと考えている状況」だと語った。
宮内氏は、この理由を「従来やっている、Y!mobileとソフトバンクの2ブランド作戦でうまく差別化が演出でき、ユーザーにもフィットしているのではないか」と分析。実際、スマートフォンに限って見ると、第1四半期の純増数は45万で、前年同期比で61%の成長を示している。孫氏によると、解約率(ハンドセットに限る)も過去最低の0.79%に低下。指標の出し方は3社で異なる点は注意が必要だが、「初めて競合他社であるKDDIを下回った。これは快挙だ」(同)と自信をのぞかせた。
解約率低下の理由は、市場環境だけでなく、SoftBank光に注力していることの効果も大きいという。一方で、そのソフトバンクも、国内通信事業だけを見ると、9%の減益になっている。これは、「いくつかの販売促進策を行っている」(孫氏)ため。まず、SoftBank光とモバイルのセット割である「おうち割光セット」は、「最初の2年はスマホの料金を値引く(額が大きい)」(同)。そのため、セット割が「増えれば増えるほど、特に最初の2年間の割引が先行して(収益にマイナスとして)出てくる」(同)という。
ギガモンスターやSUPER FRIDAYといった、既存ユーザーへの還元施策も、収益率の低下につながったようだ。また、Yahoo!JAPANとのポイント連携や、ソフトバンク、Y!mobileの両ブランドで行っているYahoo!プレミアムの無料化も、「先行投資として、一時的に収益を圧迫している」(孫氏)。
孫氏は「国内通信事業は5年、10年、20年という単位で見て、十分健全に成長させていくことができる。目先の利益を最大限にするより、少しでも顧客基盤を増やし、健全な先行投資ができる部分があるならしようと考えている」と語っていたが、ソフトバンクも3社やMVNOとの競争によって、ユーザー還元策の強化を余儀なくされている状況だ。総務省が2016年施行したガイドラインは、MVNOの振興を通じて、間接的に大手3社の料金値下げを促すのが狙いだ。3社が打ち出した分離プランやユーザー還元策、そして第1四半期の決算からは、その効果が徐々に出ていることがうかがえる。
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