潮晴男の「旬感オーディオ」
オーディオに愛情を注ぐ作り手の顔が見えるスピーカー、クリプトン「KX-1」(1/2 ページ)
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メイド・イン・ジャパンにこだわるメーカーは数あれど、クリプトンほど一途にその姿勢を貫いてきた造り手はない。「KX-1」は、そのクリプトンが、持てる資産を徹底して活用することでリーズナブルなプライスにまとめあげた最新のスピーカーである。
精鋭のエンジニアとプラニング・スタッフによってオリジナリティー豊かなスピーカーを作り続けるクリプトンは、デビュー作の「KX-3」で過渡特性に優れたアルニコマグネットの磁気回路を採り入れ、ウーファーの振動板には独クルトミューラー製のペーパーコーンを、そしてツィーターには天然素材のピュアシルクによるソフトドーム型のユニットを組み合せて、オーディオの世界の奥深さを伝えてきた。
エンクロージャーの製作からユニットを取り付ける最終工程に至るまで、熟練のスタッフが時間をかけて組み上げるという、ハンドクラフトならではの丁寧な仕事がなされている。しかしながら小規模集団なのでメリットもあればデメリットもある。メリットはいうまでもなく物づくりの施政方針がぶれないこと。デメリットは量産しないためコストダウンが難しいことだ。もちろんコスト優先のモデルとは一線を画す物作りが多くのファンの心をつかんできたことはいうまでもない。
そして「KX-3」のデビューから10年という節目の年に「KX-1」は生まれた。もう少し幅広いユーザー層に自らの思いを伝えるための回答である。「KX-1」はペアで25万円だ。今時の普及価格帯の製品からすれば高価だが、それでもクリプトン始まって以来のプライスである。しかしながら音質まで安くなってしまっては意味がない。そこでコストを抑えるためウーファーのマグネットをアルニコからフェライトに変えた新たなる磁気回路を開発した。振動板は上位機と同じくクルトミューラー製のコーン紙を採用するなど、要所はしっかりと押さえている。またツィーターには高域の伸びやかさを改善するべく新たに砲弾型のイコライザーを加えた。振動板はピュアシルクだがこうした作りを行うことでスムースな再現力を身に付けることに成功している。
また今回取材して新たなる事実も分かった。というのも170ミリ口径のウーファーの振動板は上位機同様200ミリあるコーン紙からわざわざ170ミリに切り出し腰の強い部分を使っているというのだ。随分と贅沢な方法であるが、「新たに設計し直すよりコスト面で有利なんです」とオーディオ事業部長の渡邊勝さんは話す。もっともこのあたりにスピーカー造りに身も心も捧げてきた渡邊さんの意地があるのだろう。この人はかって大手のオーディオ・メーカーでスピーカー造りに腕をふるってきただけに、その辺りのツボは十分に心得ている。それにしても大胆な手法だなとぼくは思った。
エンクロージャーに関しても上位機と同じ手法はとれないので、6面留仕上げではなく、ほぞ溝組みという合理的な方法でまとめあげた。「KX-1」には桜材のつき板が採用されているが、ポリウレタン塗装を行うことで行程の簡素化もなされている。2Wayのスピーカーを適切に駆動するためネットワークに上位機同様、空芯コイルや上質のコンデンサーを用いているが、このモデルのためにクロスオーバー周波数を変更しインピーダンスのマッチングにも気を配ってバランスを整えた。入力端子をシングルワイヤー用に変更したこともコスト削減の一環だが、ぱっと見には上位機の「KX-5」と瓜ふたつ。手を抜いた様子が全く見当たらないところにも造り手の良心がうかがえる。
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